公開日:2016-02-05
食事性マグネシウム摂取量と日本人コミュニティの糖尿病リスク: 高山町研究
2015年12月、岐阜大学医学部、名古屋女子大学の研究者らが“食事性マグネシウム摂取量と日本人コミュニティの糖尿病リスク: 高山町研究”に関する報告をしたので、その論文の概要を以下に紹介します。
目的
これまでの研究では、マグネシウム摂取量が糖尿病患者でインスリン抵抗性とブドウ糖取り込みを改善することを示しています。しかし、マグネシウム摂取量と糖尿病リスクとの関連の疫学研究では一貫性のない結果となっています。そこで日本の人口ベースのコホート研究で糖尿病の発症リスクにマグネシウム摂取量が関連しているかどうかを調査しました。
方法
対象は高山研究の参加者で、岐阜県高山市の住民13525人を調査し、1992年の開始時に食事についてのアンケート、10年後の2002年に糖尿病についての追跡アンケート調査を行いました。マグネシウムや他の栄養素の摂取量は、開始時の食事についてのアンケート調査から推定しました。
結果
10年間の追跡期間中に438人(男性266人、女性172人)が医師により2型糖尿病と診断されました。マグネシウム摂取量は男女それぞれ四分位に分類しました。女性では、マグネシウム摂取量の最低四分位(測定値の下位25%、中央値、285.4 mg/日)に比べて最高四分位(測定値の上位25%、中央値、431.8 mg/日)で、共変量調整後の糖尿病リスクは50%有意に低下[ハザード比(HR) 0.50; 95%信頼区間(CI) 0.30-0.84; P 0.005)]しました。(注釈: マグネシウム摂取量が最も高い群では2型糖尿病の発症リスクが50%低下すると言う意味です。)一方、男性では、マグネシウム摂取量と糖尿病リスクの関連が認められませんでした。
この研究集団の特徴を表1に示します。
表 1. 研究集団の特徴および2型糖尿病発症率のハザード比(一部抜粋)
数値は平均(標準偏差)、幾何平均(95% CI)またはパーセンテージで示します。
マグネシウム摂取量は中央値で示します。
* 表をクリックすると拡大表示します。
結論
マグネシウム摂取量の増加は、女性における糖尿病リスクを低下させることを示唆します。
参考資料:
Konishi K, Wada K, Tamura T, Tsuji M, Kawachi T, Nagata C. Dietary magnesium intake and the risk of diabetes in the Japanese community: results from the Takayama study. European Journal of Nutrition 2015 Dec 21. [Epub ahead of print]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26689794
【コメント】
岐阜県高山市の住民ベースのコホート研究の前向き調査にて女性のマグネシウム摂取量が高い(431.8 mg/日)と2型糖尿病の発症リスクが50%低下すると報告したことは大変意義があると言えます。
この論文の考察で、男性ではマグネシウム摂取量と糖尿病リスクの関連が認められなかった理由としてマグネシウムの代謝に於ける性差が関係している可能性があると説明されています。また、食事についてのアンケートは1992年の開始時に1回の調査しかされていないことも限界があるのかも知れません。
MAG21研究会のホームページでは、マグネシウムと糖尿病、高血圧やメタボリックシンドロームなどとの密接な関係についても解説して来ました。
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