公開日:2011-01-27
マグネシウム摂取とメタボリックシンドロームの関係
2008年、米国農務省, Tufts University, University of Marylandの共同研究者らは、米国人高齢者のマグネシウム(Mg)摂取とメタボリックシンドローム(MS)の関係について発表したのでお知らせします。
この論文の概要を以下にご紹介致します。
背景:
マグネシウム(Mg)はグルコースとインスリン代謝に関与する酵素に必須のコファクターです。食事性マグネシウムの低摂取は高齢者のメタボリックシンドローム(MS)のリスクと関連があるかもしれません。
目的:
この研究の目的は、高齢者で食事性マグネシウム摂取、代謝性リスクファクターとMS間の横断的な関係を調査することです。
方法:
この研究は、1981から1984年にマサチューセッツ州ボストン地域在住、60歳以上の535人(男性179人、女性356人)を対象に行なわれました。食事性マグネシウム摂取量は食事記録によって評価し、四分位に分類しました。体格指数(BMI)が腹囲の代わりに使われたこと以外、MSはThird Report of the National Cholesterol Education Program(NCEP-Ⅲ)の評価基準に基づいて定義しました。
ロジスティック回帰分析は、マグネシウム摂取量四分位、MSの有病率とMSの構成要素間の関係を調べるのに用いました。モデルは年齢、性別、BMI、人種、教育、婚姻、喫煙、アルコール摂取、運動、エネルギー摂取、飽和脂肪からのカロリー割合、高血圧または脂質治療薬の使用について調整しました。
結果:
マグネシウム摂取量はMSと逆の関連がみられました。マグネシウム摂取量四分位で最も高い群(中央値、384 mg/日)と最も低い群(中央値、188 mg/日)を比較すると有意にMSリスク低下が認められました(オッズ比: 0.36、95% CI 0.19-0.69)。有意な逆の関係は、マグネシウム摂取量とBMI(オッズ比: 0.47、95% CI:0.22-1.00)、および、空腹時血糖(オッズ比: 0.41、95% CI 0.22-0.77)との間で観察されました。
結論:
我々の研究は、マグネシウム摂取量が高齢者でMSの有病率と反対の関係が示されました。高齢者は、マグネシウムが豊富な食品、例えば、緑色野菜、豆類と全粒穀物を多く摂取することが奨励されます。
参考資料:
McKeown NM, Jacques PF, Zhang XL, Juan W, Sahyoun NR. Dietary magnesium intake is related to metabolic syndrome in older Americans. Eur J Nutr 47:210–216, 2008, DOI 10.1007/s00394-008-0715-x
http://www.springerlink.com/content/tx125x312k387460/
McKeown NM. Whole grain intake and insulin sensitivity: Evidence from observational studies. Nutrition Reviews 62:286-291, 2004
【コメント】
この論文の共同研究者らは、60歳以上の高齢者535人(男性179人、女性356人)を対象に調査した結果としてMg高摂取(1日当り約384 mg)と低摂取(1日当り約188 mg)を比較するとメタボリックシンドロームのリスクが64%低減することが分かります。
Mg摂取不足とメタボリックシンドロームに関し、以下の論文、書籍およびサイトをご参考にしてください。
2010.12.21 マグネシウム摂取量と全身性炎症、インスリン抵抗性と糖尿病発症との関連
2010.02.24 健常ヒト被検者の食後血清脂質反応に対するマグネシウムの影響
2009.12.29 生活習慣病に対するミネラル栄養の重要性 Mg(マグネシウム)
2009.09.08 WHO 飲料水中のカルシウムとマグネシウム: 公衆衛生的意義 2009発行
2009.02.10 糖尿病予備群含め2210万人=1年で340万人増 厚労省
2009.01.19 マグネシウムの脂肪細胞分化に及ぼす影響
2008.07.01 極低出生体重を伴った若年成人のグルコース調節
2008.06.03 『第51回日本糖尿病学会』で横田先生が発表
2008.05.09 糖尿病予備軍含め1870万人=4年で15%増 厚労省
2008.02.28 低血清マグネシウムとメタボリックシンドローム
2008.02.04 『日本糖尿病療養指導士認定機構 CDEJ News Letter』に横田先生の記事が掲載
2008.01.26 マグネシウム摂取量とメタボリックシンドロームの罹患率
2008.01.23 WHO報告書 『飲料水中の栄養素』-その2-
2008.01.22 WHO報告書 『飲料水中の栄養素』-その1-
2007.10.19 マグネシウムの食後高脂血症に及ぼす影響
2007.10.05 メタボリックシンドロームの患者数 -更新-
2007.09.26 マグネシウムQ&A Q7 マグネシウムは、生活習慣病の予防以外の疾病予防にも利用できますか?
2007.08.23 女性及び小児とメタボリックシンドロームについて マグネシウムとカルシウム・・・ マグネシウムとカルシウム摂取量の割合が重要ですか?
2007.08.23 女性及び小児とメタボリックシンドロームについて 女性のやせすぎに注意・・・
2007.08.21 メタボリックシンドロームの予防 -その2-
2007.08.20 メタボリックシンドロームの予防 -その1-
なお、糖尿病やメタボリックシンドロームなどとマグネシウム摂取不足と生活習慣病との関係は、横田邦信著の“マグネシウム健康読本”(現代書林)にも詳しく書かれていますのでご参考にして下さい。
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。