日本の子供と酸化マグネシウムによる便秘治療

公開日:2011-09-06

酸化マグネシウムで治療の機能性便秘の子供たちの血清マグネシウム濃度



2011年、群馬大学大学院小児科学の研究者らは、酸化マグネシウムで機能性便秘を治療している子供たちの血清マグネシウム濃度の結果を報告したので、その論文概要を以下に紹介します。



目的:



成人患者で最近報告された高マグネシウム血症が酸化マグネシウムを毎日服用している機能性便秘の子供たちで発現するか否かを検討することを目的としました。



対象と方法:



患者は、13病院と2クリニックから機能性便秘1-14歳(中央値: 4.7年)120人(男児57人と女児63人)です。すべての患者は機能性便秘の評価基準を満たし、少なくとも1ヵ月間毎日酸化マグネシウムを服用しました。中央値投与量は600 (500-800) mg/日でした。患者はインタビューと臨床検査によって評価しました。血清マグネシウム濃度は、性別と年齢がマッチした対照被験者(n = 38人)でも測定しました。



結果:



便秘グループにおいて、血清マグネシウム濃度[2.4(2.3-2.5)mg/dL、中央値と四分位数範囲]は、対照群[2.2(2.0-2.2)mg/dL](P < 0.001)より有意に高値でした。最高値は3.2 mg/dLでした。マグネシウム・クリアランスは、便秘グループで有意な増加が認められました。便秘グループの血清マグネシウム濃度は、年齢と共に有意に減少しました(P < 0.01)。マグネシウムの血清濃度と酸化マグネシウムの治療期間或いは毎日の投与量には有意な相関は認められませんでした。なお高マグネシウム血症を伴う副作用は認められませんでした。



結論:



腎機能正常で便秘の子供たちに毎日酸化マグネシウム治療すると、血清マグネシウム濃度は、危険な状態ではありませんが、有意に増加しました。



参考資料:



Tatsuki M, Miyazawa R, Tomomasa T, Ishige T, Nakazawa T, Arakawa H. Serum magnesium concentration in children with functional constipation treated with magnesium oxide. World J Gastroenterology 14:779–783, 2011



http://www.wjgnet.com/1007-9327/full/v17/i6/779.htm



コメント



日本人小児の便秘患者における酸化マグネシウムと血清マグネシウム濃度との関連について検討された点興味があると言えます。



この研究の背景には、2008年に厚生労働省が年間4500万人の便秘患者に使用されている酸化マグネシウム製剤により2005年4月から2008年8月迄に服用と因果関係が否定できない高マグネシウム血症15例(うち死亡2例)があったとの報告と関係しています。



当時の厚生労働省は、酸化マグネシウム副作用報告問題に関し、添付文書の「使用上の注意」(以前から添付文書で「腎障害のある患者は高マグネシウム血症を起こすおそれがある」など注意喚起している)の更なる改訂指示を発令し、更に、“重大”な副作用を根拠に一般用医薬品の酸化マグネシウムのリスク区分を第3類から第2類に引き上げて規制を強化しようとし、2009年6月の改正薬事法で施行する計画でした。



これに対し、日本マグネシウム学会は高マグネシウム血症15例、特に死亡2例を中心に科学的・医学的に検証した結果を2009年3月25日「酸化マグネシウム副作用報告の取り扱い問題に関する日本マグネシウム学会の見解・要望書」当時の舛添厚生労働大臣に提出しました。



平成21(2009)年8月6日厚労省薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策調査会用として厚労省が直前に配布した詳細な資料を検証すると幾つか更なる問題点が見つかりました。まず、高マグネシウム血症15例中腎不全は以前10例でしたが今回13例もありました。次に、死亡2例に関し、1例目は86歳女性、報告医による死因は敗血症、消化管壊死でした。また、急性腎不全もありました。この症例は、機構(医薬品医療機器総合機構の副作用情報ホームページで公開)で情報不足で評価不可、調査対象外とされていました。2例目は78歳男性、高度な便秘で著明な腹部膨満(腸管拡張)があり、高マグネシウム血症は血液透析により改善したが血圧が保てず翌日死亡とされていました。

10-082 調査会前後の資料差



高マグネシウム血症15例中腎不全が13例もあり、しかも死亡2例とも酸化マグネシウム投与と死亡との直接的な因果関係が科学的には立証できないことが判明しました。結果、平成21(2009)年11月6日 薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会は、日本マグネシウム学会の見解・要望書を認め、一般用医薬品の酸化マグネシウムのリスク区分について現行の第3類のままに留めることに決定しました。



MAG21研究会のホームページでは2008年以来、酸化マグネシウム副作用報告の問題に関し、以下のサイトにて取り上げてきました。MAG21研究会では、独自に調査した結果も公表してきました。



酸化マグネシウムは、当ホームページにも掲載していますように極めて安全で長い歴史のある便秘薬として年間延べおよそ 4500万人に使用されています。厚生労働省は今まで通り一般薬として了承し、今後も医療機関、薬局、ドラッグストア、インターネットなどで求めることが可能です。



2008.12.10  「便秘薬で副作用15件2人死亡」のニュース



2009.01.27  「便秘薬で副作用」のニュース -第2弾-



2009.03.26  日本マグネシウム学会が学会見解・要望書を厚生労働大臣に提出



2009.05.18  厚労省 酸化マグネシウムのリスク区分再検討へ



2009.05.22  厚労省 酸化マグネシウムの区分、新手順で再審議へ



2009.06.10  酸化マグネシウム添付文書見直しを-日本マグネシウム学会が要望書提出



2009.07.21  5/8 厚労省安全対策部会議事録公開



2009.08.14  厚労省調査会は6日、酸化マグネシウムのリスク区分について審議



2009.10.02  8/6 厚労省安全対策調査会議事録公開



2009.11.21  11/6 厚労省安全対策部会 酸化マグネシウムのリスク区分第3類のままで了承



2010.01.12  11/6 厚労省安全対策部会 酸化マグネシウムのリスク区分配布資料



2010.03.02  11/6 厚労省安全対策部会議事録公開

マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。


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