経口マグネシウム補充とメタボリックシンドローム: 無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験

公開日:2019-02-17

2018年、メキシコ・Mexican Social Security Instituteの研究者らは、“経口マグネシウム補充とメタボリックシンドローム: 無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験” と題した研究報告をしたので、その論文概要を紹介します。

目的
研究の目的は、メタボリックシンドローム(MetS)とその構成要素の改善における経口マグネシウム補充の有効性を評価することです。

方法
対象は、メタボリックシンドロームおよび低マグネシウム血症で、16週間毎日30 mLの5%塩化マグネシウム溶液(MgCl2 50g/1,000 ml溶液、マグネシウム量382 mgに等しい(n = 100人、平均年齢39.4 ± 9.8歳))またはプラセボ(偽薬)溶液(n = 98人、平均年齢40.4 ± 10.6歳)を摂取する群で、ランダムに割り当てられた198人を登録した無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験です。

血清マグネシウム値1.8 mg/dL未満を低マグネシウム血症の定義としました。最終条件では、計48人(48%)と76人(77.5%)がそれぞれマグネシウムとプラセボ群でメタボリックシンドロームでした(P = 0.01)。

注釈: メタボリックシンドロームの定義として以下の要素3つ以上含むことです。
ウエスト周囲径が男性90 cm以上、女性80 ㎝以上、
収縮期血圧が130 mmHg以上、かつ、または拡張期血圧が85 mmHg以上、
空腹時血糖値が100 ㎎/dl以上、
中性脂肪が150 ㎎/dl以上、かつHDLコレステロールが男性40 ㎎/dl未満、女性50 ㎎/dl未満

結果
ベースラインで、メタボリックシンドロームの基準が3、4、および5の個人の割合は、マグネシウム群のそれぞれ60.0%、37.0%、および3.0%、そして対照群のそれぞれ55.1%、35.7%、および9.2%でした。

注釈: メタボリックシンドローム基準とは、スピアマン相関(スピアマン順位相関係数で統計学的に順位データから求める相関の指標)を用いて血清マグネシウム値とメタボリックシンドローム基準の数0から5との間の相関を評価したものです。

ベースラインと最終条件との間で、メタボリックシンドロームの構成要素の変化は、プラセボ群よりもマグネシウム群の方が有意に高く認められ、収縮期血圧に対して-3.6±3.3 mmHg, P = 0.001、拡張期血圧に対して-5.5 ± 1.7 mmHg, P = 0.005、空腹時血糖に対して-12.4 ± 3.6 mg/dL, P < 0.005、トリグリセリドに対して-61.2±24 mg/dL, P = 0.003、そしてHDLコレステロールに対して0.9 ± 0.4 mg/dL, P = 0.06でした。

結論
マグネシウム補充は、血圧、高血糖、および高トリグリセリドを低下することによってメタボリックシンドロームを改善します。

参考資料:
Rodríguez-Morán M, Simental-Mendía LE, Gamboa-Gómez CI, Guerrero-Romero F. Oral Magnesium Supplementation and Metabolic Syndrome: A Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Clinical Trial. Adv Chronic Kidney Dis. 25:261-266, 2018 doi: 10.1053/j.ackd.2018.02.011.
https://www.ackdjournal.org/article/S1548-5595(18)30061-2/fulltext

【コメント】
メタボリックシンドロームおよび低マグネシウム血症を伴う対象者に塩化マグネシウム(MgCl2)を使った経口マグネシウム補充とメタボリックシンドロームの無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験は、マグネシウム群の方がプラセボ群よりも収縮期血圧に対して-3.6±3.3 mmHg、拡張期血圧に対して-5.5 ± 1.7 mmHg、空腹時血糖に対して-12.4 ± 3.6 mg/dL、トリグリセリドに対して-61.2±24 mg/dL、そしてHDLコレステロールに対して0.9 ± 0.4 mg/dLと有意差が高く認められ、マグネシウム補充は、血圧、高血糖、および高トリグリセリドを低下することによってメタボリックシンドロームを改善することを初めて示したことに大変意義があると言えます。

このメキシコの研究者らDr. Rodríguez-Morán, Dr. Guerrero-Romeroは、2012年メキシコのメリダで開催された第13回国際マグネシウムシンポジウム(SDRM)の会長ご夫妻で、マグネシウムと糖尿病、高血圧、メタボリックシンドローム、うつ病などに関し、精力的に研究を進め多くの研究論文を発表されています。2006年日本で開催された第11回国際マグネシウムシンポジウム(SDRM)にも参加されました。MAG21研究会のホームページではこれまで種々の研究論文を紹介しております。

2015-02-18 経口マグネシウム補充: 2型糖尿病の世界的な課題に直面する補助的選択肢?

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