公開日:2015-09-16
うつ病のリスク因子としての精製炭水化物の摂取: 女性の健康イニシアチブ研究
2015年に米国のコロンビア大学医学部、Stony Brook University医学部、カリフォルニア大学デービス校医学部、ニューヨーク大学Langone Medical Center、デューク大学Medical Center、ミネソタ大学医学部の研究者らが、“うつ病のリスク因子としての精製炭水化物の摂取: 女性の健康イニシアチブ研究”について報告をしたので、その論文概要を紹介します。
背景
加糖飲料、精製食品、菓子パン類の消費は、うつ病のリスク増加と関連することが示されています。炭水化物、糖、GI(glycemic index)、糖負荷の摂取量を測定する研究が必要です。
目的
そこで食事性GIの高いもの摂取や糖負荷がうつ病の有病率と発症率に関連するという仮説を立てました。
デザイン
前向きコホート研究で閉経後女性における食事性GI、糖負荷、他の炭水化物(添加糖、全糖、ブドウ糖、ショ糖、乳糖、果糖、澱粉、炭水化物)摂取量とうつ病との関係を調査しました。
試験開始時の対象者は、1994~1998年「女性の健康イニシアチブ(WHI)」の参加者で24州とコロンビア特別区にある40の医療施設から50~79歳の閉経後女性87618人で3年後の追跡調査は69954人でした。
結果
食事性GIの高いもの摂取は、うつ病発症率の増加と関連が認められました(食事性GIを5分位に分け、Q5(高い)とQ1(低い、1.0とする)を比較するとオッズ比が1.22; 95% CI: 1.09, 1.37; P = 0.0032[うつ病発症リスクが1.22倍高いと言う意味です])。
食事性添加糖のより高い摂取も、うつ病発症率の増加と関連が認められました(食事性GIを5分位に分け、Q5(高い)とQ1(低い、1.0とする)を比較するとオッズ比が1.23; 95% CI: 1.07, 1.41; P = 0.0029[うつ病発症リスクが1.23倍高いと言う意味です])。
乳糖、食物繊維、非ジュース果物と野菜をより多く摂取することが、うつ病発症率の低いオッズ比と関係し、非全粒/精製穀物の摂取はうつ病発症率と関係していました。
結論
この研究結果は、高GI食は閉経後の女性におけるうつ病のリスク因子であることを示唆しています。
低GI食品の豊富な食事が閉経後女性のうつ病の治療と主要な予防策となり得るかどうかの問題を検討するためにランダム化試験の実施が望まれます。
女性の健康イニシアチブ(WHI)はNCT00000611としてclinicaltrials.govに登録されました。
参考資料:
Gangwisch JE, Hale L, Garcia L, Malaspina D, Opler MG, Payne ME, Rossom RC, Lane D. High glycemic index diet as a risk factor for depression: analyses from the Women's Health Initiative. Am J Clin Nutr 102:454-463, 2015. doi: 10.3945/ajcn.114.103846. Epub 2015 Jun 24. PMID: 26109579
http://ajcn.nutrition.org/content/102/2/454.abstract
【コメント】
加糖飲料(ソーダなど)、精製食品(白米など)、パン菓子類(白パンなど)に含む精製炭水化物を沢山摂っているとうつ病の発症リスクが高くなる可能性があるとの報告です。
精製炭水化物を含む高GI食は、うつ病の他に糖尿病発症リスクの関係も報告されています。これらの共通点として、精製炭水化物にはヒトの身体にとって必須・主要(多量)ミネラルのマグネシウムが少量か殆ど含まれていないことです。当論文のコメントにはマグネシウムの関与が述べられていませんが、強く関連する可能性が十分にあるといえます。
当ホームページでは以下のサイトで、うつ病とマグネシウム、高GI値と2型糖尿病リスクの関係に関してご紹介してきました。
2015.03.11 マグネシウム投与による大うつ病の早期回復
2011.11.17 高齢2型糖尿病患者のうつ治療における経口マグネシウムサプリメントの有効性と安全性: ランダム化、同等性試験
2011.11.07 高齢の糖尿病患者のうつ症状と低マグネシウム血症
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。