マグネシウム摂取量は冠動脈石灰化と逆関連: フラミンガムハートスタディー

公開日:2015-08-04

マグネシウム摂取量は冠動脈石灰化と逆関連: フラミンガムハートスタディー



2014年に米国のタフツ大学Jean Mayer USDA Human Nutrition Research Center on Aging、国立心肺血液研究所、ハーバード医科大学の研究者らが、“マグネシウム摂取量は冠動脈石灰化と逆関連: フラミンガムハートスタディー1”について報告をしたので、その論文概要を紹介します。



1 「フラミンガムハートスタディー」のコホート疫学調査は、米国・ボストンにほど近い町Framinghamで1948年にスタートしました。



http://www.epi-c.jp/e201_1_0001.html 



目的



研究の目的は、マグネシウム摂取量が冠動脈石灰化(CAC)と腹部大動脈石灰化(AAC)と関連しているかどうかを調べることでした。



背景



マグネシウムが心血管疾患の根底にあるアテローム性動脈硬化プラーク内の石灰化を防止するかもしれないことを動物と細胞研究が示唆しています。マグネシウム摂取量とヒトのアテローム性動脈石灰化の関連についてはほとんど解明されていません。



方法



フラミンガムハートスタディーの心血管疾患のない、心臓と腹部の多列検出器コンピュータ断層撮影(MDCT)を受けた参加者(2695人、年齢53±11歳)で食事摂取頻度調査票により推定した自己申告の総マグネシウム摂取量(食事およびサプリメント)と冠動脈石灰化(CAC)および腹部大動脈石灰化(AAC)の断面的な関連について多変量調整トービット回帰を用いて調べました。



冠動脈石灰化(CAC)および腹部大動脈石灰化(AAC)は、Agatstonスコア(AS)を用いて定量しました。



解析モデルは年齢、性別、肥満指数(BMI)、喫煙状態、収縮期血圧、空腹時インスリン値、総コレステロール/HDL-C、ホルモン補充療法(女性だけ)の使用、閉経状態(女性のみ)、高脂血症の治療、高血圧、心血管疾患予防、糖尿病、または自己申告摂取量のカルシウム、ビタミンDとK、飽和脂肪、食物繊維、アルコールおよびエネルギーを調整しました。



二次分析は、カットポイント(AS > 0およびAS ≥ 90thパーセンタイル以上の年齢、性別)として冠動脈石灰化(CAC)および腹部大動脈石灰化(AAC)のロジスティック回帰分析、ならびに性層別解析です。



結果



マグネシウム摂取量(中央値mg/日)をエネルギー調整して4分位(Q1 258.8 mg、Q2 303.6 mg、Q3 351.1 mg、Q4 427.4 mg)に分けて検討しました。



完全に調整したモデルにおいて、総マグネシウム摂取量一日当たり50 mg増えるごとに冠動脈石灰化(CAC)が22%低下(p<0.001)、腹部大動脈石灰化(AAC)が12%低下(P=0.07)と関連していました。



最大マグネシウム摂取群(427.4 mg/日)は最少摂取群(258.8 mg/日)と比較し、冠動脈石灰化(CAC)の確率は58%低下(p<0.001)、腹部大動脈石灰化(AAC)は34%低下(P<0.01)と関連していました。



男性よりも女性でより強い逆の関連が観察されました。



結論



心血管疾患のない地域在住の参加者において、マグネシウム摂取量は動脈石灰化と逆に関連し、脳卒中と致命的な冠状動脈性心疾患におけるマグネシウムの保護的な役割を果たしている可能性があります。



参考資料:



Hruby A, O'Donnell CJ, Jacques PF, Meigs JB, Hoffmann U, McKeown NM. Magnesium intake is inversely associated with coronary artery calcification: the Framingham Heart Study. J American College Cardiology Imaging 7:59–69, 2014. doi:10.1016/j.jcmg.2013.10.006



http://imaging.onlinejacc.org/article.aspx?articleID=178...



コメント



米国の「フラミンガムハートスタディー」は1948年来、権威のあるコホート疫学調査として知られています。



この研究者らによるマグネシウム摂取量と冠動脈石灰化は逆の関連を示しました。特に、マグネシウム摂取量一日当たり50 mg増える毎に冠動脈石灰化が22%有意に低下、マグネシウム摂取量が多いと冠動脈石灰化の確率は58%低下して腹部大動脈石灰化は34%低下し、マグネシウムは脳卒中と致命的な冠状動脈性心疾患における保護的な役割の可能性についての報告をしたことに意義があります。



当ホームページでは以下のサイトで、この研究者らの報告に関してご紹介してきました。



2015.07.17 高マグネシウム摂取は中年アメリカ人の糖尿病発症リスクを減らす



マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。



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