WHO 飲料水中のカルシウムとマグネシウム: 公衆衛生的意義 2009発行

公開日:2009-09-08

WHO 飲料水中のカルシウムとマグネシウム: 公衆衛生的意義 2009発行

世界保健機構(WHO)は、飲料水中のカルシウムとマグネシウム: 公衆衛生的意義 WHO 2009を発行し、WHOのホームページでも公開していますのでお知らせ致します。

この書籍は194ページからなり、当ホームページで以前ご紹介しましたが、WHOは飲料水中の栄養素と健康に関する調査を開始し、『飲料水中の栄養素』 WHO 2005年、『心血管疾患に対する硬水の予防効果の可能性』 WHO 2006年の報告書をそれぞれ発表しています。

この書籍2009の内容に関し、主な概要をハイライトします。

●       WHOは本書「謝辞」の欄に日本の厚生労働省からの支援として名前が明記されています。更に、大阪市立大学名誉教授、元日本マグネシウム学会理事長で骨粗鬆症に関する研究者 故 森井浩世(もりい・ひろとし)先生とご家族に弔慰が述べられています。

●       マグネシウム

マグネシウムは体内で4番目に豊富な陽イオンで細胞内液中では2番目に豊富な陽イオンです。マグネシウムは、およそ350のエネルギー代謝系などに関係する酵素の活性化に関与しています。また、たんぱく質と核酸の合成にも関与し、正常な血管張力およびインスリン感受性の維持に必要です。低マグネシウムは、内皮細胞の機能不全、血管反応の増加、血中C反応性タンパク(CRP)濃度の上昇、インスリン感受性の低下に関連しています。低マグネシウム状態は、高血圧、冠状動脈硬化性心疾患、2型糖尿病およびメタボリックシンドロームに関係しています。

K  高血圧

マグネシウム不足は高血圧の発病に関係し、血圧と血清マグネシウム値の間には負の相関が報告されています。しかし、臨床試験からのデータはまだ不十分です。

K  不整脈

心室と心房由来の不整脈は、低マグネシウム血症患者に報告されています。致死性不整脈、心室頻拍はマグネシウム静注で治療されています。

K  子癇前症

子癇前症(妊娠中毒症、妊娠20週後の高血圧症)とタンパク尿の合併症には、何十年間もマグネシウム塩で治療されて来ました。最近の臨床試験(Altman et al. 2002)では硫酸マグネシウムを使用し子癇のリスクが50%減少したと報告されています。

K  動脈硬化

動物実験では、マグネシウム摂取と動脈硬化率や発症と逆(=保護的)の関係が報告されています。

K  冠状動脈硬化性心疾患

ヒトでは、マグネシウムと冠状動脈疾患と逆(=保護的)の関係のエビデンスがあります。 3つの横断的研究では、血中C反応性タンパク濃度(CRP:冠状動脈疾患のリスク因子としての炎症マーカー)とマグネシウム摂取や血清中マグネシウム濃度の間に逆の関係があり、マグネシウムには抗炎症作用の可能性を示唆する報告があります。

K  糖尿病

いくつかの研究で2型糖尿病におけるマグネシウムの重要性が報告されています。最近の2つの研究では、マグネシウム摂取と2型糖尿病を発症するリスクとの間に逆(=保護的)の関係が報告されています。また経口マグネシウムサプリメントは、インスリン感受性と2型糖尿病の血糖コントロールを改善することも報告されています。

K  マグネシウム不足状態

アルコール中毒と腸管吸収不良症候群は、マグネシウム不足と関連した状態です。特定の薬、例えば利尿剤、ある種の抗生物質とガンの化学療法は、腎臓からのマグネシウムの排泄を増やします。

K  高マグネシウム血症

高マグネシウム血症の主な原因は、マグネシウム排泄能が著しく低下する腎不全です。マグネシウム塩の摂取増加によって排便習慣(下痢)に変化が起こる可能性があるが、めったに正常な腎機能を備えた人で高マグネシウム血症を来たしません。

K   消化管機能

マグネシウムと硫酸の両方が高濃度で存在する飲料水は便通を良くする効果があります。下剤の効果はサプリメントの形ではマグネシウムの過剰摂取により出ますが、食事中のマグネシウムと同一ではありません。

(参考文献)

WHO Calcium and Magnesium in Drinking-water : Public health significance, Geneva, World Health Organization, 2009

http://whqlibdoc.who.int/publications/2009/9789241563...

【MAG21研究会コメント】

WHOが飲料水中のカルシウムとマグネシウム:公衆衛生的意義 WHO 2009を発行したのは、エビデンスの蓄積により飲料水からのマグネシウム摂取により人体内の様々な機能にマグネシウムが必要不可欠との認識が示されたからといえます。

当ホームページでは、身体にとって必須・主要ミネラルのマグネシウム、カルシウムについて解説してきました。マグネシウムは、細胞内と細胞外のミネラルバランスをも調節しています。以下のアドレスをご参考にして下さい。

2007.07.26  マグネシウムの働き

2007.08.23  女性及び小児とメタボリックシンドロームについて マグネシウムとカルシウム・・・ マグネシウムとカルシウム摂取量の割合が重要ですか?

2007.08.24  マグネシウムの力 高血圧にはマグネシウム!

また、マグネシウムと糖尿病、高血圧やメタボリックシンドロームとの密接な関係についても解説して来ました。

2009.07.01  日本人の食事摂取基準(2010年版)

2009.06.02  血清および食事性マグネシウムと虚血性脳卒中のリスク

2009.05.07  米国成人の食事性マグネシウム摂取量

2009.04.20  高血圧治療ガイドライン2009

2009.03.13  糖尿病と合併症 -生活習慣との関わり-

2009.02.10  糖尿病予備群含め2210万人=1年で340万人増 厚労省

2008.09.30  WHOレビュー マグネシウム推奨量

2008.08.13  低マグネシウム血症と代謝性グルコース障害リスク: 10年追跡調査研究

2008.07.29  マグネシウムの降圧作用

2008.06.03  『第51回日本糖尿病学会』で横田先生が発表

2008.02.04  『日本糖尿病療養指導士認定機構 CDEJ News Letter』に横田先生の記事が掲載

2008.01.24  経口マグネシウムサプリメントの影響

2008.01.23  WHO報告書 『飲料水中の栄養素』-その2-

2007.08.21  メタボリックシンドロームの予防 -その2-

2007.08.20  メタボリックシンドロームの予防 -その1-

などのサイトでご紹介して来ました。

この記事に対するご意見やご質問を心からお待ちしております。

 

検索


新着記事