公開日:2011-06-01
慢性持続性こむら返り治療におけるクエン酸マグネシウムの無作為化、クロスオーバー、プラセボ対照試験
2002年、英国Keele大学医学部の研究者らは、慢性持続性こむら返りとクエン酸マグネシウムの臨床試験結果を報告したので、この論文の概要を以下にご紹介します。
背景:
夜間の脚の痙攣けいれん(こむら返り)はよく起きてとても辛いものです。治療の有効性が唯一証明されているのはキニーネですが、多くの副作用があります。マグネシウム塩類は、妊娠中に起こる脚のこむら返りの苦痛を減らすことが示されています。この研究は、ランダム化された二重盲検、クロスオーバー・プラセボ対照試験により、クエン酸マグネシウムが非妊娠個人で脚のこむら返りの治療に効果的かどうかを調査しました。
対象と方法: 定期的(3ヶ月間で週2回以上のこむら返り)に脚のこむら返りに苦しむボランティアが募集(プラセボ開始群:29人平均64歳うち男性15人、マグネシウム開始群:17人平均61歳うち男性6人)されました。マグネシウム300 mgに相当するクエン酸マグネシウムおよびプラセボ(偽薬)は、それぞれ6週間投与しました。最終4週間のマグネシウムとプラセボ治療の期間中、“こむら返り日記”にこむら返りの回数が記録され、辛さ、持続時間および被験者の主観的評価の有効性を解析しました。
結果:
プラセボ(n=29)から始まった対象群では、こむら返り数の中央値(95% CI)はプラセボ群で9回(6-17)、マグネシウム群で5回(4-8)でした。マグネシウム(n=17)から始まったグループでは、こむら返り数の中央値はマグネシウム群で9回(5-13)、プラセボ群で8回(4-14)でした。有意な持ち越し効果(p=0.88)はありませんでしたが、かなり有意な期間効果(p=0.008)が認められました。マグネシウム投与群にこむら返り数が少ない傾向にありました(p=0.07)。グループ間では、こむら返りの辛さと持続時間に違いはありませんでした。より多くの被験者では有意にプラセボ後25(54%)よりもマグネシウム後36(78%)の治療が役立ったと思われました(p=0.03)。
下痢はマグネシウムの副作用として認めました。
結論:
マグネシウムは、夜間のこむら返りの治療に有効であるかも知れないことが示唆されました。更なる評価が推奨されます。
参考資料:
Roffe C, Sills S, Crome P, Jones P. Randomised, cross-over, placebo controlled trial of magnesium citrate in the treatment of chronic persistent leg cramps. Medical Science Monitor8:CR326-330, 2002
http://www.medscimonit.com/fulltxt_free.php?ICID=420841
【コメント】
こむら返りは、年齢の増加と共に日夜突然起こり痛みを伴うことが知られています。
この論文では、ランダム化された二重盲検、クロスオーバー・プラセボ対照試験により、クエン酸マグネシウムが非妊娠個人で脚のこむら返りの治療に有効である可能性を示唆した点興味があると言えます。
なお、こむら返りに関する記述は、以下の当ホームページサイトをご参考にしてください。
2011.03.09 米国FDA注意喚起 プロトンポンプ阻害薬(PPI)の長期服用で低Mg血症の可能性
2009.03.18 『日経ヘルス プルミエ』4月号に横田先生の記事が掲載
2007.09.26 マグネシウムQ&A Q7 マグネシウムは、生活習慣病の予防以外の疾病予防にも利用できますか?
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。