公開日:2012-10-12
食事性カルシウ摂取、カルシウムサプリメントと心筋梗塞、脳卒中リスク及び心血管疾患死亡率との関係
2012年5月、独・ハイデルベルクのがん研究センター、スイス・チューリッヒ大学の研究者らは、カルシウム摂取と心血管疾患との関係に関する報告をしたので、その論文概要を以下に紹介します。
背景:
より多いカルシウム摂取量が心血管リスクファクターを有利に修飾するかもしれないことが示唆されて来ています。しかし、心血管疾患リスクが最終的に減少するのが見られた調査結果は限定されています。むしろ、カルシウムサプリメントを摂ることが心筋梗塞リスクを増大させるかもしれないと、最近のエビデンスは警告しています。
目的:
食事性カルシウム摂取、カルシウムサプリメントと心筋梗塞、脳卒中のリスク及び全心血管疾患死亡率との関連を前向きに評価しました。
方法:
募集時、23980人、年齢35~64歳で主要な心血管疾患イベントがないヨーロッパ前向き調査のガンおよび栄養研究のハイデルベルク集団参加者を対象にデータを分析しました。ハザード比(HR)と95%信頼区間(95% CI)を推定するために、多変量コックス回帰モデルを用いました。
結果:
11年間の平均追跡期間で、心筋梗塞354例、脳卒中260例、心血管疾患死267例が確認されました。最低四分位と比較し、全体の食事性と乳製品カルシウム摂取の第3四分位では、心筋梗塞リスクのハザード比がそれぞれ0.69(95% CI 0.50-0.94)、0.68(95% CI 0.50-0.93)と有意に減少が見られました。脳卒中リスクと心血管疾患死亡率との関係では有意な所見はありませんでした。
サプリメントの未使用者と比較すると、カルシウムサプリメントの使用者で統計学的に有意に増加した心筋梗塞リスクは86%高く(HR¼1.86; 95% CI 1.17~2.96)、カルシウムサプリメントのみの使用者はさらに明らかで139%高く(HR¼2.39; 95% CI 1.12~5.12)認められました。
* 図をクリックすると拡大表示します。
結論:
食事からカルシウム摂取量を増やすことは、有意な心血管ベネフィットをもたらさない可能性があります。一方、カルシウムサプリメント(心筋梗塞のリスクを高める可能性があるので)は注意して摂るべきです。
参考文献:
Li K, Kaaks R, Linseisen J, Rohrmann S. Associations of dietary calcium intake and calcium
supplementation with myocardial infarction and stroke risk and overall cardiovascular mortality in the Heidelberg cohort of the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition study (EPIC-Heidelberg). Heart 98:920-925, 2012
http://heart.bmj.com/content/98/12/920.full
【コメント】
この研究は、カルシウム摂取と心血管疾患との関係を調査し、食事性カルシウム、カルシウムサプリメントの摂取量を高めることは、心筋梗塞リスクを高め、心血管ベネフィットをもたらさないという報告で、マグネシウムについては述べられていませんが、これまでマグネシウム摂取が心血管疾患のリスクを明らかに高めると言った報告は特にありません。
日本でも一般的に、カルシウム摂取の重要性と認識が高いので、カルシウムばかりを摂る事へのひとつの警鐘と考えます。この病態にはマグネシウムの相対的・絶対的不足も大きく関わっていると考えられます。カルシウムを意識して摂るのであればマグネシウムはそれ以上に意識して摂る必要があることはこれまで述べてきた通りです。
当研究会では、カルシウム摂取と心血管疾患、心筋梗塞リスクとの関係、カルシウムとマグネシウム摂取量の割合などについて、以下のサイトでご紹介して来ました。
2010.08.26 Caサプリメントで心筋梗塞リスク31%上昇
2007.08.23 マグネシウムとカルシウム摂取量の割合が重要ですか?
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。