公開日:2020-10-06
2018年、米国・アメリカン大学心理学/行動/認知/神経科学プログラム科、健康学科、行動神経科学センターの研究者らが、“神経疾患におけるマグネシウムの役割” と題した総説を報告したので、その論文概要を紹介します。
マグネシウムは人体での多様な作用でよく知られています。
神経学的観点から、マグネシウムは神経伝達と神経筋伝導に重要な役割を果たしています。
また、神経細胞死(興奮毒性)につながる可能性のある過度の興奮に対して保護的役割も果たしており、複数の神経疾患に関与しています。
これら神経系の重要な機能にとって、マグネシウムは神経疾患の潜在的な予防と治療のために非常に興味深いミネラルです。
最新の文献では、片頭痛、慢性疼痛、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中、および一般的に併存してみられる不安とうつ病の状態についてレビューされています。
片頭痛とうつ病におけるマグネシウムの役割を示唆する強力なデータがあり、慢性的な痛み、不安、脳卒中に対するマグネシウムの保護的効果を示唆する新たなデータがあります。
てんかんの補助療法としてのマグネシウムについて、そしてアルツハイマー病とパーキンソン病におけるマグネシウムの役割をさらに明らかにするために、さらなる研究が必要です。
参考資料:
Kirkland AE, Sarlo GL, Holton KF. The Role of Magnesium in Neurological Disorders. Nutrients 10:730, 2018. doi:10.3390/nu10060730
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6024559/
【コメント】
MAG21研究会のホームページでは、マグネシウムと神経疾患の関係について幾つかの論文を紹介しています。
今回の総説論文の研究者らは、神経疾患に於けるマグネシウムの役割として最近までの多くの文献をレビューし、マグネシウムと片頭痛、慢性疼痛、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中、不安、うつ病との関係について示されました。
マグネシウムの摂取不足は虚血性心疾患、高血圧・糖尿病・メタボリックシンドロ-ムなどの生活習慣病、歯周病、喘息、不安とパニック発作、うつ病、(慢性)疲労、片頭痛、骨粗鬆症、不眠症、こむら返り、便秘、PMS(月経前症候群)、胆石症、尿路結石、大腸がん、すい臓がん、動脈硬化、全身性炎症性疾患、悪阻(つわり)、そして長期記憶、アルツハイマー病など様々な疾病・病態とも密接に関連していることが基礎的・疫学的・臨床的研究でも明らかにされています。今後マグネシウム摂取の重要性がさらに認知され、正しい食育が行われる事が切に望まれます。
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。