公開日:2008-08-27
激動の時代とともに変わっていく糖尿病患者の病態
2008年、京都府宇治市 土井内科 土井邦紘先生の“~糖尿病の治療に際して思うこと~ 環境因子とさまざまな病態を示す2型糖尿病の時代的変化”に関する記事が、月刊誌『DITN(Diabetes in the News)』2008年6月号No.363に掲載されました。
ご興味のある方は、是非ご一読をお勧めします。
内容は、わが国では終戦前後まで糖尿病はほとんど見られなかったが、現在、成人の5.6人に1人が糖尿病と言われ、時代的に変化する糖尿病について述べられています。
● 糖尿病の発症要因は胎児時期から始まる
● 住民検診から見た糖尿病膵内分泌の移り変わり
● 最近のわが国における糖尿病有病率の変遷
● 糖尿病合併症の年次変化が及ぼす高インスリン反応、肥満と動脈硬化症
● 糖尿病治療の多様性
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MAG21研究会コメント:
土井先生は、神戸大学に勤務されていた1960年頃、加西市で住民健診を5年毎に実施された結果を報告しています(土井邦紘ら:糖尿病21:627~636、1978)。観察されたインスリン分泌は非糖尿病者でも一般に低反応であり、5年前には当時正常反応と思われた住民のなかから急速に糖尿病への移行がみられた。そして、現在と若干異なって、むしろ、耐糖能異常からはなかなか糖尿病にはなりにくいと言う報告をされました。
出典: 土井邦紘、江原成禎、芳野原、川口侃、馬場茂明: 疑い糖尿病の予後について.糖尿病 21:627~636、1978
しかし、ちょうどこの時期は穀物の摂取量が減少し始めた時期と重なっており、関心が寄せられます。つまり、加齢による糖尿病発生が原因としてあるかも知れませんが、初めの5年間は穀物摂取量が全国的に減少しておりますが、未だマグネシウム摂取量が足りている人がいた時期で、その為に糖尿病発症が激増しなかったのではないかと考えられます。しかし調査開始から15年後の1975年には糖尿病発生が急激に増えています。丁度その頃は、日本全国で大麦・雑穀などの穀類からのマグネシウムの摂取量が減少した時期でもあります。
報告では、マグネシウムと糖尿病の関与については言及されておりません。当MAG21研究会のホームページでは、「なぜマグネシウム不足?」について、戦後の食環境の“半欧米化”と糖尿病有病率の推移を見ると、1965~1970年にかけて急激に大麦・雑穀等の穀類の摂取量が減り、マグネシウムの慢性的摂取不足となり、この頃より糖尿病が激増しはじめた事を示しました。
糖尿病発症の原因はこればかりではありません。生活が便利になることも関係しています。例えば、1970年代頃からは便利な車の社会化となり、歩いたり自転車に乗ったりして体を動かす運動の機会が少なくなりました。また、駅の階段を利用しないで、エスカレータ、エレベータを利用する機会がふえました。弱者に優しいように思われます。しかし、健康者を病気になり易くしている危険性があります。運動不足と飽食・過食、それに伴う肥満をベースとしたインスリン抵抗性と慢性的なマグネシウム摂取不足に基づくインスリン抵抗性が重要な2型糖尿病の発症要因とMAG21研究会は考えています。
糖尿病・メタボリックシンドロームの予防には、日頃からマグネシウムが比較的豊富な穀類、緑黄色野菜などを摂る様な食生活の改善、適度な運動習慣を持ち、休養・喫煙・飲酒などの生活習慣を見直し、そしてストレスを減らすことが大切です。