公開日:2015-07-01
健康な高齢女性の身体能力における経口マグネシウム補充効果: 無作為化比較対照試験
2014年にイタリア・パドヴァ大学医学部の研究者らが、“健康な高齢女性の身体能力における経口マグネシウム補充効果: 無作為化比較対照試験”と題して報告をしたので、その論文概要を以下に紹介いたします。
背景
マグネシウム不足は身体能力の低下と関係しますが、マグネシウム補充が高齢者の身体能力に影響を与えるかの試験は実施されていません。
目的
研究の目的は、12週間の経口マグネシウム補充が健康な高齢女性の身体能力を向上させることができるかどうかを調査することです。
デザイン
無作為化比較対照試験による並行群は、軽いフィットネス・プログラムに参加している139人の健康な女性(平均年齢71.5±5.2歳)を、コンピューターランダム化により治療群(マグネシウム300 mg/日、n = 62人)または対照群(プラセボ(偽薬)なしまたは介入なし、n = 77人)に割り付けられました。
試験開始時の評価と12週後に、主要評価として簡易身体能力バッテリー(Short Physical Performance Battery,SPPB、通常歩行速度,6 分間歩行テスト,階段駆け上がりパワーテストなど)、二次評価として下肢と握力のピークトルク等尺性と等速性強度の変化をみました。
結果
治療群(n = 53人)または対照群(n = 71人)に割り付けられた計124人の参加者が最終的な分析対象者となりました。
試験開始時、SPPBスコアは2群間で差が認められませんでした。12週後、対照群と比較して治療群は総SPPBスコア(Δ = 0.41 ± 0.24ポイント; P = 0.03)、椅子立ち上がり時間(Δ = -1.31 ± 0.33秒; P < 0.0001)、4メートル歩行速度(Δ = 0.14 ± 0.03 メートル/秒; P = 0.006) の有意な改善が認められました。
これらの調査結果は、推奨量よりも低いマグネシウム食事摂取量の参加者でより明らかでした。二次評価の調査結果に有意差は無く、重篤な有害事象も認められませんでした。
結論
12週間毎日行った酸化マグネシウム補充は、健康な高齢女性における身体能力を向上させるように思われます。
これらの知見では、年齢に関連した身体能力の低下を予防または遅らせるのにマグネシウム補充の役割が示唆されました。
参考資料:
Veronese N, Berton L, Carraro S, et al. Effect of oral magnesium supplementation on physical performance in healthy elderly women involved in a weekly exercise program: a randomized controlled trial. Am J Clin Nutr 100:974-981, 2014. doi: 10.3945/ajcn.113.080168. Epub 2014 Jul 9.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25008857
【MAG21研究会コメント】
この研究の研究者らにより、健康な高齢女性におけるマグネシウム補充が身体能力の低下を予防または遅らせる役割について、無作為化比較対照試験の報告をしたことに意義が有ります。
なお、当試験には酸化マグネシウムが使用されていますが、酸化マグネシウムは吸収しづらいことから一般的に便秘薬として使われています。この為、身体能力の低下を予防または遅らせるには、より吸収が良い塩化マグネシウムなどのマグネシウム化合物の方が適していると考えられます。
わが国でもマグネシウムの推奨量に対し、食事からの推定摂取量が不足しているので、高齢者の身体能力の低下を予防または遅らせる方法の一つとしてマグネシウム補充の検討が期待されます。
当ホームページでは、関連する記事として以下のサイトでマグネシウムとアスリートのパフォーマンスアップに関してご紹介してきました。
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