ヒトの血清および尿中マグネシウム値に対する経皮マグネシウムクリームの効果: 予備的臨床研究

公開日:2020-10-23

2017年、英国・ハートフォードシャー大学、米国・ハワイのマグネシウム教育研究センターの研究者らが、“ヒトの血清および尿中マグネシウム値に対する経皮マグネシウムクリームの効果: 予備的臨床研究”と題した研究報告をしたので、その論文概要を紹介します。

背景
経口マグネシウム補充は、一般的に低マグネシウム食をサポートするために使用されます。 この研究目的は、クリーム中のマグネシウムがヒトの経皮吸収によってマグネシウムの状態を改善できるかどうかを確認することです。

方法
この予備的臨床試験においてn = 25人の参加者(男性13人、年齢34.3 +/- 14.8歳、身長171.5 +/- 11cm、体重75.9 +/- 14 Kg)は、2週間の塩化マグネシウムクリーム56mg /日か偽薬(プラセボ)クリーム群に無作為割付けされました。【クリーム成分は注1)を参照してください。】
血清マグネシウムと24時間尿中マグネシウム排泄は、開始時と介入後14日に測定されました。
この期間中、8日間の食事日記が記録されました。

結果
マグネシウムと偽薬群の血清と尿中マグネシウムは試験開始時で差はありませんでした。
塩化マグネシウムクリーム介入後において血清マグネシウムの臨床的に関連した増加(0.82~0.89 mmol/L、p = 0.29)が認められ、偽薬群(0.77~0.79 mmol/L)では認められず、非アスリートのサブグループで統計的に有意(p = 0.02)でした。
マグネシウムの尿中排泄は、塩化マグネシウム群で開始時からわずかに増加しましたが、統計的有意差はありませんでした(p = 0.48)。
血清マグネシウムと尿中マグネシウムでは、塩化マグネシウム群でそれぞれ8.54%と9.1%の増加を示しましたが、偽薬群でのそれらの数値は小さくそれぞれ+2.6%と‐32%でした。
偽薬群では、偽薬クリームの塗布後、血清濃度と尿濃度の両方で統計的に有意差のある変化は認められませんでした。

結論
これまでの研究では、ヒト被験者におけるマグネシウムの経皮吸収性を調べられてはいません。
この予備的研究において、塩化マグネシウム56 mg/日(市販の経皮マグネシウム製品と比較して低用量)の経皮吸収は、偽薬クリームを使用した被験者と比較して介入前から介入後までの血清と尿マーカーの両方で大きな割合の上昇を示しましたが、 統計的有意差は非アスリートのサブグループで血清マグネシウムについてのみ認められました。
今後の研究では、塩化マグネシウムクリームのより高い投与量と長い投与期間を検討する必要があります。

臨床試験登録
ISRCTN registry ID No. ISRTN15136969

マグネシウムと偽薬クリームの成分
マグネシウムクリーム: Lot # T10224: Aqua, magnesium chloride (10%), cetearyl olivate, sorbitan olivate, isopropyl palmitate, emulsifying wax, glycerine, butyrospermum parkii (shea butter), hydroxypropyl starch phosphate, iodopropynyl butylcarbamate, phenoxyethanol, caprylyl glycol.

偽薬クリーム: Emulsifying ointment (contains emulsifying wax, liquid paraffin and white soft paraffin. Emulsifying wax itself contains cetostearyl alcohol and sodium lauryl sulfate), Phenoxyethanol, purified water.

参考資料:
Kass L, Rosanoff A, Tanner A, Sullivan K, McAuley W, Plesset M. Effect of transdermal magnesium cream on serum and urinary magnesium levels in humans: A pilot study. PLoS ONE 12(4): e0174817, 2017. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0174817
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5389641/

【コメント】
今回の論文の研究者らは、ヒト被験者における予備的臨床研究で塩化マグネシウム56 mg/日の経皮吸収は、偽薬クリームを使用した被験者と比較して介入前から介入後までの血清と尿マーカーの両方で大きな割合の上昇を示しましたが、 統計的有意差は非アスリートのサブグループで血清マグネシウムについてのみ認められました。これらの結果を踏まえて今後、塩化マグネシウムのより高い投与量とより長い投与期間を検討する必要があると結論付けています。

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