ルセオグリフロジン投与の2型糖尿病患者における血清マグネシウム濃度の変化と内臓脂肪量との相関: LIGHT試験データからのサブ解析

公開日:2021-05-20

2021年、公益財団法人東京都医療保健協会練馬総合病院、菅原医院(練馬区)、ふくだ内科クリニック(大阪市)、東京慈恵会医科大学、公益財団法人佐々木研究所の研究者らが“ルセオグリフロジン投与の2型糖尿病患者における血清マグネシウム濃度の変化と内臓脂肪量との相関: LIGHT試験データからのサブ解析” と題した研究報告をされたので、その論文概要を紹介します。

背景
ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT-2)阻害剤は、2型糖尿病患者の心血管イベント(CVE)をより効果的に抑制することが報告されています。しかし、根本的なメカニズムは不明なままです。
SGLT-2阻害剤には、CVEのよく知られている独立した危険因子である低マグネシウム血症を改善するという独特の有益な効果があります。ただし、SGLT-2阻害剤が血清マグネシウム(Mg)レベルを増加させるメカニズムも不明のままです。
SGLT-2阻害剤による内臓脂肪の減少も血清Mgレベルと相関している可能性があるという仮説を立てました。

注釈) LIGHT試験: 日本人2型糖尿病患者におけるルセオグリフロジンの体重減少の要因検討試験
https://rctportal.niph.go.jp/s/detail/um?trial_id=UMIN000015112

方法
LIGHT試験でルセオグリフロジン投与された2型糖尿病患者31人のデータのサブ解析を実施しました。
血清Mg濃度(ΔMg)の変化と試験開始時の患者の特徴/ 24週間での臨床項目値の変化との間の相関を重回帰分析によって分析しました。

結果
Mgの変化は、試験開始時の血清Mg濃度(β= -0.47、95%信頼区間(CI): -0.84、-0.13; P = 0.01)および内臓脂肪量(VFV)の変化(β= -0.33、- 0.59、-0.09; P = 0.03)と有意に関連していました。

結論
SGLT-2阻害剤投与後の血清Mg濃度の上昇は、2つの要因として治療開始前の血清Mg濃度が低く、治療後の内臓脂肪量(VFV)が低下していることと関連していることがわかりました。

参考資料:
Yanagawa T, Matsuda H, Sugawara M, Fukuda M, Sasaki T. Correlation Between Changes in the Serum Magnesium Concentration and Visceral Fat Volume in Patients with Type 2 Diabetes Receiving Luseogliflozin: A Sub-Analysis of Data from the LIGHT Study. J Endocrinol Metab 11:35-41, 2021
https://www.jofem.org/index.php/jofem/article/view/738/284284514
doi: https://doi.org/10.14740/jem738

【コメント】
この研究は、低マグネシウム血症の2型糖尿病患者に於けるナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT-2)阻害剤の投与により、血清マグネシウム濃度を増加し、それに伴う内臓脂肪量の減少に関連していると報告したことに意義があります。

糖尿病、糖尿病性腎臓病の患者では血清マグネシウムが低下しやすく注意が必要です。血清マグネシウムが低くならないためには、日頃から十分なマグネシウム摂取が重要となります。

マグネシウムは健康にとってとても重要な必須・主要ミネラルです。にも拘わらず、長年にわたりほとんどの医師がこの不可欠なミネラルの血中マグネシウムを測定することもしませんし、様々な臨床症状も見過ごして来たのが現状です。

マグネシウムの摂取不足は虚血性心疾患、高血圧・糖尿病・メタボリックシンドロ-ムなどの生活習慣病、歯周病、喘息、不安とパニック発作、うつ病、(慢性)疲労、片頭痛、骨粗鬆症、不眠症、こむら返り、便秘、PMS(月経前症候群)、胆石症、尿路結石、大腸がん、すい臓がん、動脈硬化、全身性炎症性疾患、悪阻(つわり)、そして長期記憶、アルツハイマー病など様々な疾病・病態とも密接に関連していることが基礎的・疫学的・臨床的研究でも明らかにされています。今後マグネシウム摂取の重要性がさらに認知され、正しい食育が行われる事が切に望まれます。

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