日本人の食事摂取基準(2010年版)

公開日:2009-07-01

 日本人の食事摂取基準(2010年版)

厚生労働省から国民に対し、「日本人の食事摂取基準」として男女年齢毎に必要な栄養素とその望ましい摂取量が提示されています。

わが国の食事摂取基準は、厚生労働省が5年毎に見直しをしています。前回は平成16年11月22日に「日本人の食事摂取基準(2005年版)」として発表し、最新版は平成21年5月29日「日本人の食事摂取基準(2010年版)」として厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室から公開されています。

4-4.1 日本人の食事摂取基準とは 07012009

日本人の食事摂取基準(2010年版)」の主な概要をハイライトします。

       日本人の食事摂取基準の目的は、「健康な個人または集団を対象として、国民の健康の維持・増進、生活習慣病の予防を目的とし、エネルギー及び各栄養素の摂取量の基準を示すものである。」とされています。この様に厚生労働省は、国民に生活習慣病の予防対策とし、医療費削減になるためかなり力を入れていることがうかがわれます。

       使用期間は、平成22(2010)年度から平成26(2014)年度までの5年間です。

       ここでは特に、マグネシウムの食事摂取基準について述べます。

     日本人の食事摂取基準(報告書) では、以下の基本的事項が初めて追記されました。

II  各論 1.エネルギー・栄養素 6 ミネラル 6.1.多量ミネラル 

マグネシウム:p199~200(PDF:379KB)

6. 1. 4.マグネシウム(Mg)

1.基本的事項

マグネシウムは骨の健康の維持と多種の酵素反応に寄与している。生体内には約25 g のマグネシウムが存在し、その50~60% は骨に存在する110。血清中のマグネシウム濃度は1. 8~2. 3 mg/dL に維持されており111、マグネシウムが欠乏すると腎臓からのマグネシウムの再吸収が亢進し、骨からマグネシウムが遊離し利用される。

マグネシウムの腸管からの吸収率は、平均摂取量が約300~350 mg/日の場合は約30~50% であり112、摂取量が少ないと吸収率は上昇する。

マグネシウムの欠乏は低カルシウム血症、筋肉の痙れん、冠動脈のれん縮を引き起こす111。また、長期にわたるマグネシウムの不足が、骨粗鬆症、心疾患、糖尿病のような生活習慣病のリスクを上昇させることが示唆されているが、一定の見解は得られていない110。食事からの摂取で過剰症を引き起こすことはないが、サプリメント等からの過剰摂取により、下痢を起こすことがある。

➡マグネシウムの食事摂取基準量

マグネシウムの食事摂取基準量は、平成元年(1989)の「第4次改訂栄養所要量」で初めて取り上げられ、目標摂取量300mg(例として、男性30~49歳)とされました。

その後、マグネシウムの重要性が指摘されても国はなかなか認めず第6次改訂で、ようやく栄養所要量として320mgが策定され、平成16年(2005年版)に漸く推奨量として370mg(例として、男性30~49歳)まで増量され、平成21年(2010年版)には370mg(例として、男性30~49歳)が維持されています。

マグネシウムの食事摂取基準(mg/日)

日本人の食事摂取基準(2010年版)

4-4.2 Mg食事摂取基準2010年版 07012009

参考資料:

厚生労働省 報道発表資料

「日本人の食事摂取基準(2010年版)」

平成21年5月29日健康局総務課生活習慣病対策室

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/sessyu-kijun.html  

【MAG21研究会コメント】

わが国のマグネシウムの食事摂取基準量は、平成16年11月22日の「日本人の食事摂取基準(2005年版)」と平成21年5月29日の「日本人の食事摂取基準(2010年版)」を比較すると、年齢区分毎に若干の増減はありますが、全体的に殆ど変わっていません。

MAG21研究会のホームページサイト

2009.02.19マグネシウム不足が深刻 でお知らせしましたように、男性30~49歳でマグネシウムの1日当りの推奨量370mgに対し、平均摂取量は250~257 mg/日で、およそ1/3の120mgが不足しているのが現状と言えます。この様に不足している状況下でも、「日本人の食事摂取基準(2010年版)」では、次の平成22(2010)年度から平成26(2014)年度までの5年間も以前と同じ推奨量が提示されています。

日本人の食事摂取基準(報告書) では、マグネシウムの食事摂取基準についての基本的事項が初めて追記され「マグネシウムの欠乏は低カルシウム血症、筋肉の痙れん、冠動脈のれん縮を引き起こす111。また、長期にわたるマグネシウムの不足が、骨粗鬆症、心疾患、糖尿病のような生活習慣病のリスクを上昇させることが示唆されているが、一定の見解は得られていない110。」 とし、110 Fleet JC, Cashman KD. Magnesium. In: Bowman BA, Russell RM, eds. Present knowledge in nutrition, 8th ed. ILSI Press, Washington D.C., 2001: 292‒301.の文献が引用されています。しかし、これらは1997~2001年の古い文献で、その後MAG21研究会でもハイライトしていますように、マグネシウムの慢性的摂取不足と2型糖尿病の発症リスクとの関係や、メタボリックシンドロームのリスクとの関係など、最近これらの分野の疫学調査結果など多くのエビデンスが発表されています。

10-051 WHO報告2006 07012009

2009.05.07 米国成人の食事性マグネシウム摂取量

2009.03.13 糖尿病と合併症 -生活習慣との関わり-

2009.02.10 糖尿病予備群含め2210万人=1年で340万人増 厚労省

2008.08.13 低マグネシウム血症と代謝性グルコース障害リスク: 10年追跡調査研究

2008.06.03 『第51回日本糖尿病学会』で横田先生が発表

2008.02.04 『日本糖尿病療養指導士認定機構 CDEJ News Letter』に横田先生の記事が掲載

2008.01.24 経口マグネシウムサプリメントの影響

2008.01.23 WHO報告書 『飲料水中の栄養素』-その2-

2008.01.22 WHO報告書 『飲料水中の栄養素』-その1-

2007.08.21 メタボリックシンドロームの予防 -その2-

2007.08.20 メタボリックシンドロームの予防 -その1-

一方、高血圧治療ガイドライン2009 (JSH2009)が 日本高血圧学会 より平成21年(2009年)1月16日に発行されました。今回、このガイドライン「第4章 生活習慣の修正 2.野菜、果物、魚、コレステロール、飽和脂肪酸など」に初めて、

“最近、Mg(マグネシウム)摂取量の多い人では

メタボリックシンドロームの頻度が少ない

という疫学研究が示されている”

と明記され、He K教授らの研究論文(He K, et al., Circulation 113:1675-1682, 2006)が引用されました。

なお、糖尿病やメタボリックシンドロームなどとマグネシウム摂取不足との関係は、横田邦信著の“マグネシウム健康読本”(現代書林)にも詳しく書かれていますのでご参考にして下さい。

今回の厚労省の報告内に、血清マグネシウム値が1.8から2.3mg/dlとありますが、一般的な測定法であるキシリジルブルー法では1.8から2.6mg/dlが一般的です。

今後マグネシウム摂取の重要性がさらに認知されて食育にも取り入れられる事が切に望まれます。

この記事に対するご意見やご質問を心からお待ちしております。

検索


新着記事