公開日:2008-05-01
『治療学』に横田先生の論文が掲載
東京慈恵会医科大学 准教授 横田邦信先生の『生体内でのマグネシウムの重要性』の論文が、『治療学』特集 栄養療法 栄養に関する新しい概念 2008年3月号に掲載されましたのでお知らせいたします。
論文の内容は、
● はじめに
● 歴史
● 生体内でのマグネシウムの働き
マグネシウムは生命活動の維持に重要
マグネシウム依存性ATPの制御
● マグネシウム不足ないしは欠乏時の症状・徴候
マグネシウム代謝異常の原因
症状・徴候
● マグネシウム不足と疾患との関係
2型糖尿病とインスリン抵抗性
メタボリックシンドロームと冠状動脈疾患
その他
● 基準値設定の問題点
● おわりに
表1 マグネシウム(Mg)代謝異常(低Mg血症・Mg欠乏症)の原因
摂取量減少
Mg不足の食事(“半欧米化”した現代の食環境、偏食)、飢餓、慢性アルコール中毒、蛋白栄養不良症、至適Mg添加の無い輸液製剤の長期投与など
腸管吸収障害
吸収不全症候群、小腸広範切除あるいはバイパス、肝硬変症、過剰な脂肪分摂取など
体液喪失
持続胃液吸引、下剤の乱用、重症の下痢(潰瘍性大腸炎、クローン病)、腸・胆汁瘻など
尿中排泄増加
糖尿病、糖尿病ケトアシドーシス、各種ストレス、カルシウム(Ca)の過剰摂取、急性腎不全の利尿期、慢性アルコール摂取、アルドステロン症、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)、高Ca血症(悪性腫瘍、副甲状腺亢進症、ビタミンD過剰症など)、腎尿細管障害、甲状腺機能亢進症、ループ利尿薬、抗菌薬(アミノ配糖体、カルベニシリン、アンホテリシンB、ポリミキシンBなど)、抗がん剤(シスプラチンなど)、家族性腎性Mg喪失症
遊離脂肪酸との結合
術後、急性心筋梗塞時、運動後
その他
急性膵炎、リン酸欠乏、特発性低Mg血症、低Mg血症の母から生まれた新生児、ビグアナイド服用中など
表2 マグネシウム不足/欠乏の症状・徴候
A.神経・筋
こむら返り、手足のつれ、易疲労性、しびれ、筋力低下、振戦、
テタニー、筋繊維攣縮性痙攣、Chvosteck徴候、Trousseau徴候など
B.精神・行動
抑うつ、無欲、感情鈍麻、注意力散漫、不安、興奮性の亢進、睡眠障害、錯乱、
記憶障害、記銘力低下など
C.循環器系
頻脈、不整脈(期外収縮、心室頻拍、心室細動、Torsades de pointes)
ジギタリス作用増強、心電図異常(QT延長、T波平低化、ST短縮)、
血圧低下など
D.消化器系
便秘、食欲不振、消化不良、腸管運動低下など
E.その他
低カリウム血症、低カルシウム血症、低リン血症など
(横田邦信 生体内でのマグネシウムの重要性. 治療学 42:41-46、2008)
MAG21研究会コメント:
この度、栄養学の新しい概念という特集が組まれ、そのひとつにMgが着目された事はとても意義が深いと思います。この総説が多くの方々に読まれて、Mgが栄養学上極めて重要な主要ミネラルであること、さらにはその食事性摂取が食の“半欧米化”によって激減し多くの生活習慣病、特に、2型糖尿病・メタボリックシンドロ-ムの発症と密接に関わっていることが認知され、そして食育にも取り入れられることを切に望みます。