公開日:2014-12-01
マグネシウムサプリメントはコントロール不良な2型糖尿病の血糖を改善(無作為二重盲検)
1998年、ブラジルBahia Federal University Medical Schoolの研究者らは、マグネシウムのサプリメント(酸化マグネシウム)はコントロール不良な2型糖尿病の血糖を改善する(無作為二重盲検)と報告しているので、その論文の概要を紹介します。
目的
低マグネシウム血症は2型糖尿病患者の25~38%に起こります。この様なケースは、いくつかの研究でマグネシウム(Mg)の低下とインスリン抵抗性および/またはインスリン分泌の減少との関連が示唆されています。
目的は、マグネシウムサプリメント(酸化マグネシウム[MgO])が2型糖尿病患者における代謝コントロールを改善するかどうかを評価することです。
研究デザインと方法
対象者は、Bahia Federal University附属病院で食事療法(17人)や食事療法と経口糖尿病薬(111人)により治療中の2型糖尿病患者128人(年齢30~69歳の男性32人、女性96人; HbA1c > 8.0%)でした。低マグネシウム血症または腎機能低下のリスクのある患者は除外しました。
この研究デザインは無作為二重盲検プラセボ対照比較試験です。患者には30日間毎日プラセボ、酸化マグネシウム(MgO)20.7 mmol (834.3 mg)あるいはMgO 41.4 mmol (1668.6 mg)を投与しました。
マグネシウム濃度は、血漿、単核細胞(単核球)および24時間尿サンプルで測定しました。空腹時血糖、HbA1cおよびフルクトサミンは代謝コントロールの指標として使用しました。
結果
患者128人のうち、47.7%は低マグネシウム血症、そして31.1%は単核細胞(単核球)の低マグネシウムレベルを有していました。
糖尿病患者における細胞内マグネシウムは健常集団よりも有意に低かった(血液ドナー62人、1.4±0.6対1.7±0.6 µg/mg総タンパク量)。血漿と細胞内マグネシウム濃度(r=0.179、P=0.15)またはマグネシウム濃度と血糖コントロール(r=0.165、p=0.12)の間で相関は認められなかった。細胞内マグネシウムレベルは末梢神経障害を有する患者が有しない患者より低かった(1.2±0.5対1.5±0.6 µg/mg)。同様の所見は冠動脈疾患を有する患者において観察されました(1.0±0.5対1.5±0.6µg/mg)。
プラセボおよびマグネシウム20.7mmolのグループで、血漿および細胞内レベルの変化も、血糖コントロールの改善のいずれも観察されませんでした。マグネシウム41.4 mmolとの置換は、血漿、細胞、および尿のマグネシウムを増加する傾向にあり、フルクトサミン(通常1.87~2.87mmol/L)の大幅な低下(4.1±0.8から3.8±0.7mmol/L)を引き起こしました。
研究集団の特徴および治療前後の評価(一部抜粋)
MgO 酸化マグネシウム、BMI 体格指数、Mg マグネシウム、HbA1c 糖化ヘモグロビン。
データ 平均±標準偏差。
*p < 0.05、赤色は統計的有意性を示す。
* 図表をクリックすると拡大表示します。
結論
特に神経障害または冠動脈疾患を伴う2型糖尿病のコントロール不良の患者においてマグネシウムの低下は一般的です。
2型糖尿病患者のコントロール不良を改善または慢性の合併症を防ぐためルーチンまたは選択的管理を確立するために通常より高い用量でのマグネシウムのより長期の使用が必要とされます。
参考資料:
Lima M de L, et al., The Effect of Magnesium Supplementation in Increasing Doses on the Control of Type 2 Diabetes. Diabetes Care 21:682-686, 1998
http://care.diabetesjournals.org/content/21/5/682
【コメント】
この論文に関しては以前、当MAG21研究会のホームページで紹介しましたが、詳細については報告しておりませんでしたので、ここにその詳細を記事にしました。
2007.08.20 メタボリックシンドロームの予防 -その1-
この研究の研究者らによると食事療法や食事療法と経口糖尿病薬により治療中の2型糖尿病患者に対し、無作為二重盲検プラセボ対照比較試験によるマグネシウムのサプリメント(酸化マグネシウム)は代謝コントロール不良な2型糖尿病を改善するのは大変興味深く今回詳細を報告することにしました。
なお、サプリメントとして使用された酸化マグネシウムは、わが国では少量で制酸薬とか尿路結石の予防薬、多量で便秘薬として使われています。酸化マグネシウムは腸管からの吸収が他のマグネシウム化合物より悪いため便秘薬として有効です。
糖尿病の血糖コントロールには塩化マグネシウム、有機マグネシウムなどが腸管からの吸収が良いので、酸化マグネシウムより効果が優れています。
当MAG21研究会では、マグネシウムを使用した臨床介入試験に関する論文について紹介して来ました。
2007.08.20 メタボリックシンドロームの予防 -その1-
2008.02.28 低血清マグネシウムとメタボリックシンドローム
2008.06.03 『第51回日本糖尿病学会』で横田先生が発表
2009.01.19 マグネシウムの脂肪細胞分化に及ぼす影響
2010.02.24 健常ヒト被検者の食後血清脂質反応に対するマグネシウムの影響
2011.11.17 高齢2型糖尿病患者のうつ治療における経口マグネシウムサプリメントの有効性と安全性: ランダム化、同等性試験
2012.01.24 塩化マグネシウム補充による降圧効果の臨床試験
2013.02.01 経口マグネシウム補充は非糖尿病者のインスリン抵抗性を低減: 二重盲検プラセボ対照ランダム化試験
2013.07.25 マグネシウムは膵β細胞機能を改善してインスリン感受性の変動を補正する: 二重盲検無作為化臨床試験
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。