公開日:2014-08-13
食事性マグネシウム摂取とメタボリックシンドローム発症リスク: メタ解析
2014年、米国インディアナ大学、東京慈恵会医科大学の研究者らの食事性マグネシウム摂取とメタボリックシンドローム発症リスクのメタ解析に関する報告が電子版速報としてDiabetic Medicine誌に掲載されたので、その論文概要を以下に紹介します。
目的
メタ解析(過去に発表された論文を解析)を用いて関連する文献を統合することにより、定量的に食事性マグネシウム摂取とメタボリックシンドローム発症リスクとの関連を推計することです。
方法
2013年8月までPubMedおよびEMBASE(世界最大の医学関連文献データベース)に掲載された関連文献、そして、関連文献中の参考文献をグーグルまたは手による検索によって追加情報を得て調査しました。
最も高いマグネシウム摂取量と最も低い摂取量のグループ間を比較し、メタボリックシンドロームへの効果量を集めて解析するためにランダム効果や固定効果モデルを用いました。
用量反応相関は、マグネシウム摂取量100 mg/日の増加に対するメタボリックシンドロームのリスクを評価しました。
結果
対象個人計24473例中メタボリックシンドローム6311例を含む6つの横断的研究がメタ解析の対象として適正と判断されました。
最も摂取量の高いグループと最も低いグループを比較した食事性マグネシウム摂取量とメタボリックシンドロームの発症リスク(オッズ比0.69、95%CI 0.59、0.81)との間で逆相関(リスクが31%低下)が認められました。
マグネシウム摂取量1日あたり100 mg増加する毎にメタボリックシンドローム全体のリスクが17%低下(オッズ比0.83、95%CI 0.77、0.89)しました。
結論
食事性マグネシウム摂取量はメタボリックシンドロームの発症率と逆の関係にあることがメタ解析の所見から示唆されました。
さらなる研究、特に適切にデザインされた縦断的コホート試験および無作為化プラセボ対照臨床試験における確かなエビデンスを提供し、因果関係が確立することが望まれます。
参考資料:
Dibaba DT, Xun P, Fly AD, Yokota K, He K. Dietary magnesium intake and risk of metabolic syndrome: a meta-analysis. DOI: 10.1111/dme.12537
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/dme.12537/abst...
【コメント】
本研究では6つの横断的研究をメタ解析し、食事性マグネシウム摂取量が多いとメタボリックシンドロームの発症リスクを31%低下し、マグネシウム摂取量1日あたり100 mg増す毎にメタボリックシンドローム全体のリスクが17%低下することを明らかにした点に大変意義があると言えます。
この研究の主任研究者 Ka He教授は、以前からマグネシウム摂取量が最も多い群では最も少ない群に比べてメタボリックシンドロームになるリスクは31%減少。若い時から十分なマグネシウムの摂取が大切”と報告しています(He K, et al., Circulation 113:1675-1682, 2006)。
また、今回も Diabetes Care 33(12):2604-2610, 2010の論文(以下6番目のサイト)に続いて、MAG21研究会のメンバーである東京慈恵会医科大学の横田邦信教授も共同研究者として名を連ねています。
MAG21研究会のホームページでは、He教授らの論文などに関しても解説して来ました。
2011.09.21 マグネシウム摂取と2型糖尿病発症リスク
2010.12.21 マグネシウム摂取量と全身性炎症、インスリン抵抗性と糖尿病発症との関連
2007.08.23 女性及び小児とメタボリックシンドロームについて 小児メタボ
2007.08.21 メタボリックシンドロームの予防 -その2-
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。