公開日:2008-03-05
マグネシウムサプリメントの血圧への効果: 無作為臨床試験のメタ解析
2002年、米国ジョンンズ・ホプキンス大学医学部の研究者らは、マグネシウムサプリメントと血圧の関係についてメタ解析の研究結果を報告しています。
背景: マグネシウム摂取の増加は血圧を下げるかもしれない。しかし、臨床試験からのエビデンスが一貫していないので、恐らくサンプル数が少ないか研究デザインが異なっている結果かもしれない。マグネシウムサプリメントの血圧への効果について無作為臨床試験のメタ解析を行なった。評価基準を満たす20の臨床試験を特定した。
結果: 20の研究には、高血圧グループ14と正常血圧グループ6の合計1,220人の参加者が含まれている。マグネシウムの投与量は10~40 mmol/日 [中央値、15.4 mmol/日 (374 mg/日に相当)]の範囲であった。マグネシウムサプリメントは、血圧を少し総合的に下げるのみであった。しかし、マグネシウムには明らかな用量依存的効果があり、マグネシウム投与量各10 mmol/日の増量によって収縮期血圧4.3 mm Hgと拡張期血圧2.3 mm Hgの降圧があった。
結論: メタ解析でマグネシウムサプリメントからの用量依存的血圧低下効果を認めた。しかし、マグネシウムサプリメントの十分に高い投与量による適量試験を確認のために行う必要がある。
(Jee SH, Miller ER, Guallar E, et al. The Effect of Magnesium Supplementation on Blood Pressure: A Meta-Analysis of Randomized Clinical Trials. Am J Hypertens 15:691–696, 2002)
MAG21研究会コメント:
本論文の共同研究者のAppel LJ は DASH食研究のメンバーです(参考文献: Appel LJ, et al., A clinical trial of the effects of dietary patterns on blood pressure. DASH Collaborative Research Group. N Engl J Med 336(16):1117-1124, 1997)。DASH食の降圧効果は明らかで、成分を良く見ると、K(カリウム)がコントロール食に比べて多く含まれ、それが降圧効果に関係するとされていますが、それと同等以上にMgも多く含まれている点はあまり重要視されていませんでした。以前からKの降圧作用は知られていますが、Mgに関しては当時また現在もその認知は極めて低いのが現実です。KやMgは主要ミネラルですが、薬物のような際立った降圧効果はありませんが、降圧機序は両方とも明らかにされています。
ところで、現在の食生活では、Kは特殊な病態でなければ不足することは少ないですが、Mgは戦後の食の半欧米化で慢性的摂取不足に陥っていることが知られています。このような低Mg状態にMgが十分に補われると降圧効果がより顕著にでることは他の文献でも示されています。今回の文献でも示されているように、用量依存性に降圧が見られることから、十二分なMg摂取が高血圧予防、引いてはメタボリックシンドロ-ムの発症リスクを下げることが期待されることを示唆する文献といえます。他の参考文献(He Ka, et al. Circulation 2006) 日本国も早く慢性的Mg摂取不足による生活習慣病の発症との因果関係に目を向けて欲しいと思います。