若年日本人女性における食物繊維、水分、マグネシウム摂取量と機能性便秘の関係

公開日:2013-09-11

若年日本人女性における食物繊維、水分、マグネシウム摂取量と機能性便秘の関係



2007年、独立行政法人国立健康・栄養研究所、女子栄養大学の共同研究者らが、若年日本人女性における食物繊維、水分、マグネシウム摂取量と機能性便秘(慢性便秘)の関係に関する研究結果を報告したので、その論文概要を以下に紹介します。



目的



便秘について殆どの研究は食物繊維摂取に注目されていました。そこで、便秘に関係する可能性がある栄養素の水とマグネシウムの摂取、さらに便秘に関係する食物繊維摂取について調査しました。



デザイン



横断的研究



対象者



日本国内53機関から栄養学校生18~20歳の日本人女性計3835人を対象としました。



方法



食事摂取量は有効な自己管理ダイエット履歴アンケートを用いて推定評価しました。機能性便秘(慢性便秘)の定義はRome I 診断基準を用いました。



結果



機能性便秘の罹患率は26.2%でした。食物繊維摂取(平均6.4g/4186kJ)も総水分および流動からの水分摂取も便秘に関係が見られませんでした。反対に食品からの低水分摂取は便秘の罹患率の増加と関係が見られました。第1(最も低い)五分位数の女性と比較すると、第2、第3、第4、第5五分位数の女性の多変量補正オッズ比(OR)(95%信頼区間(CI))はそれぞれ0.72(0.57, 0.90)、0.78(0.62, 0.98)、0.71(0.56, 0.89)、0.77(0.61, 0.97)でした(P = 0.04)。



さらに、低マグネシウム摂取量は、便秘の罹患率の増加と関係していました。第1五分位数の女性と比較すると、第2、第3、第4、第5五分位数の女性の多変量補正オッズ比(OR)(95%信頼区間(CI))はそれぞれ0.70 (0.56, 0.88)、0.75 (0.60, 0.95)、0.73 (0.58, 0.92)、0.79 (0.63, 0.996)でした(P = 0.09)。



結論



食品からの水分とマグネシウムの摂取量が低い事は、食物繊維の摂取量が比較的低いグループ間で機能性便秘の罹患率増加と独立して関係しています。



参考資料



Murakami K, Sasaki S, Okubo H, Takahashi Y, Hosoi Y, Itabashi M. Association between dietary fiber, water and magnesium intake and functional constipation among young Japanese women. European Journal of Clinical Nutrition 61: 616-622, 2007



http://www.nature.com/ejcn/journal/v61/n5/pdf/1602573a.pdf



コメント



食物繊維の摂取量が比較的低い人達の間では、食品からの水分とマグネシウムの摂取が少ないことが、機能性便秘の罹患率増加と独立した関係が見られることを指摘しています。



マグネシウムはヒトの身体にとって必須・主要ミネラルですが戦後、わが国の食生活が半欧米化となり、特にマグネシウムの摂取源であった穀物(等に大麦、雑穀など)の消費が激減しました。



2012.02.21  特集:マグネシウムと生活習慣病 日本人の食生活はマグネシウム不足



マグネシウムの摂取不足は便秘、こむら返り(手足のつり)、ストレス、他様々な生活習慣病と関係しています。



わが国では、マグネシウム(特に酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム)は医療現場で便秘薬或いは緩下剤として古くから使われています。酸化マグネシウム製剤(マグミット錠など)は現在、年間延べ約4500万人の患者さんが服用されています。マグネシウムは服用後、腸管内に溜まり浸透圧の作用で腸管内に水分を溜め、「便のかさ」を増やして排便を起こしやすくさせます。習慣性がないため、機能性便秘(慢性便秘)で長期間に渡って使用できます。従って、マグネシウムは必須・主要ミネラルの1つでもあり、刺激性下剤(センナ、ダイオウなど)が腸を直接刺激して弱った腸の運動を活発にさせたりするのとは違い、妊娠中や月経時にも使用が可能とされています。



マグネシウムと便秘に関しては当ホームページで紹介して来ました。



2007.08.22  マグネシウムQ&A Q4



Q4: マグネシウムを摂りすぎた場合に起こりうる問題はなんですか?



2007.08.24  マグネシウムの力 便秘は大敵



2007.09.26  マグネシウムQ&A Q7



Q7: マグネシウムは、生活習慣病の予防以外の疾病予防にも利用できますか?



2008.05.01  『治療学』に横田先生の論文が掲載



2008.11.20  マグネシウム健康読本



2009.02.26  ミネラル管理の重要性、作物と人の健康



2010.03.02  11/6 厚労省安全対策部会議事録公開



2010.06.17  妊娠と薬情報に便秘薬酸化マグネシウム



2010.07.13  薬剤としてのマグネシウム



2011.09.06  日本の子供と酸化マグネシウムによる便秘治療



2013.02.18  マグネシウムと健康:栄養、医薬品、環境の観点から



2013.03.28  そばのひ孫と孫(は)優しい子かい? 納得!



2013.05.01  奇蹟のマグネシウム



2013.08.21  食事(性)およびサプリメントによるカルシウム摂取と心血管疾患死亡率



マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。


検索


新着記事