公開日:2016-07-07
線維筋痛症患者の生活の質に対する経皮的塩化マグネシウムの効果: 予備的研究
2015年に米国のメイヨー・クリニックの研究者らが、“線維筋痛症患者の生活の質に対する経皮的塩化マグネシウムの効果: 予備的研究”について報告をしたので、その論文概要を紹介します。
背景
線維筋痛症は、慢性疼痛、疲労、うつ病と睡眠障害を特徴とする症候群ですが、その主な原因は不明です。いくつかの研究で、線維筋痛症の患者は、細胞内マグネシウム濃度が減少し、マグネシウム濃度と線維筋痛症の症状との間に負の相関が報告されています。
注釈: 線維筋痛症については、一般社団法人日本線維筋痛症学会のホームページをご参照ください。 http://jcfi.jp/
目的
目的は、経皮マグネシウムが線維筋痛症を患っている女性の生活の質を改善することができるかどうかについての予備データを集めることです。
デザイン、設定、参加者と介入
これは、三次医療センターの線維筋痛症クリニックにおける患者のアンケート調査です。
線維筋痛症と診断された女性患者40人の参加者を登録しました。各参加者に経皮塩化マグネシウム溶液入りスプレー瓶を提供し、4週間1日2回手足当たり4回の噴霧を指示しました。溶液の成分は、水、塩化マグネシウム、そして吸収を促進するために独自の微量ミネラル(ホウ素、セレン、マンガン、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム)を混合しています。液量30 ml当たりマグネシウム量約3000 mg、8回の噴霧でマグネシウム100 mgが含まれます。
参加者に、試験開始時、2週目と4週目に線維筋痛症質問票(SF-36v2健康調査)および生活の質に関するアンケート調査を依頼しました。
結果
患者24人が研究を完了しました(年齢57.2±7.6年、白人95%、平均体格指数31.3 kg/m2)。
治療意図解析では、2週目と4週目に線維筋痛症質問票の合計スコアが有意に改善しました(P = 0.001)。プロトコルごとの分析結果は同様で、2週目と4週目に線維筋痛症質問票の合計スコアが有意に改善しました(P = 0.001)。
注釈: 治療意図解析(intention-to-treat analysis)は、臨床試験において効果を統計学的に分析する方法の一つで、プロトコル(治験実施計画書)で当初割り付けられた通りに解析することです。
結論
この予備的研究結果は、手足に噴霧された経皮塩化マグネシウムが線維筋痛患者に有益であることを示唆しています。
臨床試験登録: ClinicalTrials.gov.ldentifier NCT01968772.
参考資料:
Engen DJ, McAllister SJ, Whipple MO, Cha SS, Dion LJ, Vincent A, Bauer BA, Wahner-Roedler DL. Effects of transdermal magnesium chloride on quality of life for patients with fibromyalgia: a feasibility study. Journal of Integrative Medicine 13:306-313, 2015. doi: 10.1016/S2095-4964(15)60195-9.
http://www.jcimjournal.com/jim/showAbstrPage.aspx?...
【コメント】
経皮塩化マグネシウムが線維筋痛症患者(慢性疼痛、疲労、うつ病と睡眠障害など)の生活の質を改善する可能性があるとの報告です。更なる研究により、経皮塩化マグネシウムが線維筋痛症患者に使われるのを期待します。さらに、塩化マグネシウムの経皮的用法で関節痛や筋肉痛の軽減も知られていますが、日本ではまだまだ一般的ではありません。
当ホームページでは以下のサイトで、マグネシウムと疼痛、疲労、うつ病と睡眠障害などの関係についてご紹介してきました。
2015.09.16 うつ病のリスク因子としての精製炭水化物の摂取: 女性の健康イニシアチブ研究
2015.03.11 マグネシウム投与による大うつ病の早期回復
2011.11.17 高齢2型糖尿病患者のうつ治療における経口マグネシウムサプリメントの有効性と安全性: ランダム化、同等性試験
2011.11.07 高齢の糖尿病患者のうつ症状と低マグネシウム血症
2011.03.09 米国FDA注意喚起 プロトンポンプ阻害薬(PPI)の長期服用で低Mg血症の可能性
2010.04.06 『日経ヘルス』2010年春号に横田先生の記事が掲載
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。