こむら返りの頻度を減らすための高濃度透析液マグネシウム: 文献レビュー

公開日:2021-06-04

2020年、加・ロンドン健康科学センター、米・タフツ大学医学部、加・サンダーベイ地域健康科学センター、ウィンザー地域病院、BC 腎臓庁、マニトバ大学、オタワ大学、トロント大学、ハンバーリバー病院、ブリティッシュ コロンビア大学、Can-SOLVE CKD Network、マックマスター大学、サニーブルック健康科学センター、ティミンズ アンド ディストリクト病院、アルバータ大学、クイーンズ大学、ダルハウジー大学、カルガリー大学、健康科学センター、ICES Westernによる透析マグネシウム[the Dialysate Magnesium (Dial-Mag)]調査の研究者らが“こむら返りの頻度を減らすための高濃度透析液マグネシウム: 文献レビュー”と題した研究報告をしたので、その論文概要を紹介します。

目的
こむら返りを軽減するための方策は、血液透析を受けている患者にとって研究の最優先課題です。
低マグネシウム血症は痙攣(けいれん)の危険因子である可能性があり、痙攣の生理学ならびに低マグネシウム血症およびこむら返りの疫学をよりよく理解するために文献をレビューしました。
また、こむら返りに対する経口および透析液マグネシウムの治療効果に関する介入研究からのエビデンスのレビューも行いました。

情報源
査読された文献。

方法
MEDLINE、EMBASE などの主要な文献データベースで関連文献を検索しました。
介入研究の方法論的品質評価は、ダウンズとブラックの基準チェックリスト修正版を使用して評価しました。

結果
血液透析を受けている患者のこむら返りの病因は不明な点が多く、明確なエビデンスに基づく予防法や治療法はありません。
血清マグネシウム濃度が低いなど、いくつかの要因が関与している可能性があります。血液透析を受けている患者における低マグネシウム血症(濃度 <0.7 mmol/L、1.7 mg/dL未満)の有病率は、10%から20%の範囲です。
低マグネシウム血症の原因には、食事によるマグネシウム摂取量の低下、マグネシウムの吸収阻害薬の使用(例、プロトンポンプ阻害薬)、マグネシウム排泄の増加(例、高用量ループ利尿薬)、透析液マグネシウム濃度の低下などがあります。
透析液マグネシウム濃度が 0.5 mmol/L (1.2 mg/dL)以下の場合、血清マグネシウム濃度は経時的に低下する可能性があります。観察研究および介入研究からの予備的エビデンスは、透析液マグネシウム濃度が高いと血清マグネシウム濃度が上昇し、こむら返りの頻度と重症度を軽減する可能性があることを示唆されています。
ただし、この利点を支持するエビデンスの質は限られているため、マグネシウムの治療が血液透析を受けている患者のこむら返りを軽減できるかどうかをさらに判断するには、より大規模な多施設共同臨床試験が必要です。
これまでに実施された研究では、透析液マグネシウム濃度の増加は忍容性が高いようであり、症候性高マグネシウム血症のリスクが低いことが示されています。

制限
血液透析を受けている患者のこむら返りに対するマグネシウムの治療効果を調べた介入研究は少なく、ほとんどが無作為化されていなく事前・事後の研究デザインでした。

参考資料:
Varghese A, Lacson Jr E, Sontrop JM, et al. A Higher Concentration of Dialysate Magnesium to Reduce the Frequency of Muscle Cramps: A Narrative Review. Canadian J of Kidney Health and Disease 7:1-13, 2020
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/2054358120964078

【コメント】
この研究は、血液透析を受けている患者のこむら返りの頻度を減らすための高濃度透析液マグネシウムについて文献レビューを行い、透析患者における低マグネシウム血症(濃度 <0.7 mmol/L、1.7 mg/dL未満)は10%~20%の範囲、透析液マグネシウム濃度が 0.5 mmol/L (1.2 mg/dL)以下の場合に血清マグネシウム濃度は経時的に低下する可能性があり、透析液マグネシウム濃度が高いと血清マグネシウム濃度が上昇してこむら返りの頻度と重症度を軽減する可能性があることを示唆し、より大規模な多施設共同臨床試験が必要と報告しています。

日本に於ける慢性透析患者数は2019 年末の施設調査結果によると344,640 人に達し、原疾患は糖尿病性腎症(39.1%)、慢性糸球体腎炎(25.7%)、腎硬化症(11.4%)で、うち血液透析濾過(HDF)患者数は144,686 人と報告されています。(透析会誌53(12):579~632, 2020 https://docs.jsdt.or.jp/overview/file/2019/pdf/introduction.pdf

糖尿病患者では血清マグネシウムが低下しやすく注意が必要です。血清マグネシウムが低くならないためには、日頃から十分なマグネシウム摂取が重要となります。

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