カリウムとマグネシウムの摂取比率と高血圧

公開日:2021-10-05

2019年、メキシコ・Mexican Social Security Instituteの研究者らは、“カリウムとマグネシウムの摂取比率と高血圧”に関する報告をしたので、その論文の概要を以下に紹介します。

背景
この研究は、カリウムとマグネシウムの摂取比率が、その他の点で健康な個人における偶発的な高血圧と関連しているかどうかを分析することです。

方法
健康な個人529人が横断研究に登録され、以下の4グループに割り当てられました。
グループ1)推奨される食事摂取基準内のカリウムとマグネシウムの摂取量。
グループ2)推奨されるマグネシウム摂取量と推奨される食事摂取基準を下回るカリウム摂取量。 グループ3)推奨されるカリウム摂取量と推奨される食事摂取基準を下回るマグネシウム摂取量。 グループ4)マグネシウムとカリウムの摂取量が推奨される食事摂取基準を下回る。
研究中のグループは、ナトリウムとカルシウム摂取量によって一致しました。「24時間リコール」アンケートを使用して、2日間連続してすべての飲食物の摂取量を登録しました。
性別、腹囲、およびトリグリセリドレベルによって調整された多重ロジスティック回帰分析を使用して、高血圧のマグネシウムとカリウムの摂取量のオッズ比を算出しました。

結果
高血圧が155人(29.3%)確認されました。
グループ間で肥満と太りすぎによる統計的有意差はありませんでした。
グループ1の個人と比較して、カリウムとマグネシウムの比率(オッズ比0.88; 95%CI 0.85〜0.93)はマグネシウムとカリウムの摂取量自体ではなく、グループ4の被験者の高血圧の頻度と逆相関していました。グループ2と3の個人は関連を示しませんでした。

研究対象グループの特徴(一部抜粋)
表1. 研究対象グループの特徴(一部抜粋)


結論
マグネシウムとカリウムの摂取量が推奨される食事摂取基準を下回っている健康な人では、カリウム対マグネシウムの摂取比率が高いと(偶発的)高血圧の頻度と逆相関することが示唆されました。

参考資料:
Guerrero‐Romero F, Rodríguez‐Morán M. The ratio potassium‐to‐magnesium intake and high blood pressure. Eur J Clin Invest. 2019;49:e13093. https://doi.org/10.1111/eci.13093

【コメント】
このメキシコの研究者ら(First & Second authors)は今回の横断研究により、マグネシウムとカリウムの摂取量が食事摂取基準の推奨量を下回っている健康な人では、カリウム対マグネシウムの摂取比率が高いと偶発的な高血圧と逆相関していることを示しました。

近年の日本人男女30~49歳のマグネシウムとカリウムの食事摂取基準(2020年版)によるカリウム対マグネシウムの摂取比率を算出すると男性6.8、女性6.9となります。さらに、2019(令和元)年国民健康・栄養調査結果による推定摂取量を基にカリウム対マグネシウムの摂取比率を算出すると男性8.9~9.0、女性9.2~9.3でマグネシウム摂取不足の影響が出ています。これらの傾向として、日本人の食事摂取基準(2020年版)によるカリウム対マグネシウムの摂取比率はメキシコの研究者らのグループ1、推定摂取量によるカリウム対マグネシウムの摂取比率はメキシコの研究者らのグループ4に似ています。

日本人の食事摂取基準(2020年版)
表2. 日本人の食事摂取基準(2020年版)


2019(令和元)年 国民健康・栄養調査結果栄養素等摂取量
表3. 2019(令和元)年 国民健康・栄養調査結果栄養素等摂取量


このメキシコの研究者らのDr. Guerrero-Romero、Dr. Rodríguez-Moránは2012年メキシコのメリダで開催された第13回国際マグネシウムシンポジウム(SDRM)の会長ご夫妻で、マグネシウムと糖尿病、高血圧、メタボリックシンドローム、うつ病などに関し、精力的に研究を進め多くの研究論文を発表されています。2006年日本(三重県 賢島)で開催された第11回国際マグネシウムシンポジウム(SDRM)にも参加されました。MAG21研究会のホームページでは、一部の研究論文を紹介して来ております。

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