ヒト皮膚に塗布したマグネシウムイオン透過は毛包によって促進される

公開日:2020-09-16

2016年、オーストラリア・クイーンズランド大学、南オーストラリア大学らの研究者が、“ヒト皮膚に塗布したマグネシウムイオン透過は毛包によって促進される” と題した研究報告をしたので、その論文概要を紹介します。

マグネシウムは、さまざまな生物学的プロセスに欠かせない重要な微量栄養素であり、不足はいくつかのヒトにおける炎症性疾患と関連します。局所的マグネシウム塗布は、例えば死海療法やエプソム塩浴などの皮膚疾患治療の最も古い形式の1つです。

いくつかの裏付けに乏しい証拠と発表された文献では、炎症性皮膚状態の改善はマグネシウムの局所的塗布に起因するものとしています。他方、皮膚の保護バリアである角質層を透過するマグネシウムイオンの輸送は、論争の的になっています。

この研究の主な目的は、ヒト皮膚を透過するマグネシウムイオンの程度と、透過を促進する上での毛包の役割を評価することです。

塩化マグネシウム溶液を局所的に塗布すると、マグネシウムがヒトの角質層を透過し、濃度と曝露時間に依存することがわかりました(1.9 M 塩化マグネシウム溶液塗布後15分以内に透過、 52 mM 塩化マグネシウム溶液塗布後では60分後に透過)。また、毛包がマグネシウムの透過に大きく寄与していることもわかりました。

参考資料:
Chandrasekaran NC, Sanchez WY, Mohammed YH, Grice JE, Roberts MS, Barnard RT. Permeation of topically applied Magnesium ions through human skin is facilitated by hair follicles. Magnes Res 29(2): 35-42, 2016. doi:10.1684/mrh.2016.0402
https://soreandtired.com/wp-content/uploads/2018/06/Chandrakanth-Mg-Permeation-through-hair-follicles.pdf

【コメント】
MAG21研究会のホームページでは、マグネシウムの経皮吸収について幾つかの論文を紹介しています。

今回の論文の研究者らは、塩化マグネシウム溶液を局所的に塗布すると、マグネシウムがヒトの角質層を透過し、濃度と曝露時間に依存することがわかりました(1.9 M 塩化マグネシウム溶液塗布後15分以内に透過、 52 mM 塩化マグネシウム溶液塗布後60分後に透過)、また、毛包がマグネシウムの透過に大きく寄与していることが示されました。

マグネシウムの摂取不足は虚血性心疾患、高血圧・糖尿病・メタボリックシンドロ-ムなどの生活習慣病、歯周病、喘息、不安とパニック発作、うつ病、(慢性)疲労、片頭痛、骨粗鬆症、不眠症、こむら返り、便秘、PMS(月経前症候群)、胆石症、尿路結石、大腸がん、すい臓がん、動脈硬化、全身性炎症性疾患、悪阻(つわり)、そして長期記憶、アルツハイマー病など様々な疾病・病態とも密接に関連していることが基礎的・疫学的・臨床的研究でも明らかにされています。今後マグネシウム摂取の重要性がさらに認知され、正しい食育が行われる事が切に望まれます。

マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。

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