公開日:2011-02-17
銅、亜鉛、マグネシウムの代謝異常は糖尿病患者のグリコヘモグロビン(糖化ヘモグロビン:HbA1c)上昇に関連
2009年、スロバキア共和国Comenius University医学部の研究者らは、低Mg濃度が糖尿病患者のグリコヘモグロビン(糖化ヘモグロビン:HbA1c)上昇と関連があることを報告したのでお知らせします。
この論文の概要を以下にご紹介致します。
背景:
糖尿病(DM)は、銅(Cu)、亜鉛(Zn)とマグネシウム(Mg)の代謝変化と関連していると言われています。
目的:
この研究目的は、DM患者と健常者の血漿中ミネラル濃度を調査し、また、グリコヘモグロビン(糖化ヘモグロビン:HbA1C)とこれらミネラル濃度との関係を評価することでした。
対象と方法:
対象は、年齢、性別、糖尿病の罹病期間が一致した糖尿病患者36人(1型糖尿病11人、2型糖尿病25人)と健常者34人について調査しました。
1型糖尿病患者は男性9人と女性2人、年齢49.9±9.4 歳、糖尿病罹病期間23.9±12.9年、 HbA1C 7.19%±0.6%。2型糖尿病患者は男性10人と女性15人、インスリン治療8人(年齢60.4±12.5歳、糖尿病罹病期間17.1±12.2年、HbA1c 7.66%±1.5%)、経口糖尿病薬(OAD)治療17人(年齢58.7±10.1歳、糖尿病罹病期間7.4±5.4年、HbA1c 7.12%±1.1%)。コントロール(健常者)は男性18人と女性16人、年齢30.2±9.7歳)でした。
Cu、ZnとMgの血漿濃度は原子吸光分光測定法によって測定しました。
結果:
コントロール(健常者)と比較してDM患者では、Cu (P<0.001)とCu/Zn比 (P<0.0001)の上昇とZn (P<0.01)とMg (P<0.0001)の減少が認められました。また、DM患者では、CuとZn間 (r= -0.626、P < 0.0001)で逆相関が認められました。
HbA1cレベルは、Cu (r=0.709、P<0.001)とCu/Zn比 (r=0.777、P<0.001)で明らかに正相関し、Zn (r= -0.684、P<0.001)とMg (r= -0.646、P<0.001) では逆相関していました。
結論:
DM患者ではCu、Znとマグネシウム(Mg)の代謝異常が生じ、グリコヘモグロビン(HbA1C)の上昇と関連があり、これらミネラルの代謝異常がDM進行と糖尿病性合併症に関与するかもしれないことが示唆された。
参考資料:
Viktorínová A, Toserová E, Krizko M, Duracková Z. Altered metabolism of copper, zinc, and magnesium is associated with increased levels of glycated hemoglobin in patients with diabetes mellitus. Metabolism 58:1477-82, 2009 Epub 2009 Jul 9
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19592053
【コメント】
この論文では、糖尿病患者におけるHbA1Cとミネラル(銅(Cu)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg))との関連について検討が行われ、糖尿病患者ではCuとCu/Zn比 が高く、ZnとMgが低い関係が見られ、CuとZnの間で逆相関が認められました。また、HbA1cの上昇はCuとCu/Zn比で明らかに関連があり、ZnとMgで逆相関していたことが認められた事は、ZnがMgと同様に2価の陽イオンで、Mgと似た動きを示唆した点興味があると言えます。
なお、Mg摂取不足と糖尿病に関し、以下の論文、書籍およびサイトをご参考にしてください。
2010.12.21 マグネシウム摂取量と全身性炎症、インスリン抵抗性と糖尿病発症との関連
2009.12.29 生活習慣病に対するミネラル栄養の重要性 Mg(マグネシウム)
2009.09.08 WHO 飲料水中のカルシウムとマグネシウム: 公衆衛生的意義 2009発行
2009.03.13 糖尿病と合併症 -生活習慣との関わり-
2009.02.10 糖尿病予備群含め2210万人=1年で340万人増 厚労省
2008.07.01 極低出生体重を伴った若年成人のグルコース調節
2008.06.03 『第51回日本糖尿病学会』で横田先生が発表
2008.05.09 糖尿病予備軍含め1870万人=4年で15%増 厚労省
2008.02.04 『日本糖尿病療養指導士認定機構 CDEJ News Letter』に横田先生の記事が掲載
2008.01.23 WHO報告書 『飲料水中の栄養素』-その2-
2008.01.22 WHO報告書 『飲料水中の栄養素』-その1-
2007.09.26 マグネシウムQ&A Q7 マグネシウムは、生活習慣病の予防以外の疾病予防にも利用できますか?
2007.08.23 女性及び小児とメタボリックシンドロームについて マグネシウムとカルシウム・・・ マグネシウムとカルシウム摂取量の割合が重要ですか?
なお、糖尿病やメタボリックシンドロームなどとマグネシウム摂取不足と生活習慣病との関係は、横田邦信著の“マグネシウム健康読本”(現代書林)にも詳しく書かれていますのでご参考にして下さい。
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。