公開日:2020-09-01
2020年、米国・Think Healthy Group、ジョージ・メイソン大学、ハワイのマグネシウム教育研究センター所属の研究者が、“COVID-19(新型コロナウイルス)との闘いと免疫力の構築: マグネシウムの潜在的役割?”について報告をしたので、その論文概要を紹介します。
背景
2019年12月、COVID-19(新型コロナウイルス)によって引き起こされる呼吸器疾患のウイルス性パンデミックが世界中に拡がり始めました。
この感染症は、潜在的に無症状のマグネシウム不足(欠乏)状態で発症することが示されています。
低マグネシウム血症は、臨床現場で血中マグネシウム濃度がめったにモニターされないため、認識されないことが多いですが比較的一般的な臨床的出来事です。
マグネシウムは、カリウムに次いで2番目に豊富な細胞内陽イオンです。
マグネシウムは体内で600を超える酵素反応に関与し、COVID-19(新型コロナウイルス)患者が示す免疫および炎症反応に寄与しています。
方法
COVID-19(新型コロナウイルス)の発症において実験的知見とマグネシウムが果たすかもしれない生化学的役割の視点で示します。
米国医学アカデミーの系統的レビュー基準を採用し、COVID-19(新型コロナウイルス)治療のための主要な薬物標的であるインターロイキン-6(IL-6)とマグネシウムの関係を評価する臨床的および前向きコホート研究を特定します。
結果
COVID-19(新型コロナウイルス)の予防と治療のための臨床的推奨が提供されています。
イオン化マグネシウムの状態を継続的にモニターすることは、病気の罹患と進行に影響する効果的な戦略であるかもしれません。
査読された文献は、マグネシウム栄養の側面から臨床的検討を正当化するのをサポートします。
マグネシウムのメカニズムには、核因子Kβ、インターロイキン-6(IL-6)、C反応性蛋白、およびその他の関連する内分泌攪乱物質の下流抑制につながる「カルシウムチャネルブロッキング」効果、腎カリウム喪失の調節における役割、ビタミンD機能を活性化および強化する能力などが含まれます。
結論
世界が効果的なワクチンを待望み、マグネシウム栄養は患者の罹患率と死亡率を軽減するのを助ける上で重要かつ安全な役割を果たします。
我々のグループは、より良い結果につながる栄養ケアの実践を理解するためにアメリカ栄養士会(Academy of Nutrition and Dietetics)と協力し、米国中の集中治療室から患者データを収集しています。
参考資料:
Wallace TC. Combating COVID-19 and Building Immune Resilience: A Potential Role for Magnesium Nutrition? Journal of the American College of Nutrition, published online: 10 Jul 2020. DOI: 10.1080/07315724.2020.1785971
https://doi.org/10.1080/07315724.2020.1785971
【コメント】
マグネシウムは体内で600を超える酵素反応に関与し、COVID-19(新型コロナウイルス)患者が示す免疫および炎症反応、例として全身性炎症マーカー高感度C反応性蛋白(hs-CRP)、インターロイキン-6(IL-6)に寄与しています。
日本では糖尿病患者とその予備軍がおよそ2000万人と推定されているので、相当数が低マグネシウム血症の可能性が有ります。また、糖尿病以外でも血中マグネシウム値が低い男性と女性が存在しますが、2つの問題点が有ります。まず、一般的にマグネシウムの重要性について認知が低い為、臨床現場に於いて患者さんの血中マグネシウムを測定する医師が少ないことです。次に、わが国で臨床検査に使用しているマグネシウムの基準値がメタボ予備軍を含む従来のままで、完全健常者による基準値の再策定がされて無い為に、下限値(日本の正常血清マグネシウム値 1.8~2.6 mg/dLですが、1.8~2.0当り)があまく設定されており、低マグネシウム血症の患者さんが見逃されていると思われます(横田邦信,白石正孝,恩田威一ほか:健常者における血清総マグネシウム(Mg)基準値の妥当性に関する検討.JJSMgR 26:100-101, 2007.)。この問題を早く解決し、現代に沿った正しいマグネシウム基準値が臨床で使用されることが望まれます。なお、静脈採血検体では血清分離時間が短いほどより正確な値が得られますが、数時間以上経った検体の分離血清では高値になるので結果の判定には注意が必要です。
マグネシウムの摂取不足は虚血性心疾患、高血圧・糖尿病・メタボリックシンドロ-ムなどの生活習慣病、歯周病、喘息、不安とパニック発作、うつ病、(慢性)疲労、片頭痛、骨粗鬆症、不眠症、こむら返り、便秘、PMS(月経前症候軍)、胆石症、尿路結石、大腸がん、すい臓がん、動脈硬化、全身性炎症性疾患、悪阻(つわり)、そして長期記憶、アルツハイマー病など様々な疾病・病態とも密接に関連していることが基礎的・疫学的・臨床的研究でも明らかにされています。今後マグネシウム摂取の重要性がさらに認知され、正しい食育が行われる事が切に望まれます。
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。