血清および食事性マグネシウムと虚血性脳卒中のリスク

公開日:2009-06-02

血清および食事性マグネシウムと虚血性脳卒中のリスク:コミュニティー研究の動脈硬化症リスク

2009年、米ミネソタ大学と大阪大学の共同研究者らは、血清および食事性マグネシウムと虚血性脳卒中のリスクに関するコミュニティー研究で動脈硬化リスクを黒人と白人男女14221人に対する15年間の追跡調査結果を報告しました。

目的:   著者らは、黒人と白人の間で血清または食事性マグネシウムと虚血性脳卒中の発生関係を調査した。

方法:   1987年-1989年の間に、45-64歳の男女14221人がコミュニティー研究集団で、動脈硬化リスクの最初の調査に参加した。脳卒中の発生は病院記録から確認した。

結果:   ベースラインで高血圧と糖尿病の低い有病率がより高い血清マグネシウム濃度と関係していた。15年間の追跡調査中に、577名の虚血性脳卒中が発症した。血清マグネシウムは、虚血性脳卒中発生率と逆相関していた。年齢・性別・人種を調整した虚血性脳卒中の発生率は、血清マグネシウム濃度が≤1.5、1.6、1.7、≥1.8 mEq/Lに対し、それぞれ1.0、0.78(95%信頼区間(CI):0.62、0.96)、0.70(95%CI:0.56、0.88)、0.75(95%CI:0.59、0.95)(P= 0.005)であった。高血圧と糖尿病の調整後は有意差のないレベルに減少した。食事性マグネシウム摂取量は、虚血性脳卒中の発生率とわずかに逆の関係(P= 0.09)であった。

考察:   低血清マグネシウム濃度は、高血圧と糖尿病の影響を通して虚血性脳卒中リスクの増加にある程度関連する可能性がある。

参考資料:

Ohira T, Peacock JM, Iso H, Chambless LE, Rosamond WD, Folsom AR. Serum and Dietary Magnesium and Risk of Ischemic Stroke: The Atherosclerosis Risk in Communities Study. Am J Epidemiol Advance Access published April 16, 2009

【MAG21研究会コメント】

大阪大学医学部公衆衛生学の磯博康教授(論分の3人目の共同執筆者)の研究グループでは、これまで国内においても生活習慣病に関する大規模な疫学研究が継続され、わが国でもマグネシウム摂取不足が糖尿病の発症に関わることを述べておられ、当ホームページでも紹介をしました。

2009.03.13 糖尿病と合併症 -生活習慣との関わり-

今回の疫学調査研究はマグネシウム濃度・食事性マグネシウム摂取量が動脈硬化症に虚血性脳卒中発症と関連する可能性を示した興味ある報告と言えます。今後も、マグネシウム摂取不足と糖尿病・メタボリックシンドローム発症との関連の疫学的研究報告がなされることが期待されます。

これまで当ホームページでは以下のサイトで、これまでに報告されたマグネシウム摂取不足と生活習慣病との関連の記事を掲載しています。

2009.02.19 マグネシウム不足が深刻

2008.12.26 肥満小学生はメタボ予備軍=女性はリスク10倍

2008.12.03 ドイツ10人に1人がマグネシウム不足

2008.11.29 ドイツのマグネシウム推奨量

2008.11.20 マグネシウム健康読本

2008.10.30 マグネシウムと脂質異常症

2008.08.05 東京都民マグネシウム不足が深刻

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