公開日:2012-03-22
米国女性のマグネシウム摂取、血漿C-ペプチドと大腸がんの発症: 28年間の追跡研究
2012年3月、米国ハーバード大学医学部およびBrigham and Women's Hospitalの研究者らは、米国女性のマグネシウム摂取、血漿C-ペプチドと大腸がんの発症の長期追跡研究に関する報告をしたので、その論文概要を以下に紹介します。
背景:
実験研究では、大腸がんの発症に対するマグネシウム摂取の役割が示唆されましたが、疫学的エビデンスは結論付けられていません。
方法:
Nurses' Health Study(看護師健康研究)で1980年時にがんに罹患していない女性85924人について2008年6月まで追跡調査し、マグネシウム大腸がん仮説を検証しました。
コックス比例ハザード回帰モデルを多変量相対リスク(MV RRs、95% 信頼区間)の推定に使用しました。
結果:
年齢調整モデルではマグネシウム摂取量が大腸がんのリスクと有意に逆相関があり、総マグネシウム摂取量の最低位から最高十分位までの相対リスクは1.0(基準)、0.93、0.81、0.72、0.74、0.77、0.72、0.75、0.80、0.67((P < 0.001)でした。
大腸がんに関わる既知の食事および非食事性のリスク因子を調整する多変量モデルでは関連性が有意に減弱し、多変量相対リスクは1.0(基準)、0.96、0.85、0.78、0.82、0.86、0.84、0.91、1.02、0.93(P=0.77)でした。
同様に、年齢調整モデルではマグネシウム摂取量が血漿C-ペプチド濃度と有意に逆相関が認められましたが(P=0.002)、多変量調整モデルでは関連付けられませんでした(P=0.61)。結果はサブサイトによって異ならないか、あるいはカルシウム摂取か体格指数(BMI)によって修飾されました。
結論:
これらの予測結果は、女性の大腸がんリスクあるいは血漿Cペプチド濃度のいずれかとマグネシウム摂取量と独立した関連を支持されません。
参考文献:
Zhang X, Giovannucci EL, Wu K, Smith-Warner SA, Fuchs CS, Pollak M, Willett WC, Ma J. Magnesium intake, plasma C-peptide, and colorectal cancer incidence in US women: a 28-year follow-up study. British Journal of Cancer advance online publication, 13 March 2012; doi:10.1038/bjc.2012.76www.bjcancer.com
【コメント】
この前向き研究では、米国女性85924人について28年間の長期追跡調査によりマグネシウム摂取量が大腸がんのリスクと有意に逆の関係があることを示し、マグネシウム摂取量が最も多い群は最も少ない群と比較し、大腸がんのリスクが33%低下したことに意義があると言えます。
対照に、日本人のマグネシウム摂取量と大腸がんの関係については、MAG21研究会のホームページでも取り上げてきました 2010.08.05日本人男性マグネシウム摂取が大腸がん予防 厚生労働省研究班で国立がんセンターの研究者らは、日本人のコホート長期追跡調査で45~74歳の87117人(男性40830人、女性46287人)を対象に11年間の追跡調査をした結果、男性ではマグネシウム摂取量が多いほど大腸がんリスクは低くなりましたが、女性ではマグネシウム摂取量と大腸がんのリスクに有意な関係はみられなかったと報告しています。
この理由として、「大腸がんに関連する要因の男女差、性ホルモンの影響、飲酒習慣の差」が挙げられ、「マグネシウムはインスリン抵抗性(糖尿病の発症と関連する)を改善することによって大腸がんの予防に役立っている可能性があるが、女性では大腸がんの発症機序にインスリン抵抗性が深くかかわっていないことが示唆され、マグネシウムの摂取量が増えても大腸がんのリスクが低下しなかったのかもしれない」と考察しています。
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。