インスリン抵抗性、糖尿病予備軍または非感染性慢性疾患患者の血圧に対す るマグネシウムサプリメントの効果: ランダム化比較試験のメタ解析

公開日:2020-05-21

2017年、米国インディアナ大学、ハワイのマグネシウム教育研究センター、イスラエル・テルアビブ大学の研究者らが、“インスリン抵抗性、糖尿病予備軍または非感染性慢性疾患患者の血圧に対するマグネシウムサプリメントの効果: ランダム化比較試験のメタ解析”について報告をしたので、その論文概要を紹介します。

背景
マグネシウムサプリメントにおける発症前または非感染性疾患患者の血圧に対する効果は、メタ解析での検討は以前からなく、ランダム化比較試験(RCT)の結果は一貫性がありません。

目的
目的は、発症前または非感染性疾患のある人を対象にマグネシウムサプリメントが血圧に及ぼす効果を判断することです。

デザイン
PubMed、ScienceDirect、Cochrane、clinicaltrials.gov、SpringerLink、Google Scholarデータベースおよび特定された関連記事の参照リストから2017年5月までに英語で公開されたランダム化比較試験(RCT)を特定し、発症前または非感染性疾患患者を対象にマグネシウムサプリメントの血圧に対する効果を調査しました。

ランダム効果モデルと固定効果モデルを使用し、マグネシウムサプリメント群と対照群間の収縮期血圧(SBP)と拡張期血圧(DBP)の両方で、投与開始時から試験終了までの血圧の変化における95%CIの標準化平均差を推定しました。

結果
このメタ解析には、追跡期間が1~6ヶ月(平均3.6ヶ月)で543人の参加者を含む11件のランダム化比較試験(RCT)が含まれました。

マグネシウムの投与量は、365~450 mg/日の範囲でした。すべての研究で、投与開始時および試験終了時の血圧が報告されました。

加重全体効果は、マグネシウムサプリメント群が対照群よりも収縮期血圧(標準化平均差20.20; 95%CI:20.37、20.03)と拡張期血圧(標準化平均差20.27; 95%CI:20.52、20.03)の両方で有意な低下を示しました。マグネシウムサプリメントにより、収縮期血圧は4.18 mmHg、拡張期血圧は2.27 mmHgの平均低下が認められました。

結論
この研究結果は、マグネシウムサプリメントがインスリン抵抗性、糖尿病予備軍または他の非感染性慢性疾患患者の血圧を有意に低下させることを示唆しています。

参考資料:
Dibaba DT, Xun P, Song Y, Rosanoff A, Shechter M, He K. The effect of magnesium supplementation on blood pressure in individuals with insulin resistance, prediabetes, or noncommunicable chronic diseases: a meta-analysis of randomized controlled trials.
Am J Clin Nutr 106:921-929, 2017. doi: 10.3945/ajcn.117.155291. Epub 2017 Jul 19.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5573024/

【コメント】
今までに多くの疫学調査、臨床試験によるマグネシウムと血圧に関して報告されています。

しかし、この研究は、マグネシウムサプリメントの血圧に対する効果を調査するため、2017年5月までに報告された臨床試験でランダム化比較試験11件のデータを統合してメタ解析したものです。

降圧剤のような大きな効果は認められませんが、マグネシウムサプリメントによる摂取量365~450 mg/日は収縮期血圧を4.18 mmHgと拡張期血圧を2.27 mmHgと有意に低下させることを報告したことに意義があります。

この研究指導者Ka He教授は2012年、日本糖尿病学会の招聘により来日し、第55回日本糖尿病学会年次学術集会(横浜)で講演されました。Ka He教授は現在、米国コロンビア大学アーバインメディカルセンター産婦人科と疫学科で研究活動されています。

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