公開日:2015-02-18
経口マグネシウム補充: 2型糖尿病の世界的な課題に直面する補助的選択肢?
2014年メキシコ・Mexican Social Security Instituteの研究者らが、“経口マグネシウム補充: 2型糖尿病の世界的な課題に直面する補助的選択肢?”と題して報告をしたので、その論文概要を以下に紹介します。
背景
糖尿病患者の代謝コントロールと一次予防に寄与する解答を探すため、2型糖尿病の発症リスクに関する血清および/またはマグネシウム摂取量との関係についてのコホート研究からのエビデンスならびに血糖値を低下させる経口マグネシウムの有効性に関する臨床試験のレビューを行いました。
方法
医学論文のデータベースMEDLINE、EMBASEと Cochrane Controlled Trials Registerで2013年9月30日までに更新された論文を対象に検索しました。
結果
コホート研究は計10件のさまざまな民族的背景から米国やヨーロッパの白人、メキシコ人、日本人、ハワイのポリネシア人の対象者305903人、平均追跡調査期間10.5年が確認されました。
7件のコホート研究の対象者292653人、平均追跡調査期間12年間(24388人/年)にマグネシウム摂取量が2型糖尿病の発症リスクの低下と関連し有意な逆相関を認めました。
また、2件の研究の対象者71919人、平均追跡調査期間5.5年(13076人/年)では食事中の低いマグネシウム摂取量が糖尿病のリスクと関連していないことが示され、1件の研究(8735人/年)では低マグネシウム血症がブドウ糖代謝障害の発症に関連していることが示されていました。
臨床試験は計11件のランダム化比較試験で確認されました。
5件の研究はハイリスク被験者の血糖値を低下させる経口マグネシウムの有効性を認め、6件の研究は2型糖尿病患者で一貫性のない結果を示しました。
結論
一般集団の通常の食事とハイリスク群における経口マグネシウム補充によるマグネシウム摂取は糖尿病の予防に推奨されます。
2型糖尿病患者の血糖値の低下における経口マグネシウム補充の有効性は一貫性がありません。
参考資料:
Guerrero-Romero F, Rodríguez-Morán M. Oral magnesium supplementation: An adjuvant alternative to facing the worldwide challenge of type 2 diabetes? Cir Cir 82:242-248, 2014
http://www.revistasmedicasmexicanas.com.mx/nieto/cir...
【コメント】
今回、2型糖尿病と経口マグネシウム補充の関係に関するコホート研究と臨床試験のレビューを行い、一般とハイリスク群の経口マグネシウム補充は、世界的に急増する2型糖尿病の予防に推奨されることを明らかにした報告として大変意義があります。
Dr. Rodríguez-Morán, Dr. Guerrero-Romeroは2012年メキシコのメリダで開催された第13回国際マグネシウムシンポジウム(SDRM)の会長ご夫妻で、マグネシウムと糖尿病、高血圧、メタボリックシンドローム、うつ病などに関し、精力的に研究を進め多くの研究論文を発表されています。2006年日本で開催された第11回国際マグネシウムシンポジウム(SDRM)に参加されました。MAG21研究会のホームページではこれまで種々の研究論文を紹介して来ております。
2013.07.25 マグネシウムは膵β細胞機能を改善してインスリン感受性の変動を補正する: 二重盲検無作為化臨床試験
2013.07.09 インスリン分泌は非糖尿病者の低マグネシウム血症で減少
2012.01.24 塩化マグネシウム補充による降圧効果の臨床試験
2011.11.17 高齢2型糖尿病患者のうつ治療における経口マグネシウムサプリメントの有効性と安全性: ランダム化、同等性試験
2011.11.07 高齢の糖尿病患者のうつ症状と低マグネシウム血症
2008.08.13 低マグネシウム血症と代謝性グルコース(ブドウ糖)障害のリスク: 10年追跡調査研究
2008.06.03 『第51回日本糖尿病学会』で横田先生が発表
2008.02.28 低血清マグネシウムとメタボリックシンドローム
2007.08.20 メタボリックシンドロームの予防 -その1-
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。