高齢糖尿病患者のうつ治療におけるマグネシウムサプリメント

公開日:2011-11-17

高齢2型糖尿病患者のうつ治療における経口マグネシウムサプリメントの有効性と安全性: ランダム化、同等性試験



2008年、メキシコMexican Social Security Instituteの研究者らは、高齢の2型糖尿病患者のうつ治療における経口マグネシウムサプリメントの有効性と安全性: ランダム化、同等性試験に関する報告をしたので、その論文概要を以下に紹介します。



目的:



高齢の2型糖尿病および低マグネシウム血症で新たに診断されたうつ病の治療で、経口マグネシウムサプリメントとして塩化マグネシウム(MgCl2)の効能および安全性を評価することでした。



方法:



対象は高齢の2型糖尿病および低マグネシウム血症23人(女性12人、男性11人)の患者で、12週間中毎日マグネシウム量として450mgの塩化マグネシウム5%溶液50 mL或いはイミプラミン(抗うつ薬)50mgのいずれかを服用し、ランダムに割り付けしました。過去6ヵ月間におけるやもめ暮らしまたは離婚、アルコール中毒、中枢神経系の変性疾患、最近の糖尿病診断、抗うつ薬の前歴があるか現在治療中、慢性下痢、利尿剤の使用と腎機能低下を除外基準としました。低マグネシウム血症は血清マグネシウム濃度1.8 mg/dL未満およびYasavage and Brink スコア(高齢者うつ状態判定法)11ポイント以上をうつ症状の定義としました。試験開始後の主要なアウトカム(エンドポイント)はうつ症状の改善としました。



結果:



ベースライン時、塩化マグネシウムとイミプラミン群それぞれの年齢(69 ± 5.9および 66.4 ± 6.1歳, p = 0.39)、糖尿病期間(11.8 ± 7.9および 8.6 ± 5.7年, p = 0.33)、血清マグネシウム濃度(1.3 ± 0.04および 1.4 ± 0.04 mg/dL, p = 0.09)、Yasavage and Brink スコア(17.9 ± 3.9 および16.1 ± 4.5ポイント, p = 0.34)に差はありませんでした。追跡後、試験対照群間におけるYasavage and Brinkスコア(11.4 ± 3.8 and 10.9 ±4.3ポイント, p = 0.27)には有意差はありませんでしたが、血清マグネシウム濃度にはイミプラミン群(1.5 ± 0.07 mg/dL)より塩化マグネシウム群(2.1 ± 0.08 mg/dL), p < 0.0005が有意に高かった。



結論:



塩化マグネシウムは、低マグネシウム血症を伴ったうつ病高齢者2型糖尿病治療にイミプラミン毎日50 mgとほぼ同等に有効です。



参考資料:



Barragán-Rodríguez L, Rodríguez-Morán M, Guerrero-Romero F. Efficacy and safety of oral magnesium supplementation in the treatment of depression in the elderly with type 2 diabetes: a randomized, equivalent trial. Magnesium Research 21:218-223, 2008



http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19271419 



コメント



この研究の研究者(Barragán-Rodríguez L, Rodríguez-Morán M)は2006年に三重県の賢島で開かれた国際マグネシウムシンポジウムに参加されたご夫妻です。彼らは2007年に高齢の糖尿病患者におけるうつ症状と低マグネシウム血症についての研究結果を報告しました(当ホームページでは前回その記事をUPしました。「高齢の糖尿病患者のうつ症状と低マグネシウム血症」をご参照ください)。



次に2008年、マグネシウムサプリメントの臨床介入試験で、低マグネシウム血症を伴ったうつ病高齢者2型糖尿病患者の治療に抗うつ剤イミプラミンと同等の効果を示した世界初の有効性と安全性のエビデンスを示した研究結果に意義があると言えます。



この論文の本文では、興味ある内容も報告されているので、以下に列記し解説します。



      この臨床試験参加者は、当初265人の患者がスクリーニングされ、次に35人の適格者が選ばれましたが参加拒否した為、最終的に23人(女性12人、男性11人)の適格被検者がランダム割付けされました。



      合計265人のうち、うつ病、低マグネシウム血症、うつ病+低Mg血症の有病率はそれぞれ44.9、38.9、13.2%でした。



●      Table 1. 塩化マグネシウム(MgCl2)或いはイミプラミンを服用した高齢の2型糖尿病患者のベースラインと追跡調査(終了時)の特徴





⇒       Yasavage and Brink スコア(高齢者うつ状態判定法)は、0~10ポイント うつ病無し、11~20ポイント 軽いうつ病、21~30ポイント 中等度から重度のうつ病です。ベースライン時の全対照被検者では、16人(69.6%)が軽度、7人(30.4%)が中等度から重度のうつ病を呈していましたが、追跡調査時のスコアは塩化マグネシウムとイミプラミン両群でおよそ11ポイントまで有意に低下しました。



⇒       中性脂肪のトリグリセリドは、塩化マグネシウムグループ間で追跡調査時には有意な低下を認めました。



⇒       HDLコレステロールは、塩化マグネシウムグループ間で追跡調査時には有意な増加を認めました。



⇒       血清マグネシウムは、塩化マグネシウムグループ間で追跡調査時には有意な増加を認めて正常値を示しました。塩化マグネシウム投与により、トリグリセリド、HDLコレステロール、そしてうつ状態の改善に影響したのは明らかです。



*この論文では、塩化マグネシウム投与群でのトリグリセリドの有意な改善と改善作用についてコメントされていませんが、糖尿病患者ではマグネシウムの不足によるLPL(リポ蛋白リパーゼ)の活性が低下しているので、マグネシウムを補充することで改善したと考えられます。同様のマグネシウム補充効果は、当研究会メンバーの横田邦信らが軽症の2型糖尿病患者を対象にした臨床研究でも確認されています。



Yokota K, et al., Clinical Efficacy of Magnesium Supplementation in Patients with Type 2 Diabetes. J Am Coll Nutr 23:506S-509S, 2004



http://www.jacn.org/cgi/content/full/23/5/506S 



      イミプラミン対照の全被検者では少なくとも1つ以上の薬関連有害事象、例えば口の乾き、便秘、発汗、ほてり、視覚調節と視力の障害、排尿障害、疲労、眠気、心配増加、睡眠障害、混乱、見当識喪失と聴覚の幻覚、微小振戦、頭痛とめまい、洞頻脈、吐き気、食欲不振とかゆみを認めました。2人はイミプラミンの副作用によって途中で止めました。



      塩化マグネシウムの被検者では、3人に軽い腹痛と下痢を認めましたが、マグネシウムの為に途中で止めたものはありませんでした。



      高齢者のうつ病治療において塩化マグネシウムの安全性、そして、イミプラミンよりよく許容されることを示します。



      結論として、2型糖尿病と低マグネシウム血症を伴う高齢のうつ病治療における塩化マグネシウムの有効性と安全性を初めて示し、特に2型糖尿病の高齢者で、うつ病の徴候がある場合に血清マグネシウムが測定されるべきであるという意見は支持されます。



当ホームページでは以下のサイトでメキシコの研究者らの報告に関してご紹介してきました。



2011.11.07  高齢の糖尿病患者のうつ症状と低マグネシウム血症



2008.08.13  低マグネシウム血症と代謝性グルコース(ブドウ糖)障害のリスク: 10年追跡調査研究



2008.06.03  『第51回日本糖尿病学会』で横田先生が発表



2008.02.28  低血清マグネシウムとメタボリックシンドローム



2007.08.20  メタボリックシンドロームの予防 -その1-



マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。




検索


新着記事