公開日:2009-12-15
閉経後女性の多民族的コホートにおける食事性マグネシウム摂取と炎症および内皮機能障害マーカーの関係
2009年、アメリカのUCLA、ハーバード大学医学部、Fred Hutchinson がん研究センターなどの研究者らは、「閉経後女性の多民族的コホートにおける食事性マグネシウム摂取と炎症および内皮機能障害マーカーの関係」についての研究結果を報告しました。
【目的】
マグネシウム(Mg)が結果的に代謝に好影響を及ぼすかもしれませんが、ヒトで全身性炎症と内皮機能障害におけるマグネシウム摂取の役割が調査された研究は殆どありません。
【デザインと方法】
女性の健康イニシアティブ観察研究(Women's Health Initiative Observational Study )においてベースライン(研究開始)時に心血管疾患、ガンと糖尿病に罹っていない50-79歳3,713人の閉経後女性で、高感度C-反応性たんぱく(hs-CRP)、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子αレセプター2(TNF-α-R2)、可溶性細胞接着分子-1(sICAM-1)、可溶性脈管細胞接着分子-1(sVCAM-1)とEセレクチンの血漿濃度を測りました。マグネシウム摂取量は、半定量的食物頻度アンケートを使って評価しました。
【結果】
年齢、民族性、臨床センター、採血時間、喫煙、アルコール、身体活動、エネルギー摂取量、BMIと糖尿病状態の調整後、マグネシウム摂取量はhs-CRP(p=0.003)、IL-6(p<0.0001)、TNF-α-R2(p=0.0006)とsVCAM-1(p=0.06)と反対に関連がありました。
食物繊維、果物、野菜、葉酸、ならびに飽和およびトランス脂肪の摂取について更なる調整後も似たような結果でした。
マグネシウム摂取量を多変量解析した横断的増加五分位の相乗平均は、hs-CRP (p=0.005)が3.08, 2.63, 2.31, 2.53, 2.16 mg/L、IL-6 (p=0.0005)が2.91, 2.63, 2.45, 2.27, 2.26 pg/mL、sVCAM-1 (p=0.04)が707, 681, 673, 671, 656 ng/mLでした。
マグネシウム摂取量の増加100mg/日は、hs-CRP(-0.23mg/L±0.07; p=0.002)、IL-6(-0.14pg/mL±0.05; p=0.004)、TNF-α-R2(-0.04pg/mL±0.02; p=0.06)、そして、sVCAM-1(-0.04ng/mL±0.02; p=0.07)と反対に関連していました。なお、有意な民族の違いは観察されませんでした。
【結論】
高いマグネシウム摂取量は、閉経後女性で全身性炎症と内皮機能障害の特定マーカーの低い濃度と関係しています。
参考資料:
Chacko SA, Song Y, Nathan L, et al. Relations of dietary magnesium intake to biomarkers of inflammation and endothelial dysfunction in an ethnically diverse cohort of postmenopausal women. Diabetes Care; published ahead of print November 10, 2009, doi:10.2337/dc09-1402
http://care.diabetesjournals.org/content/early/2009/11/06/...
【MAG21研究会コメント】
この論文は、閉経後女性の多民族的コホートにおける食事性マグネシウム摂取と炎症および内皮機能障害マーカーの関係について調査したものです。マグネシウムの摂取量が多いと全身性炎症と内皮機能障害に関係するマーカーの血中濃度が低くなるという逆の関係が明らかになりました。
「WHO 飲料水中のカルシウムとマグネシウム: 公衆衛生的意義 2009」では、①低マグネシウムは、内皮細胞の機能不全、血管反応の増加、血中C反応性タンパク(CRP)濃度の上昇、インスリン感受性の低下に関連しています、②冠状動脈硬化性心疾患に関し、ヒトでは、マグネシウムと冠状動脈疾患と逆(=保護的)の関係のエビデンスがあります。3つの横断的研究では、血中C反応性タンパク濃度(CRP:冠状動脈疾患のリスク因子としての炎症マーカー)とマグネシウム摂取や血清中マグネシウム濃度の間に逆の関係があり、マグネシウムには抗炎症作用の可能性を示唆する報告があります。
これらのことは、日頃の食生活においてマグネシウムを多く摂ることが、健康の維持と増進にすなわち、動脈硬化予防につながると言えます。
当ホームページでは、マグネシウムの摂取量とC-反応性たんぱくについても以前に解説しました。
2009.09.08 WHO 飲料水中のカルシウムとマグネシウム: 公衆衛生的意義 2009
2008.06.03 『第51回日本糖尿病学会』で横田先生が発表
2008.01.26 マグネシウム摂取量とメタボリックシンドロームの罹患率
などのサイトでご紹介して来ましたので、ご参考にしてください。
この記事に対するご意見やご質問を心からお待ちしております。