公開日:2012-07-31
膝関節症とマグネシウム摂取との関係
2012年4月、米国ノースカロライナ大学の研究者らは、膝関節症とマグネシウム摂取との関係に関する報告をしたので、その論文概要を以下に紹介します。
目的:
アフリカ系アメリカ人と白人男女間の食事性マグネシウム摂取とX線上の変形性膝関節症の横断的関連性を検討しました。
方法:
X線上の変形性膝関節症の存在の有無についてジョンソン・カウンティー変形性膝関節症プロジェクト(JoCo OA)の参加者を対象に検討し、少なくとも片方の膝にKellgren-Lawrence(K/L)法により2以上と定義しました。マグネシウム摂取量の把握は、ブロック食物頻度アンケート(FFQ)調査を用いました。効果修飾因子は、既往の文献に基づきマグネシウム摂取量および選択要因の相互作用を検証して調査しました。マグネシウム摂取量およびX線上の変形性膝関節症の関係を推定するために、標準エネルギー調整方式による多変量ロジスティック回帰モデルを用いました。
結果:
変形性膝関節症の有病率は参加者2112人中36.27%でした。マグネシウム摂取とX線上の変形性膝関節症の関係は人種によって修正(P = 0.03)されると分かりました。逆の閾値関連性は、白人間で観察されました。最低五分位と比較し、X線上の変形性膝関節症の相対オッズ比は、マグネシウム摂取量の第2五分位での参加者で半分にカット (オッズ比: 0.52; 95% CI 0.34-0.79) されましたが、さらなるマグネシウム摂取でも効果(P = 0.51)は認められませんでした。統計的に有意な関連性は、アフリカ系アメリカ人では観察されませんでした。
結論:
食事性マグネシウム摂取量と変形性膝関節症との関連で、ある程度の逆閾値関連性がアフリカ系アメリカ人ではなく白人に認められました。これら結果の確認と、人種による影響の作用機序を解明するために更なる研究が必要です。
参考文献:
Qin B, Shi X, Samai PS, Renner JB, Jordan JM, He K. Association of dietary magnesium intake with radiographic knee osteoarthritis: The johnston county osteoarthritis project. Arthritis Care Res (Hoboken). 2012 Apr 17. doi: 10.1002/acr.21708. [Epub ahead of print]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22511536
【コメント】
この疫学研究では、膝関節症とマグネシウム摂取との関係を検討し、食事性マグネシウム摂取量と変形性膝関節症との間には関連性があるという報告は意義があります。
この論文の本文で紹介されていますが、変形性膝関節症は、アメリカにおける関節疾患で最も一般的なタイプで、炎症マーカーとの関連が報告されています。
マグネシウムは免疫反応とも関係し、低マグネシウム血症は炎症マーカーの上昇に関連すると報告されています。
2010.12.21 マグネシウム摂取量と全身性炎症、インスリン抵抗性と糖尿病発症との関連
2009.12.15 閉経後女性の多民族的コホートにおける食事性マグネシウム摂取と炎症および内皮機能障害マーカーの関係
2009.09.08 WHO 飲料水中のカルシウムとマグネシウム: 公衆衛生的意義 2009発行
この研究論文の指導者はDr. Ka Heで、彼は今年の5月(2012年)に、日本糖尿病学会に招聘され、マグネシウム摂取量と2型糖尿病や生活習慣病との関係、特に臨床疫学的観点から報告しました。
なお、わが国には、X線上の変形性膝関節症(膝OA)が2400万人、腰椎OA が3500万人いると推測されることが、東京大学医学部22世紀医療センターの吉村典子氏らによる疫学調査で明らかにし、2007年4月26日第51回日本リウマチ学会総会・学術集会(横浜)、論文でも報告されました。
この内容は日経メディカルオンラインに掲載されているので、ご参考にしてください。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jcr2007/2007,,,
Yoshimura N. Epidemiology of osteoarthritis in Japan: the ROAD study. [Article in Japanese] Clin Calcium 21:821-825, 2011
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21628795
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