公開日:2016-08-05
血圧に対するマグネシウムサプリメントの効果: ランダム化二重盲検プラセボ対照試験のメタ解析
2016年、米国インディアナ大学、中国Beijing Pinggu Hospital、米国スタンフォード大学、ハワイのマグネシウム教育研究センター、カナダ・マギル大学、福島県立医科大学の研究者らが、“血圧に対するマグネシウムサプリメントの効果: ランダム化二重盲検プラセボ対照試験のメタ解析”について報告をしたので、その論文概要を紹介します。
背景
マグネシウム(Mg)サプリメントの降圧効果は一貫した結論が得られていません。
目的
目的は、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験から入手可能なエビデンスを統合し、血圧に対する経口マグネシウムサプリメントの効果を定量化することです。
方法
MEDLINEとEMBASEのデータベースから2016年2月1日までに公開された成人計2,028人の正常血圧と高血圧に対するマグネシウムサプリメントの影響を34件の臨床試験データでメタ解析をしました。
血圧と血清マグネシウム値の変化の加重平均差は、ランダム効果メタ解析により算出しました。
結果
マグネシウムサプリメント中央値368 mg/日(範囲: 238~960 mg/日)を中央値3ヶ月間 (範囲: 3 週間~6 ヶ月間)摂取すると、収縮期血圧が2.00 mmHg(95%信頼区間、0.43–3.58)、拡張期血圧が1.78 mmHg(95%信頼区間、0.73–2.82)と有意に低下し、血清マグネシウム濃度はプラセボと比較して0.05 mmol/L(95%信頼区間、0.03、0.07)の上昇を認めました。
平均して、血清マグネシウムが0.1 mmol/L上昇する毎に拡張期血圧が2.26 mmHg低下する関係が認められました(95%信頼区間、0.27–4.26; n=20件の臨床試験)。
制限3次スプライン曲線を用いて、300 mg/日または1ヶ月間の摂取によるマグネシウムサプリメントは血清マグネシウム値上昇とともに有意な血圧低下を示し、血清マグネシウムは収縮期血圧でなく拡張期血圧と逆に関連が見られました(P < 0.05)。
層別解析では、血圧のより大きな低下は、高品質のマグネシウムサプリメントまたは試験中の低い脱落率(P <0.05)の臨床試験で認められる傾向にありました。
マグネシウムサプリメントの種類は、有機マグネシウムとして乳酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、pidolateマグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム、または無機マグネシウムとして酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウムでした。
結論
この研究結果は、成人の血圧を下げることに対するマグネシウムサプリメントの因果効果を示しています。
参考資料:
Zhang X, Li Y, Del Gobbo LC, Rosanoff A, Wang J, Zhang W, Song Y. Effects of Magnesium Supplementation on Blood Pressure: A Meta-Analysis of Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Trials. Hypertension 68:324-333, 2016
http://hyper.ahajournals.org/content/68/2/324.long
【コメント】
今までに多くの疫学調査、臨床試験によるマグネシウムと血圧に関して報告されています。
しかし、この研究は、血圧に対するマグネシウムサプリメントの効果を調査するため、2016年2月1日までに報告された臨床試験でランダム化二重盲検プラセボ対照試験34件のデータを統合して解析したものです。
降圧剤のような大きな効果は認められませんが、マグネシウムサプリメントによる摂取量368 mg/日は血清マグネシウム値を有意に上昇させ、収縮期血圧を2.00 mmHgと拡張期血圧を1.78 mmHgと有意に低下させ、血清マグネシウムが0.1 mmol/L上昇する毎に拡張期血圧が2.26 mmHg低下することを報告したことに意義があります。
なお、メタボリックシンドロームの診断基準の血圧値は、いわゆる高血圧の基準である140/90 mmHg以上ではなく、130かつまたは85 mmHg以上です。この点は非常に興味ある点で、マグネシウム摂取不足とメタボリックシンドローム発症リスクとの関連があることと深く関係すると考えられます。
当ホームページでは以下のサイトで、マグネシウムと血圧、降圧などの関係についてご紹介してきました。
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マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。