高齢患者における新型コロナウイルス(COVID-19)の重症転帰への進行に対するビタミンD、マグネシウム、ビタミンB12の組み合わせの効果を評価するコホート研究

公開日:2021-11-15

2020年、シンガポール・シンガポール総合病院(Singapore General Hospital)、センカン総合病院(Sengkang General Hospital)、Duke-NUS Medical Schoolの研究者らは、"高齢患者における新型コロナウイルス(COVID-19)の重症転帰への進行に対するビタミンD、マグネシウム、ビタミンB12の組み合わせの効果を評価するコホート研究"に関する報告をしたので、その論文の概要を以下に紹介します。

目的
この研究目的は、ビタミンD、マグネシウム、ビタミンB12 (DMB)の組み合わせを投与されたコロナウイルス(COVID-19)感染高齢患者の臨床転帰を、投与されなかった患者と比較することです。この組み合わせを投与した患者は、そうでない患者よりも酸素療法、集中治療サポート、または両方の組み合わせを必要とする患者が少ないと仮定しました。

方法
これは、高等教育病院におけるCOVID-19の50歳以上すべての連続入院患者のコホート観察研究です。
2020年4月6日以前は、(DMB)の組み合わせを受けた患者はいませんでした。この日以降、患者は酸素療法を必要としない場合、入院時に1日1回経口ビタミンD3 (コレカルシフェロール)1000 IU、経口マグネシウム150 mg、経口ビタミンB12 (メチルコバラミン)500 mcgを14日間投与されました。
主要評価項目は、あらゆる形態の酸素療法、集中治療支援、またはその両方につながる悪化でした。

結果
2020年1月15日から4月15日までの間に50歳以上43人の連続したCOVID-19患者を特定しました。患者17人は主要評価項目の発症前にDMBを受け、26人の患者は受けませんでした。
介入群とコントロール群間のベースライン人口統計学的特性は年齢によって有意に異なっていました。
一変量分析では、年齢と高血圧が結果に大きな影響を及ぼしました。多変量解析で年齢または高血圧を個別に調整した後、介入群は保護的意義を保持しました。
入院中に酸素療法の開始を必要とした対照よりも治療を受けた患者が少なかった(3人/17人=17.6%対16人/26人=61.5%、P = 0.006)。DMB曝露は、酸素療法、集中治療サポート、または両方の単変量解析と多変量解析で、それぞれ0.13(95%信頼区間[CI]、0.03–0.59)および0.20(95%CI、0.04–0.93)のオッズ比と関連していました。
注釈: オッズ比:0.13とは、DMBを投与することにより酸素療法、集中治療サポート、または両方が87%必要としないと言う意味です。

結論
高齢のCOVID-19患者におけるビタミンD/マグネシウム/ビタミンB12の組み合わせ投与は、酸素サポート、集中治療サポート、またはその両方を必要とする臨床的悪化のある患者の割合の有意な減少と関連していました。
この研究は、COVID-19の重症度を改善する上でこの組み合わせの完全な利点を確認するために、さらに大規模なランダム化比較試験をサポートします。

参考資料:
Tan CW, Ho LP, Kalimuddin S, et al. Cohort study to evaluate the effect of vitamin D, magnesium, and vitamin B12 in combination on progression to severe outcomes in older patients with coronavirus (COVID-19). Nutrition 2020;79-80:111017.
Published online 2020 Sep 8. doi:10.1016/j.nut.2020.111017
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7832811/

【コメント】
このシンガポールの研究者らは今回の臨床コホート研究により、高齢の新型コロナウイルス(COVID-19)患者におけるビタミンD/マグネシウム/ビタミンB12の組み合わせ投与は、酸素療法、集中治療サポート、または両方が87%必要とせず重症度を改善することを示しました。更なる大規模な臨床ランダム化比較試験を期待します。

このコホート研究では、経口マグネシウムとして酸化マグネシウムを使用されましたが腸管からの吸収率が悪いので、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウムなど吸収率がより良いマグネシウム化合物を使用した研究結果が期待されます。

マグネシウムの摂取不足は虚血性心疾患、高血圧・糖尿病・メタボリックシンドロ-ムなどの生活習慣病、歯周病、喘息、不安とパニック発作、うつ病、(慢性)疲労、片頭痛、骨粗鬆症、不眠症、こむら返り、便秘、PMS(月経前症候群)、悪阻(つわり)、胆石症、尿路結石、大腸がん、すい臓がん、動脈硬化、全身性炎症性疾患、そして長期記憶、アルツハイマー病など様々な疾病・病態とも密接に関連していることが基礎的・疫学的・臨床的研究でも明らかにされています。今後マグネシウム摂取の重要性がさらに認知され、正しい食育が行われる事が切に望まれます。

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