白米摂取と2型糖尿病リスクの関係

公開日:2012-08-17

白米摂取と2型糖尿病リスクの関係



2012年3月、米国ハーバード大学の研究者らは、白米消費量(摂取量)と2型糖尿病リスクのメタ解析を報告した論文概要を以下に紹介します。



目的:



白米の消費と2型糖尿病のリスクとの関連性についてのエビデンスを要約し、潜在的な用量反応関係の定量化を検討しました。



デザイン:



前向きコホート研究のメタ解析。



データソース:



MedlineEmbaseのデータベースで20121月までに発表された白米摂取と糖尿病のキーワードを含む論文を対象に検索しました。



研究選択:



研究対象は、白米摂取レベルによって2型糖尿病リスクの推定を報告した前向きコホート研究です。



データ統合:



相対リスクはランダム効果モデルを使用して集積し、用量反応関係について評価しました。



結果:



アジアと西洋諸国を含む4研究(日本、中国、米国、オーストラリア)が検索されました。



対象は352384人で4~22年間の追跡結果、13284人が2型糖尿病を発症していました。



白米消費量(摂取量)は西洋よりアジア諸国(中国と日本)がよりはるかに高いレベルでした(平均摂取量は1~2 杯/週に対して3~4 杯/日(1杯=炊いた白米158g))。白米摂取量と2型糖尿病発症リスク間には有意な正の相関が認められました。白米の最高摂取群と最低摂取群を比較した2型糖尿病の集積相対リスク(RR)は全体で27%(RR 1.27, 95% CI 1.04-1.54)、アジア人でより強く55%(RR 1.55, 95% CI 1.20-2.01)、次に西洋人で12%(RR 1.12, 95% CI 0.94-1.33)(P = 0.038)の上昇がみられました。



全体の容量反応メタ解析では、白米摂取量が1日1杯増えるごとに2型糖尿病発症リスクが11%(RR 1.11, 95% CI 1.08-1.14) (P < 0.001)上昇しました。



二次解析で性別による潜在的な相互作用を評価し、集積相対リスクは男性(RR 1.08, 0.87-1.34)より女性(RR 1.46, 1.16-1.83)で関連が強く示されました。



結論:



白米の消費量(摂取量)が多くなると、特にアジア人(中国、日本)では、2型糖尿病の発症リスクが有意に上昇します。



参考文献:



Hu EA, Pan A, Malik V, Sun Q. White rice consumption and risk of type 2 diabetes: meta-analysis and systematic review. BMJ 2012;344:e1454



http://www.bmj.com/content/344/bmj.e1454?...



コメント



この前向きコホート研究のメタ解析で、白米の消費量増加に伴い2型糖尿病の発症リスク上昇に関することが明らかになりました。



この論文の本文で考察されていますが、白米の摂取量は世界的に多く、そしてGI(glycemic index)値が高いため2型糖尿病発症リスクの上昇に関係することが知られています。



更に研究者らは、白米は玄米などの全粒穀物に比べ精米工程で食物繊維、マグネシウム、ビタミンなどの栄養素が失われますが、特に食物繊維とマグネシウムは2型糖尿病発症リスクの低減と関係していると考察しています。



糖尿病の発症を防ぐには、白米などの精製炭水化物ではなく全粒穀物摂取が推奨されます。低GI値の穀類は食物繊維・マグネシウムが多くインスリン感受性を保つので、2型糖尿病・メタボリックシンドロームなど、インスリン抵抗性を病態基盤とした疾病の発症予防に極めて有用です。



2012.02.21  特集:マグネシウムと生活習慣病 日本人の食生活はマグネシウム不足



2011.09.21  マグネシウム摂取と2型糖尿病発症リスク



2011.01.27  マグネシウム摂取とメタボリックシンドロームの関係



2009.12.15  閉経後女性の多民族的コホートにおける食事性マグネシウム摂取と炎症および内皮機能障害マーカーの関係



2009.10.29  アメリカ人男性の食習慣と2型糖尿病リスク



2008.08.27  激動時代の糖尿病患者



2008.07.29  マグネシウムの降圧作用



2008.01.25  食物繊維とマグネシウムの摂取量と2型糖尿病の発症率



2007.08.24  マグネシウムの力 マグネシウムとメタボリックシンドローム



2007.08.21  メタボリックシンドロームの予防 -その2-



2007.08.20  メタボリックシンドロームの予防 -その1-



2007.08.13  なぜマグネシウム不足?



なお、日本人の主食であるご飯の米を参考に若干コメントします。全粒穀物には食物繊維とマグネシウム含有量が多く、全粒穀物の玄米から精白米の過程で栄養素はおよそ1/41/7に減少する為、食物繊維とマグネシウムの摂取源としては玄米が望ましいと言えます。



五訂増補日本食品標準成分表a



全粒穀物 ごはん



                玄米      ====>  精白米



マグネシウム(mgb                 49                              7



食物繊維(gc



水溶性食物繊維                        0.2                           0.0



不溶性食物繊維                        0.2                           0.3



食物繊維総量           1.4                           0.3



参考



a. 五訂増補日本食品標準成分表http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu...



b.マグネシウム(可食部100g当りの含有量: mg)。



マグネシウムは、全粒穀物、大豆製品、魚介類、海藻、ナッツ類に多く含まれる。



日本人の食事摂取基準(2010)では成人男子推奨量370mg/日、成人女子推奨量 290mg/日。



c. 食物繊維(可食部100g当りの含有量: g)。



食物繊維は、消化管機能や腸の蠕動(ぜんどう)運動の促進、栄養素の吸収を緩慢にしたりする等さまざまな生理作用が知られている。



食物繊維は、穀類、豆、野菜、きのこ、海藻等に多く含まれる。



日本人の食事摂取基準(2010)では成人男子目標量 19g/日、成人女子目標量 17g/日。



d.日本人の食事摂取基準(2010



http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/sessyu-kijun...



当ホームページでは、マグネシウムの摂取不足と2型糖尿病やメタボリックシンドロームなど生活習慣病の発症との密接な関係について解説していますので、以下のサイトをご参考にしてください。



2012.02.21  特集:マグネシウムと生活習慣病 日本人の食生活はマグネシウム不足



マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。




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