公開日:2021-10-26
2021年、米国・ノースカロライナ州立大学とドイツの研究者らは、“SARS-CoV-2:エネルギー(ATP)代謝および新型コロナウイルス(COVID-19)の重症度に対する、ビタミンDによって緩和されるリン酸とマグネシウムの影響”に関する展望を報告したので、その論文の概要を以下に紹介します。
新型コロナウイルス(COVID-19)合併症の重症度を軽減するためにビタミンDを使用することは、有望なデータによりかなり注目を集めています。その意図された作用機序は免疫調節剤としてのものです。 ただし、ビタミンDはリン酸とマグネシウムの代謝にも影響を及ぼし、SARS-CoV-2【新型コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2:SARS-CoV-2))】の病因に重要な役割を果たす可能性があります。
SARS-CoV-2は、ATPを排出するサイトカインストームを誘発する可能性があり、その再生にはリン酸とマグネシウムが必要です。しかし、これらのミネラルは、高齢者(特に男性)、糖尿病、肥満、利尿剤の使用など、人々が重度のCOVID-19にかかりやすくなる状態ではしばしば不足しています。重度のCOVID-19で観察される症状は、血小板減少、凝固障害、肝臓と腎臓の機能障害、神経障害、免疫不全、心臓と肺の障害、呼吸器からの離脱遅延、不整脈、発作、多臓器不全など、典型的な低リン血症や低マグネシウム血症で見られる症状ともよく一致します。
リン酸とマグネシウムの不足は、COVID-19患者に一般的に見られる腎臓の問題によって増幅され、それらは結果として尿中に排泄されます。あるデータによると、リン酸とマグネシウムがCOVID-19患者に不足していることを示しており、リン酸はその重症度と顕著な相関関係を示しています。ある実験では、COVID-19患者にビタミンD3、マグネシウム、ビタミンB12のカクテルを補充したところ、非常に有望な結果が得られました。したがって、COVID-19患者は、理想的にはすでに感染の初期段階にあるリン酸とマグネシウムの不足をモニターし、治療する必要があると私たちは主張します。 ビタミンDと組み合わせたリン酸とマグネシウム補充も、リスクのある集団の予防戦略として実施することが可能です。
参考資料:
van Kempen T, Deixler E. SARS-CoV-2: influence of phosphate and magnesium, moderated by vitamin D, on energy (ATP) metabolism and on severity of COVID-19. Am J Physiol Endocrinol Metab 320: E2–E6, 2021.
doi:10.1152/ajpendo.00474.2020
【コメント】
このアメリカとドイツの研究者らは、新型コロナウイルス(COVID-19)患者、感染の初期段階にも見られる低リン血症や低マグネシウム血症をモニターし、また、ビタミンDと組み合わせたリン酸とマグネシウム補充をリスクのある集団の予防戦略として実施する必要があると主張しています。
マグネシウムとリンは骨や歯の形成に欠かせない必須・主要ミネラルでエネルギー産成にかかわっています。マグネシウムは、ビタミンD機能を活性化および強化します。
近年の日本人男女30~49歳のマグネシウム、リン、ビタミン Dの食事摂取基準(2020年版)、2019(令和元)年国民健康・栄養調査結果による推定摂取量を比較すると、特にマグネシウムの摂取不足が目立つので、日頃から積極的に摂取してください。
日本人の食事摂取基準(2020年版)
2019(令和元)年 国民健康・栄養調査結果栄養素等摂取量
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