インスリン分泌は非糖尿病者の低マグネシウム血症で減少

公開日:2013-07-09

インスリン分泌は非糖尿病者の低マグネシウム血症で減少



2011年、メキシコ・Mexican Social Security Instituteの研究者らは、“インスリン分泌は非糖尿病者の低マグネシウム血症で減少”に関する報告をしたので、その論文の概要を以下に紹介します。



背景



マグネシウムはインスリンを介するブドウ糖の取り込みを調整しますが、インスリン分泌におけるマグネシウムの役割に関するデータは殆どありません。この研究では、血清マグネシウム濃度が減少した非糖尿病者でインスリン分泌の機能障害に関与しているかどうかを検討しました。



方法



対象者は、182人の健常者、18~65歳の男性と非妊娠女性で、集団ベースの横断的研究に登録され、低マグネシウム血症(<1.8 mg/dL)と正常マグネシウム血(≥1.8<2.6 mg/dL)のグループに割り当てられました。その後、インスリン分泌でマグネシウムの役割を評価する為ブドウ糖の状態で正常耐糖能(NGT)、空腹時血糖異常(IFG)、耐糖能異常(IGT)に階層化しました。また、 インスリン分泌能は第1相・第2相インスリン分泌で評価しました。



年齢、性別、腹囲、体格指数(BMI)はマッチング基準としました。2型糖尿病、高血圧、慢性疾患、下痢、アルコール摂取、腎機能障害、腫瘍および過去6ヶ月間の薬剤あるいはマグネシウムサプリメントの使用は除外基準としました。



結果



この研究集団の臨床およびその特徴を表1に示します。

  血清マグネシウム濃度と第一相・第二相のインスリン分泌間のスピアマン係数は、全体で(r = 0.265, p < 0.0005; r = 0.541, p < 0.0005)、正常耐糖能(r = 0.369, p = 0.001; r = 0.618, p < 0.0005)、空腹時血糖異常(r = 0.320, p = 0.02; r = 0.449, p = 0.001)、耐糖能異常(r = 0.129, p = 0.37; r = 0.522, p < 0.0005)のグループで有意な正の相関を示しました。



血清マグネシウム濃度と第1相・第2相のインスリン分泌間の多変量線形回帰分析では、全体に対して[B = 75.2; 95%信頼区間(CI)27.6–122.7; B = 25.4; 95% CI 16.4–34.3]、正常耐糖能(B = 129.6, 95% CI 38.1–221.1; B = 40.3, 95% CI 23.7–56.8)、空腹時血糖異常(B = 75.2, 95% CI 27.6–122.7; B = 15.1, 95% CI 4.2–30.2)、耐糖能異常(B = 57.4, 95% CI 23.5–138.3; B = 25.4, 95% CI 16.4–34.3)グループで有意な関連を示しました。



表 1. 研究集団の臨床およびその特徴(一部抜粋)
10-123 Mgとインスリン分泌



HOMA-IR(インスリン抵抗性指数)、HOMA-β(インスリン分泌能指数)



  *p 値は低マグネシウムと正常マグネシウム血間の比較(赤色は統計的有意性を示す)。



**p 値はMann-Whitney(マン-ホイットニー)U検定で推定(青色は統計的有意性を示す)。



* 各表をクリックすると拡大表示します。



結論



低マグネシウム血症を伴った非糖尿病者で低マグネシウム血症は第1相・第2相のインスリン分泌の低下と関連することが示されました。



参考資料:



Rodríguez-Morán M, Guerrero-Romero F. Insulin secretion is decreased in non-diabetic individuals with hypomagnesaemia. Diabetes/metabolism Research and Reviews, 27:590-596, 2011



http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21488144 



コメント



インスリン分泌に関するマグネシウムの役割について実験動物でのデータはありますが、ヒトに於けるデータはありません。



このメキシコの研究者らは、初めて人に於ける低マグネシウム血症を伴った非糖尿病者の低マグネシウム血症はインスリン分泌の低下と関連することを示したことに大変意義があると言えます。



今後の研究で、低マグネシウム血症を伴った非糖尿病者に対し、マグネシウム補充/介入により第1相と第2相インスリン分泌の改善などの確認が期待されます。



このメキシコの研究者らDr. Rodríguez-Morán M, Dr. Guerrero-Romero Fは昨年メキシコで開かれた国際マグネシウムシンポジウムの会長ご夫妻で、マグネシウムと糖尿病、高血圧、メタボリックシンドローム、うつ病などに関し、精力的に研究を進め多くの研究論文を発表されています。MAG21研究会のホームページでは、一部の研究論文を紹介して来ました。



2012.01.24  塩化マグネシウム補充による降圧効果の臨床試験



2011.11.17  高齢2型糖尿病患者のうつ治療における経口マグネシウムサプリメントの有効性と安全性: ランダム化、同等性試験



2011.11.07  高齢の糖尿病患者のうつ症状と低マグネシウム血症



2008.08.13  低マグネシウム血症と代謝性グルコース(ブドウ糖)障害のリスク: 10年追跡調査研究



2008.06.03  『第51回日本糖尿病学会』で横田先生が発表



2008.02.28  低血清マグネシウムとメタボリックシンドローム



2007.08.20  メタボリックシンドロームの予防 -その1-



マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。




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