日本人男性マグネシウム摂取が大腸がん予防

公開日:2010-08-05

 日本人男性マグネシウム摂取が大腸がん予防

2010年2月、厚生労働省研究班で国立がんセンターの研究者らは、日本人のコホート長期追跡調査結果(多目的コホート研究:http://epi.ncc.go.jp/jphc/)として、マグネシウム摂取と大腸がん(結腸直腸がん(CRC))との関係について発表しました。

以下はその論文の概要です。

      マグネシウムは、ゲノムの安定性を維持し、DNA合成と修理のために必須な補因子です。

      欧米の研究では、マグネシウムの摂取量が多い人で大腸がんのリスクが低下することが報告されています。

      この研究では、マグネシウム摂取と大腸がんのリスクとの関係ついて調べました。全国の10保健所管内に住む、45~74歳の8万7,117人(男性40,830人、女性46,287 人)を対象に11年間の追跡調査をしました。研究開始から5年後に対象者が回答した138項目の食物摂取頻度アンケートデータを分析しました。

●      11年の追跡期間中、1,129人(男性689人、女性440人)が大腸がんと診断されました。

      アンケートデータから算出されたマグネシウム摂取量を5群に分けて大腸がんの発症を比較しました。

✔           男性では、マグネシウム摂取量が高いほど大腸がんリスクは低くなる傾向があり、特に結腸がんで明らかでした。

✔          男性では、マグネシウム摂取量が最も多い群は最も少ない群と比較し、結腸・直腸がんのリスクが52%低下し、大腸がんのリスクも35%低下しました。

✔           同様に男性では、飲酒習慣と肥満の程度(BMI)でもマグネシウムによる予防的効果の傾向が見られました。

      女性では、マグネシウム摂取量と大腸がんのリスクに有意な関係はみられませんでした。

この理由として研究者らは、「大腸がんに関連する要因の男女差、性ホルモンの影響、飲酒習慣の差が挙げられる」、「マグネシウムはインスリン抵抗性(糖尿病の発症と関連する)を改善することによって大腸がんの予防に役立っている可能性がある。女性では大腸がんの発生機序にインスリン抵抗性が深くかかわっていないことが示唆され、マグネシウムの摂取量が増えても大腸がんのリスクが低下しなかったのかもしれません」と考察されています。

参考資料:

Ma E, Sasazuki S, Inoue M, Iwasaki M, Sawada N, Takachi R, Tsugane S, for the Japan Public Health Center-based Prospective Study Group. High dietary intake of magnesium may decrease risk of colorectal cancer in Japanese men. Journal of Nutrition 140:779-85, 2010

【コメント】

厚生労働省研究班で日本人男女8万7,000人を対象にした11年間の長期追跡調査結果として、男性では食事からのマグネシウム摂取量が多いと大腸がん(結腸直腸がん)のリスクが低下することが判った事は興味あることです。

男性でマグネシウム摂取量を比較すると最も少ない群(第1群)が1日238mg未満(中央値216mg)、最も多い群(第5群)が1日327mg以上(中央値355mg)ではかなりの差があります。

当ホームページでマグネシウムの日本人の食事摂取基準と推定摂取量の比較(男性30~49歳)をご紹介していますが、この論文の最も少ない群のマグネシウム摂取量も同程度で不足しています。

2010.01.20 マグネシウム推奨量摂取量比較更に深刻

大腸がんのリスクを低下させるには、少なくとも食事摂取基準レベル或いはそれ以上のマグネシウム摂取を心がけたいものです。

食事からのマグネシウム摂取に関しては、以下のサイトをご覧下さい。

2009.01.07 カルマグ摂取比と大腸がん

2010.05.19 『健康のひろば』平成22年5月11日号に横田先生登場

マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。

 

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