全粒穀物摂取量の増加は中年男女の2型糖尿病リスクの低下と関連: デンマークの食事、癌および健康コホート

公開日:2019-03-12

2018年、デンマーク・Danish Cancer Society Research Center, Aarhus University, スウェーデン・Chalmers University of Technology, Swedish University of Agricultural Sciencesの研究者らは、“全粒穀物摂取量の増加は中年男女の2型糖尿病リスクの低下と関連: デンマークの食事、癌および健康コホート” と題した研究報告をしたので、その論文概要を紹介します。

背景
2型糖尿病は世界的に大きな健康問題です。全粒穀物と穀物繊維は、2型糖尿病リスクに対して予防効果をもたらす可能性があります。しかしながら、全粒穀物の摂取量と製品の種類に関する詳細な情報と広範囲の摂取量に関するコホートで実施された研究はほとんどありません。

目的
研究の目的は、様々な穀物の種類や製品の摂取量を含む全粒穀物の摂取量と、広く多様な全粒穀物を摂取する人口の2型糖尿病リスクとの関連を調査することです。

方法
ベースラインで参加者50~65歳の55,465人を含むデンマークの食事、癌および健康コホートからのデータを用いました。これらのうち、7,417人の参加者が中央値15年間の追跡期間中に2型糖尿病と診断されました。全粒穀物製品の摂取量に関する詳細な情報は食物摂取頻度質問票から入手可能で、総全粒穀物摂取量および全粒穀物の種類(小麦、ライ麦、オート麦(燕麦))は1日当たりのグラム数に換算しました。潜在的な交絡因子を調整したCox比例ハザードモデルを用いて関連性を調べました。

結果
全粒穀物摂取量は、男性と女性の1日一食当たりの全粒穀物(16 g)を摂取する毎に2型糖尿病リスクが11%(男性)と7%(女性)低いことと関連していました[ハザード比(95% CI)男性: 0.89 (0.87, 0.91); 女性: 0.93 (0.91, 0.96)]。男性では、調査した全粒穀物タイプ(小麦、ライ麦、オート麦(燕麦))の摂取量が2型糖尿病リスクの低下と有意に関連していましたが、小麦とオート麦(燕麦)の摂取量のみが女性で有意に関連していました。全粒穀物製品の中でも、ライ麦パン、全粒粉パン、およびオートミール/ミューズリーは、男女ともに2型糖尿病リスクの低下と有意に関連していました。

全粒穀物摂取量の四分位よる男女ベースライン特徴(一部抜粋)



結論
このコホート研究では、全粒穀物の摂取量が多いことと2型糖尿病リスクが低いこととの間に一貫した関連性があることがわかりました。全体的に見て、調査した全ての異なる穀物および全粒穀物製品に関連性が認められました。

参考資料:
Kyrø C, Tjønneland A, Overvad K, Olsen A, Landberg R. Higher Whole-Grain Intake Is Associated with Lower Risk of Type 2 Diabetes among Middle-Aged Men and Women: The Danish Diet, Cancer, and Health Cohort. J Nutr 148:1434–1444, 2018
https://academic.oup.com/jn/article-abstract/148/9/1434/5054990?redirectedFrom=fulltext

【コメント】
2型糖尿病リスクと全粒穀物の摂取量と製品の種類に関する詳細な情報と広範囲の摂取量に関するコホート研究はほとんどありませんが、デンマークのコホート研究で全粒穀物摂取量は1日一食当たりの全粒穀物(16 g)を摂取する毎に2型糖尿病リスクが男性で11%、女性で7%低く、男性では全粒穀物の種類として小麦、ライ麦、オート麦(燕麦)の摂取量が2型糖尿病リスクの低下と有意に関連し、女性では小麦とオート麦(燕麦)の摂取量のみが有意に関連し、さらに全粒穀物製品の中でも、ライ麦パン、全粒粉パン、およびオートミール/ミューズリーは男女ともに2型糖尿病リスクの低下と有意に関連を認め、全粒穀物の摂取量が多いことと2型糖尿病リスクが低いこととの間に一貫した関連性があり、調査した全ての異なる穀物および全粒穀物製品に関連性を示したことに意義があります。

全粒穀物は食物繊維やビタミン、ミネラル(特にマグネシウム)などを多く含み、インスリン抵抗性を改善し、食後高血糖を抑制して2型糖尿病に有益な予防効果をもたらしていることが知られています。

デンマークのコホート研究では、全粒穀物摂取量の増加にともない、食物繊維摂取量およびマグネシウム摂取量の増加により、2型糖尿病症例数の減少が認められます(上記の表参照)。

日本では戦後、穀物摂取量(特にマグネシウムが豊富な大麦・雑穀等)が激減した時点と糖尿病が増え始めた1960年代の時点が一致することから、マグネシウム摂取不足と2型糖尿病は密接に関係しています。
2019-02-01 わが国における糖尿病推定有病率と生活環境の推移(1946年~2017年) 更新

マグネシウムの摂取不足は虚血性心疾患、高血圧・糖尿病・メタボリックシンドロ-ムなどの生活習慣病、歯周病、喘息、不安とパニック発作、うつ病、(慢性)疲労、片頭痛、骨粗鬆症、不眠症、こむら返り、便秘、PMS(月経前症候群)、胆石症、尿路結石、大腸がん、すい臓がん、動脈硬化、全身性炎症性疾患、悪阻(つわり)、そして長期記憶、アルツハイマー病など様々な疾病・病態とも密接に関連していることが基礎的・疫学的・臨床的研究でも明らかにされています。今後マグネシウム摂取の重要性がさらに認知され、正しい食育が行われる事が切に望まれます。

マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。

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