公開日:2015-05-20
小児および青年期における水の硬度と内皮機能の関連に関する最初の報告
2014年にイラン・エスファハーン医科大学の研究者らが、“小児および青年期における水の硬度と内皮機能の関連に関する最初の報告”と題して報告をしたので、その論文概要を以下に紹介いたします。
序文
この研究は、健康な小児および青年期におけるカルシウムとマグネシウムが含有する水の硬度と内皮機能の関係を調査することを目的としています。
方法
この症例対照研究は、2012年にイラン・エスファハーン州の硬水および高度な硬水の2つの地域に住んでいる90人に対して実施しました。
上腕動脈の血流依存性血管拡張反応(FMD)および可溶性接着分子の(sICAM-1、sVCAM-1)の血清レベルは内皮機能の代替マーカーとして、高感度C反応性蛋白(hs-CRP)は炎症マーカーとして測定しました。
結果
参加者89人(男児51%、平均年齢14.75(2.9))のデータを示します(表1)。
高度な硬水地域の在住者は硬水地域の在住者よりFMD、hs-CRP、可溶性接着分子(sICAM-1、sVCAM-1)レベルがより高く示されました。
重回帰分析で年齢、性別、体格指数(BMI)、健康食指数と身体活動レベルの交絡要因調整後、カルシウムとマグネシウムが含有する水の硬度にはFMDと有意な正の関係が認められました。可溶性接着分子では有意に逆の関係を示しました(P<0.05)。
表 1. 研究集団の特徴a
a データは平均(標準偏差)。
FMD 血流依存性血管拡張反応、
hs-CRP (high sensitivity C-reactive protein) 高感度C反応性蛋白、
sICAM-1、sVCAM-1 可溶性接着分子。
* p値(p < 0.05)は硬水と高度な硬水地域間の比較(赤色は統計的有意性を示す)。
* 図表をクリックすると拡大表示します。
結論
この研究はカルシウムとマグネシウムが含有する水の硬度は、小児および青年期におけるアテローム性動脈硬化症の初期段階に対する保護的な役割を示唆した初めてのものです。
参考資料:
Poursafa P, Kelishadi R, Amin MM, Hashemi M, Amin M. First report on the association of drinking water hardness and endothelial function in children and adolescents. Arch Med Sci. 10:746-751, 2014 doi: 10.5114/aoms.2014.44866.
http://www.termedia.pl/Clinical-research-First-report...
【MAG21研究会コメント】
この研究の研究者らによると初めて小児および青年期におけるカルシウムとマグネシウムが含有する水の硬度と内皮機能の関連を調査し、動脈硬化の初期段階に対する保護的な役割についての報告をしたことに意義が有ります。
血管への作用としてカルシウムは血管収縮、筋収縮、マグネシウムは正常な血管張力、筋弛緩に関係しています。さらに、マグネシウム摂取量は多いと全身性の炎症性サイトカイン濃度も低いことが知られています。(Kim DJ, et al., Diabetes Care 33:2604-2610, 2010)
2010.12.21 マグネシウム摂取量と全身性炎症、インスリン抵抗性と糖尿病発症との関連
本来、カルシウムとマグネシウムの摂取量が正常な場合、血管および筋肉はスムーズに緊張と弛緩をくり返しています。
日本の飲料水は一般的に軟水が多く、マグネシウムの良い摂取源とは言えません。また、日本人の食事摂取基準(2015年版)でマグネシウムの推奨量が設定されていますが、食事からのマグネシウムの摂取量は不足し、カルシウムとマグネシウムの食事摂取比率が高い状態が続いています。
2014.06.03 日本人のカルシウムとマグネシウムの食事摂取比率は2より低く、1.5~1が望ましい
従って、若い時から動脈硬化性疾患の予防には、飲食物からのカルシウムのみならずマグネシウムもより確りと摂取するのが重要です。
当ホームページでは以下のサイトでWHOが報告している飲料水中のマグネシウムと健康などに関してご紹介してきました。
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。