マグネシウムは炎症性サイトカイン産生を減少: 自然免疫調節機序

公開日:2021-02-03

2012年、米国・ケース・ウェスタン・リザーブ大学、南フロリダ大学、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究者らは、“マグネシウムは炎症性サイトカイン産生を減少: 自然免疫調節機序”に関する報告をしているので、その論文の概要を以下に紹介します。

目的
早産前の硫酸マグネシウム曝露は神経保護作用があり、脳性麻痺や主要な運動機能障害のリスクを軽減します。
新生児の炎症性サイトカイン濃度は神経学的転帰と相関しており、ヒトにおけるサイトカイン産生に対する硫酸マグネシウムの影響を評価することになります。

結果
硫酸マグネシウム治療後、母体のTNF-αおよびIL-6産生が減少することが判明しました。
臨床的に有効な硫酸マグネシウム濃度での試験管内短期暴露は、TLR(Toll-Like Receptor = Toll様受容体)刺激条件下でTNF-αおよびIL-6を産生する新生児単球の頻度を大幅に減少させ、細胞生存率または食細胞機能に影響を与えることなく、サイトカイン遺伝子およびタンパク質の発現を減少させました。

硫酸マグネシウムは、分娩中の女性、満期産児および早産児のサイトカイン産生を減少させ、炎症に関連する周産期の有害転帰のリスクがある女性に有効性を示しています。
サイトカイン産生減少のメカニズムを精査することで、免疫調節効果は硫酸塩部分ではなくマグネシウムによって引き起こされ、それは可逆的であることが判明しました。

細胞のマグネシウム含有量は、硫酸マグネシウム曝露により急速に増加し、異なるTLRリガンドによる刺激後とTLR刺激後にマグネシウムを添加した場合にサイトカイン産生の低下が起こり、マグネシウムが細胞内で作用することを強く示唆しています。

マグネシウムはIĸBα(細胞質に存在するタンパク質)濃度を上昇させ、TLR刺激によりNF-κB(免疫反応における転写因子)の活性化と核局在化の低下と関連していました。

結論
これらの結果は、自然免疫調節の新しいパラダイムを確立し、それによってマグネシウムはNF-κBの活性化、サイトカイン産生と疾患の病因において重要な調節的役割を果たしています。

参考資料:
Sugimoto J, Romani AM, Valentin-Torres AM, Luciano AA, Ramirez Kitchen CM, Funderburg N, Mesiano S, Bernstein HB. Magnesium decreases inflammatory cytokine production: a novel innate immunomodulatory mechanism. Journal of Immunology 188:6338-46, 2012. doi: 10.4049/jimmunol.1101765.
http://www.jimmunol.org/content/188/12/6338

【コメント】
この研究者らにより、マグネシウムは分娩中の女性、満期産児および早産児の細胞内で炎症性サイトカイン産生を減少させて自然免疫調節機序において重要な役割を果たしていると述べています。

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