公開日:2009-08-25
経口マグネシウムサプリメントは軽症高血圧患者の24時間血圧を低下
2009年、ギリシャAristotle 大学附属AHEPA 病院の研究者らは、「経口マグネシウムサプリメントは軽症高血圧外来通院患者の24時間血圧を低下」についての研究結果を報告しました。
【背景】
蓄積されているエビデンスによると、マグネシウムの役割は本態性高血圧の病態生理学に関係しています。先のマグネシウムサプリメントの高血圧に効く有効性を評価した研究では、矛盾した結果を報告しています。この研究は、経口マグネシウムサプリメントの影響を軽症高血圧患者で24時間血圧と細胞内イオン状況について調査しました。
【方法】
合計48人の軽症で合併症の無い高血圧患者が研究に参加しました。このうち、24人は12週間のライフスタイル推奨量に加えて毎日600mgのpidolateマグネシウム投与群で、また年齢と性別をマッチしたコントロール群(24名)はライフスタイル推薦量のみとしました。ベースライン時と研究終了時(12週間後)に、外来通院血圧モニター、血清と細胞内イオン濃度、また、尿中マグネシウム濃度決定のため24時間の尿採取を実施しました。
【結果】
マグネシウムサプリメント投与のグループでは、コントロールグループと比較し、少しではあるが24時間の収縮期および拡張期血圧レベルの有意な低下が観察されました(それぞれ−5.6 ± 2.7 vs. −1.3 ± 2.4 mm Hg, P <0.001 および −2.8 ± 1.8 vs. −1 ± 1.2 mm Hg, P = 0.002)。マグネシウムサプリメントの影響は、昼夜時間帯で一貫して見られました。血清マグネシウム濃度と尿中マグネシウム排出は、介入グループで有意に増加していました。介入グループでは細胞内カルシウムとナトリウム濃度は低下したが、細胞内マグネシウムとカリウム濃度は上昇しました。コントロールグループでは細胞内イオンのどれも有意な変化はありませんでした。
【結論】
この研究は、経口マグネシウムサプリメントが軽症高血圧患者の少しですが、一貫して外来通院血圧低下と関係していることを示唆します。
参考資料:
Hatzistavri LS, Sarafidis PA, Georgianos PI, et al. Oral Magnesium Supplementation Reduces Ambulatory Blood Pressure in Patients with Mild Hypertension. American J Hypertension advance online publication 16 July 2009. doi:10.1038/ajh.2009.126
http://www.nature.com/doifinder/10.1038/ajh.2009.126
【MAG21研究会コメント】
この論文はギリシャで経口マグネシウムサプリメント12週間の影響について軽症高血圧患者を対象にしたものですが、マグネシウム摂取により収縮期/拡張期血圧レベルがそれぞれ5.6/2.8と有意な低下の重要性が示されたといえます。
マグネシウム補充による降圧効果は決して強くはありませんが、着実に下げるといえます。特に、マグネシウムの慢性的摂取不足が関係して血圧が高いヒトにはより効果的である可能性が示唆されます。マグネシウムは天然のカルシウム拮抗薬と称されているカルシウムの蔭に隠れた主要・必須ミネラルの一つです。
4年後に再度日本の高血圧治療ガイドラインが改訂されますが、そのころまでには更なる論文が出ることが期待されます。
この論文から主な概要をハイライトします。
● 研究開始から12週間後の血圧の影響を以下にまとめました。経口マグネシウム摂取により上の血圧が5.6~7.2と下の血圧が2.8~4.1も下がっている影響は、マグネシウムの摂取不足が指摘されます。
収縮期血圧の低下 拡張期血圧の低下
24時間血圧 146.7-141.1=5.6 91.5-88.7=2.8
日中血圧 151.0-145.2=5.8 95.1-91.1=4.0
夜間血圧 138.6-131.4=7.2 85.6-81.5=4.1
● この研究参加者の特徴として表1ベースラインには、合計48人の軽症で合併症の無い高血圧患者が参加しています。
★年齢45~46歳、体重81~82kg、BMI27~28で肥満体型の集団です。
★血清マグネシウム濃度は2.2~2.3mg/dlです。日本の血清マグネシウム基準値はキシリジル・ブルー法で1.8~2.6mg/dlです。日本の基準値と比較するとギリシャ人の血清マグネシウム濃度は一見高い部類に入りますが、恐らくギリシャの基準値が日本より高値側にシフトされていると推測されます。即ち、基準値と測定方法の違いがあると思います。
● 表3の研究開始から12週間後の介入グループでは、それぞれ有意に細胞内カルシウムとナトリウム濃度は低下し、細胞内マグネシウムとカリウム濃度は上昇しました。
★ナトリウムとカルシウムは細胞外ミネラルでカリウムとマグネシウムは細胞内ミネラルです。さらにマグネシウムは、細胞内と細胞外のミネラルバランスを調節しています。
★マグネシウムには自然のカルシウム拮抗薬の異名があるように血管の収縮・拡張をコントロールしています。マグネシウムが不足すると血管の平滑筋細胞内のカルシウムが過剰になり平滑筋細胞が収縮して血圧が上昇します。
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★ 12週間の経口マグネシウム摂取により、細胞内のマグネシウムとカリウムが増え余分なナトリウムとカルシウムが減りました。従って、血圧が高い方から低い方に働いたことは、細胞内のミネラルバランスとして理想的な傾向です。
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