新型コロナウイルス(COVID-19)におけるマグネシウム恒常性との関連

公開日:2022-02-18

2021年、イタリア・Università Cattolica del Sacro Cuore、Alleanza Contro Il Cancro、アメリカ・Center for Magnesium Education and Research、イラン・Shahid Beheshti University of Medical Sciences、イタリア・University of Palermo、イタリア・Università di Milano、メキシコ・Biomedical Research Unit of Mexican Social Security Institute、イタリア・Università di Bologna、フランス・Université Clermont Auvergne、ドイツ・Franziskus Hospital、イタリア・Università Degli Studi di Salernoの研究者らは、“新型コロナウイルス(COVID-19)におけるマグネシウム恒常性との関連”に関する報告をしたので、その論文の概要を以下に紹介します。

目的
新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは、1年半も経たないうちに私たちの医療と経済システムをほぼ崩壊させました。科学研究共同体は、この複雑な病気の病因を理解するために可能な限りの努力を集中しており、最近、いくつかのグループがCOVID-19患者の栄養サポートに関する推奨事項を強調しています。
このスコーピングレビューでは、マグネシウムの重要な役割と、SARS-CoV-2【新型コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2:SARS-CoV-2))】感染の病態生理学とマグネシウム依存性機能との間の多数の関連性を考慮し、臨床栄養におけるマグネシウムのより深い理解を促すことを目的としています。

注釈: スコーピングレビュー(Scoping Review)とは、新しい文献レビューの初期評価で、既存の文献を出来るだけ時間を掛けずに整理し、研究が行われていない範囲を特定することを目的としています。
スコーピングレビューについての詳細は以下の文献を参照ください。
友利幸之介、澤田 辰徳、大野 勘太、高橋香代子、沖田 勇帆.スコーピングレビューのための報告ガイドライン日本語版:PRISMA-ScR.日本臨床作業療法研究 7:70−76,2020

方法
1990年から現在までのPubMedとGoogle Scholarを検索することにより、慢性非感染性疾患と感染症におけるマグネシウムの役割に関する実験的および臨床的研究から既存のエビデンスをレビューし、COVID-19患者におけるマグネシウム恒常性の変化とそれらの疾患転帰との関連に関する最近の報告に焦点を当てています。
重要なのは、COVID-19におけるマグネシウムの役割を明らかにすることに特化した進行中の臨床試験について実態調査を実施することです。

結果
方法論に種々の制限がありますが、データはマグネシウムの恒常性の乱れとCOVID-19との関連を示しています。今後、マグネシウムサプリメントの予防的あるいは治療的可能性を探るため、より良い研究が求められています。

結論
私達は、臨床現場で見過ごされがちなマグネシウムの関連性を再考することを提案します。
したがって、マグネシウム血症を監視する必要があり、マグネシウムの恒常性が不均衡な場合は、適切な栄養療法またはサプリメントがSARS-CoV-2感染からの保護、COVID-19症状の重症度の軽減、急性期後の回復の促進に寄与する可能性があります。

参考資料:
Trapani V, Rosanoff A, Baniasadi S, Barbagallo M, Castiglioni S, Guerrero Romero F, Iotti S, Mazur A, Micke O, Pourdowlat G, Scarpati G, Wolf FI, Maier JA. The relevance of magnesium homeostasis in COVID 19. European Journal of Nutrition 2021 Oct 23;1-12.
doi: 10.1007/s00394-021-02704-y

【コメント】
この研究者らの多くはINTERNATIONAL SOCIETY FOR THE DEVELOPMENT OF RESEARCH ON MAGNESIUM (SDRM)のメンバーで、マグネシウムの第一線で世界的に活躍している研究者により1990年からの研究論文を精査し、COVID-19におけるマグネシウム恒常性との関連について発表された事に意義があります。

マグネシウム血症を監視するのは重要です。
日本では糖尿病患者とその予備軍がおよそ2000万人と推定されているので、相当数が低マグネシウム血症の可能性が有ります。また、糖尿病以外でも血中マグネシウム値が低い男性と女性が存在しますが、2つの問題点が有ります。
まず、一般的にマグネシウムの重要性について認知が低い為、臨床現場に於いて患者さんの血中マグネシウムを測定する医師が少ないことです。
次に、わが国で臨床検査に使用しているマグネシウムの基準値がメタボ予備軍を含む従来のままで、完全健常者による基準値の再策定がされて無い為に、下限値(日本の正常血清マグネシウム値 1.8~2.6 mg/dLですが、1.8~2.0当り)があまく設定されており、低マグネシウム血症の患者さんが見逃されていると思われます(横田邦信,白石正孝,恩田威一ほか:健常者における血清総マグネシウム(Mg)基準値の妥当性に関する検討.JJSMgR 26:100-101, 2007.)。この問題は、早く解決し、現代に沿った正しいマグネシウム基準値が臨床で使用されることが望まれます。なお、静脈採血検体では血清を分離するまでの時間が短いほどより正確な値が得られますが、数時間以上経った検体(血清)では高値になるので結果の判定には注意が必要です。

MAG21研究会のホームページでは、マグネシウムに関する多くの臨床研究や疫学研究の論文について解説してきています。また、検索機能を設置しているので、例えば“新型コロナウイルス”などの検索ワードを入力して記事を検索すると関連記事がリストアップされますので、ご利用ください。

マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。

検索


新着記事