血清マグネシウム濃度高値で脳動脈瘤とくも膜下出血リスク低下

公開日:2022-05-26

2021年、スウェーデン・カロリンスカ研究所、ウプサラ大学、イギリス・インペリアル・カレッジ・ロンドン、ロンドン大学、St George's University Hospitals NHS Foundation Trustの研究者らは、“血清マグネシウム濃度高値で脳動脈瘤とくも膜下出血リスク低下”に関する報告をしたので、その論文の概要を以下に紹介します。

目的
マグネシウムは血圧と血管内皮細胞機能の調節に関与していますが、脳動脈瘤におけるマグネシウムの役割は知られていません。 ここでは、血清マグネシウム濃度と脳動脈瘤リスクとの関連を調査しました。

方法
ヨーロッパ系集団を対象とした23,829人の血清マグネシウム濃度に関するデータ、79,429人(症例7,495人と対照71,934人)の脳動脈瘤に関するデータを解析しました。

結果
血清マグネシウム濃度がより高いほど脳動脈瘤リスクの低下と関連していました。
血清マグネシウム濃度が0.1 mmol/L上昇する毎のオッズ比は、脳動脈瘤(未破裂と破裂)で0.66 (95%信頼区間[CI] 0.49-0.91)、未破裂脳動脈瘤で0.57 (95% CI 0.30-1.06)、動脈瘤性くも膜下出血で0.67 (95% CI 0.48-0.92)でした。

注釈: オッズ比0.66とは、血清マグネシウム濃度0.1mmol/L上昇する毎に脳動脈瘤(未破裂と破裂の合計)の発症リスクが34%低下するという意味です。

結論
この研究は、血清マグネシウム濃度の上昇が脳動脈瘤、くも膜下出血のリスクを低下させることを裏付けるエビデンスを示します。

参考資料:
Larsson SC, Gill D. Association of Serum Magnesium Levels With Risk of Intracranial Aneurysm: A Mendelian Randomization Study. Neurology 97: e341-e344, 2021
PMCID: PMC8362358 DOI: 10.1212/WNL.0000000000012244

【コメント】
この研究者らは、ヨーロッパ系集団の血清マグネシウム濃度と脳動脈瘤リスクとの関連を調査し、血清マグネシウム濃度がより高いほど脳動脈瘤、くも膜下出血リスクの低下と関連していると発表された事に意義があります。

血清マグネシウム値を監視するのは重要です。
日本では糖尿病患者とその予備軍がおよそ2000万人と推定されているので、相当数が低マグネシウム血症の可能性が有ります。また、糖尿病以外でも血中マグネシウム値が低い男性と女性が存在しますが、2つの問題点が有ります。
まず、一般的にマグネシウムの重要性について認知が低い為、臨床現場に於いて患者さんの血中マグネシウムを測定する医師が少ないことです。
次に、わが国で臨床検査に使用しているマグネシウムの基準値がメタボ予備軍を含む従来のままで、完全健常者による基準値の再策定がされて無い為に、下限値(日本の血清マグネシウムの基準値の多くが 1.8~2.6 mg/dLですが)があまく設定されており、低マグネシウム血症の患者さんが見逃されていると思われます(横田邦信,白石正孝,恩田威一ほか:健常者における血清総マグネシウム(Mg)基準値の妥当性に関する検討.JJSMgR 26:100-101, 2007.)。この問題は、早く解決し、現代に沿った正しいマグネシウム基準値が臨床で使用されることが望まれます。なお、静脈採血検体では血清を分離するまでの時間が短いほどより正確な値が得られますが、数時間以上経った検体(血清)では高値になるので結果の判定には注意が必要です。

マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。

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