公開日:2022-03-28
2021年、米国・インディアナ大学、コロンビア大学アービング医療センター、イスラエル・テルアビブ大学、ハワイのマグネシウム教育研究センターの研究者らは、“早産率に関連するマグネシウムレベル:生態学的、観察的、介入的研究のシステマティックレビューとメタ解析”に関する報告をしたので、その論文の概要を以下に紹介します。
背景
実験的研究では、マグネシウムが子宮平滑筋の活動に影響を及ぼすため、妊娠女性のマグネシウムレベルが妊娠期間に影響を及ぼす可能性があることを示唆しています。マグネシウムレベルまたはサプリメントと早産率との関連についてはほとんど知られていません。
目的
このシステマティックレビューの目的は、生態学的、観察的、介入的研究からマグネシウムの土壌レベルと早産率に関するデータをまとめることです。
データ源
土壌のマグネシウムレベルは米国地質調査所のデータから取得し、早産率はマーチオブダイムズ財団から得ました。査読付き雑誌に2019年4月まで発表された関連する疫学および臨床研究は、PubMed、Google Scholar、関連する文献リストから取得しました。
研究選択
独自の研究により英語で発表、ヒトで実施、マグネシウム(食事/サプリメントで摂取またはバイオマーカー)が曝露源 であり、早産(妊娠37週より前に生まれる)が結果として含まれます。
データ抽出
システマティックレビューには11件の研究が含まれ、メタ解析は6件の研究で実施されました。 マグネシウムサプリメントに関連する早産リスクの全体的な相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)は、ランダム効果モデルにより推定しました。
結果
生態学的研究では、土壌中のマグネシウム含有量と米国全体の早産率との間に逆相関があることを明らかにしました(r = -0.68; P <0.001)。観察研究11件からの調査では、血清マグネシウムレベルと早産率間の逆相関を支持します。妊娠女性20~35歳3068人と早産児352人を含む適格なランダム化比較試験6件のうち、マグネシウムサプリメント群女性と対照群を比較した相対リスク(RR)は0.58(95%CI、0.35-0.96)でした。
注釈: マグネシウムサプリメント群女性の相対リスク0.58とは早産リスクが42%低いという意味です。
結論
生態学的、観察的、介入的研究から蓄積されたエビデンスは、妊娠中の適切なマグネシウム摂取が早産の発生率を減らすのに役立つ可能性があることを一貫して示唆しています。
参考資料:
Zhang Y, Xun P, Chen C, Lu L, Shechter M, Rosanoff A, He K. Magnesium levels in relation to rates of preterm birth: a systematic review and meta-analysis of ecological, observational, and interventional studies. Nutr Rev. 79:188-199, 2021
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8453627/
【コメント】
この研究者らにより妊娠女性のマグネシウム摂取レベルと早産率との関連について初めて明らかにされ、妊娠中の適切なマグネシウム摂取が早産の発生率を減らすのに役立つ可能性を発表されたことに意義があります。
この研究の主任研究者コロンビア大学アービング医療センターKa He教授、共同研究者ハワイのマグネシウム教育研究センターAndrea Rosanoff先生は、マグネシウムに関し以前から精力的に数多くの研究論文を発表され、当MAG21研究会のホームページで一部解説しています。
なお、Ka He教授は2012年5月、日本糖尿病学会の招聘により来日され、①日本糖尿病学会年次学術集会ランチョンセミナー、②同学会シンポジウム、③日本糖尿病学会関東甲信越支部学術集会それぞれで講演されました。
2012-04-23 Ka He先生来日3回講演のお知らせ
MAG21研究会のホームページでは、マグネシウムに関する多くの臨床研究や疫学研究の論文について解説してきています。また、検索機能を設置しているので、例えば“Ka He”などの検索ワードを入力して記事を検索すると関連記事がリストアップされますので、ご利用ください。
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。