青年期の水銀暴露と後の糖尿病発症率

公開日:2013-05-30

青年期の水銀暴露と後の糖尿病発症率



2013年2月、米国インディアナ大学、ノースウェスタン大学、ミズーリ大学、国立心肺血液研究所、ジョンズ・ホプキンス大学の研究者らが、青年期の水銀暴露と後の糖尿病発症率に関する研究結果を報告したので、その論文概要を以下に紹介します。



目的:



魚に含まれているレベルのメチル水銀への暴露が膵島β細胞機能不全を誘発する可能性があることが、実験室での研究で示唆されていますが、ヒトの研究では水銀暴露と糖尿病の発症率との関連をほとんど検討されていません。そこでわれわれは、足の爪の水銀レベルが大規模前向きコホート研究[Coronary Artery Risk Development in Young Adults(CARDIA)]で糖尿病の発症率に関係しているかどうかを検討しました。



研究デザインと方法:



対象は、1987年時(ベースライン)に糖尿病歴なく登録された米国の青年期男女3875人(20~32歳)で、2005年まで6回追跡調査を行いました。ベースライン時の足の爪水銀濃度は機器中性子放射化分析で測定しました。糖尿病の発症は、血糖値、経口ブドウ糖負荷試験、ヘモグロビンA1C値、およびまたは糖尿病治療剤使用しているかによりました。



結果:



糖尿病の発症総数288例が18年間の追跡期間に発生しました。多変量解析で年齢、性、民族性、研究施設、教育、喫煙状況、アルコール摂取、身体活動、糖尿病の家族歴、長鎖n-3脂肪酸とマグネシウムの摂取量、足の爪のセレン濃度を調整後の結果で、足の爪水銀濃度は糖尿病の発症率と正の関係にありました。水銀暴露の最高と最低五分位群を比較した糖尿病発症のハザード比(95% CI)は1.65(1.07–2.56; P = 0.02)でした(注: 糖尿病発症の危険率1.65倍高い)。ベースライン時のより高い水銀暴露は、インスリン(自己)分泌能を示すHOMA–β指数の減少とも有意に関連していました(P = 0.01)。



結論:



結果は実験室での研究結果に一致し、ヒトの縦断的データによって青年期における高水銀暴露により後に糖尿病発症リスクを増大させる可能性があることが示唆されました。



表1 足の爪水銀濃度(五分位群)によるベースライン特徴: CARDIA 微量元素研究、1987–2005 (n = 3,875)(一部抜粋)



10-121 足の爪水銀濃度


10-122 足の爪水銀濃度&DM

図 1 多変量調整後の足の爪水銀濃度と空腹時血糖およびインスリン濃度、HOMA-IRおよびHOMA–β細胞機能間の関係。



HOMA-IR インスリン抵抗性指数、HOMA–β インスリン自己分泌能を示す。



*各図表をクリックすると拡大表示します。



参考資料:



He K, Xun P, Liu K, Morris S, Reis J, Guallar E. Mercury Exposure in Young Adulthood and Incidence of Diabetes Later in Life: The CARDIA trace element study. Diabetes Care Feb 2013, DOI: 10.2337/dc12-1842



http://care.diabetesjournals.org/content/36/6/1584.abstract 



コメント



この研究は青年期の高い水銀暴露が後の2型糖尿病の発症リスクと有意に関連するという研究結果で大変有意義なものと言えます。



また、魚からのマグネシウム及びオメガ3脂肪酸摂取量などの要因も考慮しての検討を行い、水銀濃度と2型糖尿病との関連も調査しています。この研究の主任研究者のKa He教授は“研究でマグネシウムの重要性を認めています。また、魚のオメガ3脂肪酸およびマグネシウムがある程度水銀の起こしうる有害作用を減弱させる可能性がある” とメールでコメントして下さいました。



Ka He教授は昨年、第55回日本糖尿病学会年次学術集会からの招聘により来日し、2型糖尿病に加えて、メタボリックシンドロームをはじめ慢性疾患とマグネシウム摂取との関連について講演されました。



2012.04.23    Ka He先生来日3回講演のお知らせ



2012.05.22    Ka He先生略歴と講演抄録



水銀は有機と無機化合物として存在する毒性の強い広範な汚染物質です。ヒトにとって水銀の摂取源は主に魚介類からの消費によるものです。わが国で摂取される魚介類は国産のみならず諸外国からも多量に輸入されていますが、既に、国立医薬品食品衛生研究所安全情報部は、当研究論文もレビューしており食品安全情報(化学物質)No. 8/ 2013(2013. 04. 17)に掲載し、諸外国からの一部輸入魚の水銀検出量なども報告しています。



http://www.nihs.go.jp/hse/food-info/foodinfonews/2013... 



マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。


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