マグネシウム補充はビタミンDの変動と代謝に影響: 無作為化臨床試験

公開日:2020-03-10

2018年、米国ヴァンダービルト大学イングラムがんセンター、ハーバード医科大学Brigham and Women’s Hospital、ハーバードTH Chan公衆衛生学部、インディアナ大学-パデュー大学公衆衛生学部、ハワイ大学がんセンター、ハワイ マグネシウム教育研究センター、ヴァンダービルト大学医学部の研究者らは、“マグネシウム補充はビタミンDの変動と代謝に影響: 無作為化臨床試験”に関する報告をしたので、その論文の概要を以下に紹介します。

背景
以前の研究では、ビタミンDを合成および代謝する酵素はマグネシウムに依存していることが示されています。最近の観察研究では、マグネシウム摂取がビタミンDの変動と死亡リスクに関連してビタミンDと有意に相互作用することがわかりました。国民健康栄養調査(NHANES)によると、米国成人の79%はマグネシウム摂取の推奨量を満たしていません。

目的
この研究目的は、マグネシウム補充がビタミンD代謝の基本となる25-ヒドロキシビタミンD[25(OH)D]濃度に依存してビタミンD代謝に影響を与えるという仮説を検証することです。

方法
対象者は、40~85歳の180人をヴァンダービルト大学医療センターで実施した二重盲検2×2要因ランダム化比較試験です。マグネシウムとプラセボ(偽薬)の用量は、ベースラインの食事摂取量に基づいて個々に設定されました。血漿中の25-ヒドロキシビタミンD3 [25(OH)D3]、25-ヒドロキシビタミンD2 [25(OH)D2]、1,25-ジヒドロキシビタミンD3、1,25-ジヒドロキシビタミンD2、および24,25-ジヒドロキシビタミンD3 [24,25(OH)2D3] の変化は液体クロマトグラフィー質量分析器で測定しました。

結果
マグネシウム補充は、25-ヒドロキシビタミンD3、25-ヒドロキシビタミンD2、24,25-ジヒドロキシビタミンD3の血漿濃度が、ベースラインの25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)の状態に依存して有意に変化しました。マグネシウムの補充は、ベースライン25(OH)D濃度が30 ng/mLに近い場合に上昇し、ベースラインが30-50 ng/mLと高い場合に低下しました。
マグネシウム補充は、ベースライン25(OH)D濃度が30 ng/mLではなく50 ng/mLの場合、24,25(OH)2D3濃度に有意な影響を及ぼしました。

結論
最適なマグネシウム摂取が25(OH)D濃度を最適化するために重要かもしれないことを示唆します。
この臨床試験は、clinicaltrials.govにNCT03265483として登録しています。

参考資料:
Dai Q, Zhu X, Manson JE, Song Y, Li X, Franke AA, Costello RB, Rosanoff A, Nian H, Fan L, Murff H, Ness RM, Seidner DL, Yu C, Shrubsole MJ. Magnesium status and supplementation influence vitamin D status and metabolism: results from a randomized trial. Am J Clin Nutr 108:1249-1258, 2018. doi: 10.1093/ajcn/nqy274.
https://academic.oup.com/ajcn/article/108/6/1249/5239886

【コメント】
この研究者らによる観察研究と臨床試験によりマグネシウムがビタミンD状態を最適化するのは重要と思います。

マグネシウムはビタミンDの合成と代謝にも重要な役割を果たすと言われているので、常日頃の食事から十分なマグネシウムの摂取を心掛けて戴きたいものです。

マグネシウムの摂取不足は虚血性心疾患、高血圧・糖尿病・メタボリックシンドロ-ムなどの生活習慣病、歯周病、喘息、不安とパニック発作、うつ病、(慢性)疲労、片頭痛、骨粗鬆症、不眠症、こむら返り、便秘、PMS(月経前症候軍)、胆石症、尿路結石、大腸がん、すい臓がん、動脈硬化、全身性炎症性疾患、悪阻(つわり)、そして長期記憶、アルツハイマー病など様々な疾病・病態とも密接に関連していることが基礎的・疫学的・臨床的研究でも明らかにされています。今後マグネシウム摂取の重要性がさらに認知され、正しい食育が行われる事が切に望まれます。

マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。

検索


新着記事