公開日:2009-05-07
米国成人の食事性マグネシウム摂取量
2003年、米国の国立研究機関National Center for Chronic Disease Prevention and Health Promotion, Centers for Disease Control and Preventionの研究者らは、米国成人の食事性マグネシウム摂取量についての研究結果を報告しています。
抄録をまとめます。
背景: 健康を維持することにマグネシウムは重要な役割を有するにもかかわらず、米国人集団の多くは、マグネシウムの十分な量を歴史的に摂っていない。更に、マグネシウムの摂取量においてかなりの人種または民族的格差が存在する。
目的: 米国人集団でマグネシウム摂取量についてより最近のデータを提供することとした。
方法: 全米健康栄養調査書1999-2000から20歳以上 4257人の参加者について、24時間の食事データを分析した。
結果: 各人種あるいは民族のマグネシウム中央値摂取量、平均値摂取量(mg/日)は以下の結果であった。
中央値 平均値
白人男性 326 352
アフリカ系アメリカ人男性 237 278
メキシコ系アメリカ人男性 297 330
白人女性 237 256
アフリカ系アメリカ人女性 177 202
メキシコ系アメリカ人女性 221 242
男性および女性ともに白人の食事性マグネシウムの平均摂取量がメキシコ系アメリカ人ではなく、アフリカ系アメリカ人より有意に高かった。マグネシウム摂取量は、年齢増加と共に減少した(白人P 0.035; アフリカ系アメリカ人とメキシコ系アメリカ人 P<0.001)。
男性は、3人種および民族集団(P<0.001)それぞれにおいて、女性よりマグネシウム摂取量が高かった。
ビタミン、ミネラルまたは栄養補助食品を利用した白人男性、アフリカ系アメリカ人男性および白人女性は利用しなかった人々より食事でより多くのマグネシウムを有意に摂取していた。
結論: 米国成人の相当数は、食事で十分なマグネシウムを摂っていない。更に、マグネシウムの人種的または民族的差は存続しており、格差医療の一因かも知れない。
Ford ES and Mokdad AH. Dietary Magnesium Intake in a National Sample of U.S. Adults. J Nutr 133: 2879–2882, 2003
http://jn.nutrition.org/cgi/reprint/133/9/2879
【MAG21研究会コメント】
この米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention)の研究者らが、マグネシウムと健康との密接な関係を重視し、毎日の食事からのマグネシウム摂取量について分析した結果は大変興味があります。
米国のマグネシウム推奨量については、当ホームページ内で既に取り上げてきています。
以下のサイトをご検索下さい。
約6年前の報告ですが、およそ10年前のアメリカ人(20歳以上)のマグネシウム推奨量と摂取量を比較すると、人種的または民族的差は可也ありますが、男女とも1日当たり83~183mgが不足していると推定されます。
米国人男性と女性(20歳以上)のマグネシウム推奨量と中央値摂取量の比較(mg/日)
推奨量 摂取量 不足分
米国人男性 400-420 237-326 94-183
米国人女性 310-320 177-237 83-143
研究者らは、「マグネシウムは、体内で数百もの生理的プロセスにとって極めて重要な元素で、マグネシウムの不十分な摂取量は、心血管疾患、高血圧、糖尿病と頭痛の発生を含むいろいろな悪い健康結果と関連がある。さらにまた、マグネシウムは骨の発達に重要でアスリートの運動能力の役割を果たす可能性がある」と述べています。さらに、「マグネシウムは多くの健康上の利点の可能性を持つので、米国人口で食事からのマグネシウムの摂取を増加させることは重要な公衆衛生の目標であるべきである」とも述べています。
わが国においてもアメリカのマグネシウム摂取不足と似た状況にありますので、若い時からのマグネシウムを十分摂る食育習慣を意識していただきたいものです。また下線部のことは日本でも当てはまることですが、わが国の認知がまだそこまで達してはいない点は今後の日本人の健康を考えた場合に大変憂えます。
日本の国公立研究機関でCDCの研究者のようにマグネシウムの重要性について研究発表するガッツのある研究者はいないのでしょうか?