『日本糖尿病療養指導士認定機構 CDEJ News Letter』に横田先生の記事が掲載

公開日:2008-02-04

『日本糖尿病療養指導士認定機構 CDEJ News Letter』に横田先生の記事が掲載

東京慈恵会医科大学准教授 横田邦信先生の『マグネシウム(Mg)と糖尿病の関係について』の記事が、『日本糖尿病療養指導士認定機構 CDEJ News Letter第17号』2008年1月号に掲載されましたのでお知らせいたします。

(CDEJ : Certified Diabetes Educator of Japan)

記事の内容は、日本糖尿病療養指導士認定機構 CDEJ News Letter第17号より転載いたします。

マグネシウム(Mg)と糖尿病の関係について

東京慈恵会医科大学 准教授 横田邦信

マグネシウム(Mg)が種々の疾患の病態と密接に関わることはわが国では未だ認知不足です。昔はMgが自然に十分に摂れた食環境でしたが、食生活の“半欧米化”により摂取が困難になってしまいました。また食事摂取基準(推奨量)(旧栄養所要量)策定が非常に遅く、Mg摂取の啓発が遅れた点にも問題がありました。ごく最近の報告では30-49歳男性で130mg/日以上ものMg不足が推定されています。

Mgは必須主要ミネラル(7種類)のひとつで、漢字で“鎂”と表記します。約350種類の酵素、特にATP産生の酵素活性に必須で、また、“天然のカルシウム(Ca)拮抗薬(L&N型Caチャネルブロッカー)”の異名があるように、細胞内外の電解質バランス制御(細胞内へのCa流入制御)も行います。さらにMgは筋収縮、神経興奮伝達、核酸合成など様々な物質代謝でも重要な作用を有します。

ところで、近年、Mg摂取量が多いと2型糖尿病発症リスクが10~35%も有意に低く、メタボリックシンドロ-ム(MS)のリスクも31%低いという疫学的報告が次々と出ました。またMg補充がインスリン抵抗性と血糖コントロールを改善、降圧や抗脂質効果も示され、WHO(2006年)の最終報告でもMg補充による2型糖尿病における有用性と、低Mg血症とMSの密接な関係が明記されました。

2型糖尿病の発症要因に脂肪摂取量の増加と肥満が従来から指摘され、このことは周知の事実ですが、1日平均エネルギー摂取量はむしろ減少傾向です。その一方で注目すべきことは、わが国において糖尿病有病率の激増し始めた時点が穀類(Mgが豊富な大麦・雑穀等)摂取量の激減した時点とほぼ一致することです(図1)。

10-006CDEJ 012008号図1

何らかの原因で生じたインスリン抵抗性に対し代償するインスリン分泌能があれば、耐糖能は正常に保たれますが、日本人は元々農耕民族でインスリン分泌能が欧米人に比べて弱く分泌の代償不全を起こし易く、糖尿病になり易いと考えられています。

しかしインスリン抵抗性の要因のひとつに慢性的Mg摂取不足が関与するという上記の報告から、日本人は小太りでも糖尿病を発症し易いことが説明可能と考えられます。これが“マグネシウム仮説”(図2)です。

10-007CDEJ 012008図2

日頃の食生活でMgを多く含む食品(*)を意識して摂る、脂肪分と塩分の摂取を極力控えてかつ運動習慣を持つことが大切です。特に肉類、牛乳、乳製品の多い欧米化の食事はMgが不足しやすく、またCaの過剰摂取はMgの吸収阻害を招きやすくなります。またCaとMgの摂取比は出来るだけ小さくすることが望ましく、伝統的日本型の食事(和食)がおすすめです。特にMgの不足を招きやすい人(ストレスの多い人、利尿剤を服用している人、牛乳や肉類の好きな人)は要注意で、栄養指導する際は十分に留意が必要です。米国では既にMg不足によるインスリン抵抗性を意識した糖尿病患者の栄養指導がなされており、日本でも日頃の栄養指導に十分なMg摂取を意識した食育がなされることを切に望みます。

* 側のひ孫と孫は優しい子かい?納得!(そば、のり、ひじき、豆、五穀、豆腐、マカデミアンナッツ、胡麻、わかめ、野菜、魚、椎茸、ココア、牡蠣、芋、納豆、果物等)

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